リメイク第二章 異世界の暗躍は勇者たちが見えぬ裏側
とりあえずこの手紙もしまっておくか。
「おーい、戻ったわよー」
「ん?シィズさん?何処行ってたんスか?」
そう言えばさっきからいないと思ってたシィズさんが帰って来た。
「さっきスイレン君に殺されかけてた人、私とエルメスでなんとか蘇生出来たのよ。それで私が今病院まで送ってたの」
「あ、良かった・・・てっきり殺されたかと・・・」
「スイレン君が相当疲弊してたせいかもね。彼、首を絞められた様な跡があって、急所にピンポイントに付けられてたんだけど、あまり強い力が加わった形跡が無かったのよ。だからなんとか一命を取り留めたわ」
無意識に殺人をしてたってのは本当だったのか・・・同情する訳じゃないけど、しんどかったんだろうな。
「さてと、みんな揃ったし、そろそろ行くッスか」
「サクラ、これどうする?」
グレイシアさんが何か持って来た。これは、睡蓮のナイフ。
「それは・・・それはここに置いて行く、あいつの遺体が無いなら、これがあいつの墓標になる。見つからない様なところに立てておこう」
俺はナイフを植木の隅に突き立てた。
それにしても死体が消える・・・消えた死体は何処に行くんだろ・・・なんか、こんな話昔聞いたな。ニヒル アダムスはある日突然消え、突然死体として発見された。
もしかしたら、俺たちがこの世界で死ぬ時にようやく元の世界に戻れるのかもな。ニヒルさんも、この世界で死んだから元の世界へ、この世界から消えたんだ。
全く、何があったんだよ・・・本当、考えてみると分からない事だらけだな。この世界は・・・けど何となくこの世界は何かで俺たちは繋がってる気がする。零羅も睡蓮も俺と顔見知りなんかじゃない。けど、俺たちは何か繋がってたからこの世界へ来たって思う。
そして、三上はその繋がりの原因を知ってるのかもしれない・・・三上、お前は何を知ってる?何を知ってこのゲームを始めた?
「サクラー、置いてくわよー」
「あ、待ってくれッスー!」
俺たちの旅は続く・・・
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時は少し遡る。
アグリカル地区 ノウバク市 総合病院
桜蘭たちがこの地から旅立った日の夜、サムは兄、ジョニーと仲良く隣同士のベッドで寝ていた。
「サクラ君たちは、上手くやってるだろうか・・・」
「心配か?」
サムは桜蘭たちの心配をしていた。
「そりゃそうさ、私は昔から心配性なのは知ってるだろ?」
「家族でも無いのに過保護な奴だ。けど、それは言い換えればあの勇者たちを信用してないとも聞こえるぞ、あいつらなら無事やれる。覚醒し、そしてあの男を倒すさ、お前が信じないで誰があいつらを信じるんだ?」
「っ・・・けど、やはり心配だ。車とかちゃんとあったのだろうか・・・私が減っても七人、ここら辺に七人乗りは・・・」
「あ、心配するとこそこ?」
ジョニーは少し呆れた声で呟いた。
「車なら長距離タクシーを呼んでおいたよ、だから彼らは無事旅を続けられてる」
突然病室のドアが開いた。
「ん?お前、ランディか?何故ここに?」
ジョニーは少し眉間に皺を寄せて質問した。
「そう言えば故郷に帰ると言っていたね、そのついでと言う事か?」
「あぁ、あの勇者たちにはそう言うふうに伝えたよ」
「どう言う意味だ?」
サムは疑問に思っていたが、隣のジョニーの表情を見てこの状況がただ事では無い事を知った。
「やはり噂は本当だったか・・・」
「噂?ジョニー、何を知っている?」
「知ってるのはランディの方だ。だが、お前は口にするなと言われてるのだろ?」
「どうだろうね」
「なら、俺から話すか・・・サム、このゲームで今まで何人死んだ?」
「ん?確か、ワンコが最初に・・・そして零羅ちゃんの暴走の際にそれを止める為レオナルドがミカミによって殺された」
「あぁ、その通りだ。だがそれ以外のリーダーたちはどうなったか知っているか?」
「い、いや」
ジョニーはじっとランディを見つめたまま話し続ける。
「地区解放後、その地区を担当していたリーダーは全て音信不通になっていると言ったら、どうする?」
「っ!!!まさか!!だが!?」
サムは一気にこの状況を理解した。そして、疑問も一つ生まれた。
「ほぼ正解ですね、ならば僕ももう黙る必要は無くなった。陛下からは答えに行き着けたら喋っても構わないと言われているからね。このゲームには世間に発表してないもう一つのルールがある。それはこのゲームで脱落した人は陛下によって殺される事」
「なっ!どう言う事だ!?ランディ!お前は一体何を知っているんだ!?まさか、これまでのリーダーは全員死んだのか!?」
「しー、ここは病院ですよ。あまり大声を出さないで下さい。けど、そんなに知りたいなら答えられる人は呼んでます」
「お前は・・・誰だ?」
ランディの後ろから誰かが現れた。小柄だが、ビシッとしたドライバーユニフォームを着ている男だ。
「あぁどうも、この度はあの勇者たちの運転手を代わらせて頂いた者です。ひまわり観光、ミカイル サンフラ。どうか宜しくお願いします」
ミカイル サンフラ。現在桜蘭たちの乗っているタクシーの運転手だ。
「ん?ひまわり観光、ミカイル サンフラ・・・そう言う事か」
「ジョニー?どう言う意味だ?私には何が何だか・・・」
「サム、今の現状じゃサクラたちはまだ覚醒に至ってないだろ?シャルロットのとこで誰か一人はなって欲しかった、そう言う計算の筈だ。けど、現状誰も覚醒には至ってない。だから、ここらでテコ入れして来た訳だ。それで次の一手を仕掛けたんだろ?ミカミ・・・」
ジョニーがその名を呼ぶと、ミカイルと呼ばれていた男は優しく笑った。
「ふふっ、流石だね。ジョニーさん・・・そう言えば君は知ってたね、僕の変装してる時の名前を・・・」
ミカイルは服を脱ぎ捨てた。そして、そこに立っていたのは三上 礼。この国を支配する王だ。
「ミカミ・・・貴様!?」
「おっと・・・駄目だよ、まだ安静にしてなきゃ。傷口が開いたら大変だよ?」
三上は一瞬でサムの動きを封じていた。
「お前・・・何が目的なんだ?」
「目的ね、さっきジョニーさんが言った通りだよ。現状このゲームは僕の思ってるほど進捗状況は芳しくない。シャルをぶつければ誰か一人くらいは覚醒出来ると思ってたんだけど、どうやら駄目だったみたい。みんな、なんだかんだ優しい子ばっかだからね。手を抜いちゃったのかも。
だから僕は更なる一手を出したんだ。ランディはその為に最初に殺さず今まで生かしておいたんだよ。おかげで今彼らと一緒にいるミカイルさんは上手くやれてるみたいだ。だからランディ、君の用は終わったよ」
『グサッ!!』
「な、なにっ!?」
三上は一瞬のうちにランディの心臓を貫いた。ランディは何も言う事なく倒れる。
「サムさん、君はこの事を知りたかったんでしょ?これが答えだよ。ゲームの脱落者は僕が粛清する。僕はゲームの期間中反逆者たちの処刑はしないって言ったけど、身内の粛清はしないとは言ってないからね。
さてと、僕の狙いは理解出来てくれたかな?で、僕はここで君達を殺して先に行ったミカイルさんと交代しなきゃならないんだ。睡蓮君の時間は少ないし、何より青薔薇がそろそろ迫ってる。なんとかそれまでに合流したいんだ」
三上は剣を二人に向けた。
「兄さん・・・」
サムはジョニーに目で訴えかけた。
「・・・・・いや、無理だ・・・何通りか考えてみたが、俺たちはどうやらここで死を受け入れた方が良いらしい。それが最も良い答えに辿り着ける筈だ」
「兄さん!?何を言って・・・っ!?」
その次の瞬間にジョニーは三上に刺されていた。
「やはり君は聞き分けが良いね、ジョニーさん。さて、次は君だよ、サムさん?」
「ミカミ・・・お前の目的はなんなんだ!?何故殺す!?何故サクラ君たちを生かす!?何故お前は死にたがる!?」
「その答えを知りたいなら、死んだ先で見届けると良いよ」
「くっ!!」
「お?」
サムは持っていた短刀を弓に換え、三上に風の矢を放った。三上はこの程度の攻撃なら軽くあしらえる、しかし、サムはその隙に窓の外へ飛び出した。
「ここは二階だ!足を怪我しているとは言えまだ動けるさ!!」
「・・・やれやれ、前にもこんな展開あったっけ。けど、今回は僕の方が早いよ?」
サムは走る、そして近くの公衆電話に向かった。
(早く伝えなければ・・・私は逃げられなくても良い。けど、この事実はサクラ君たちに伝えないと・・・まだ来てないな、間に合え・・・)
サムは受話器のボタンを急いで押す。しかし、
『ガシャっ!!!!』
「なっ!!上からっ!?」
電話ボックスの屋根から受話器に向けて剣が貫かれた。サムは外へと飛び出す。
「残念、あと少しだったねサムさん。それにしてもすごい行動力だ・・・自分が死ぬかもしれない事より仲間を優先する、死を恐れない素晴らしい覚悟だよ。けど、少し考えが足りないね。
僕の目的は彼らに僕を殺させる事だ・・・それは君たちにとっても都合の良い答えでしょ?あの子達のところに僕のスパイがいる。リーダーを倒しても僕はそのリーダーたちを粛清する。その情報を伝えた所であの子らは旅を続けざるを得ない。いや、むしろこの事を知ればあの子らは旅を辞めてしまうかもしれない。
そうなるとこの世界の結末は世界滅亡エンドまっしぐらだ。あの子たちはバケモノとなり、僕はその瞬間この世界を破壊する。この世界に二度と生命が宿らないくらいにめちゃくちゃにね・・・」
「っ!?ミカミ、お前・・・まさか、サクラ君たちをバケモノにしない為にこんな真似を?」
「ん?あ、少し勘違いしないでくれるかな?あの子たちがバケモノになるのを防ぎたい事は事実だけど、別に正義感からコレをやってる訳じゃない、そうされるとつまらないからだよ。僕はね、覚醒したあの子らに殺されたいんだ。支配を覆す存在、その力と僕と言う力・・・果たしてどれが強いのか、僕はそれを確かめたいんだ」
三上は電話ボックスの上から飛び降りてサムの目の前に立った。
「・・・確かに、そうかもな。私が今何を伝えて、サクラ君たちの旅を止めさせるのはあまり良い考えではなかった・・・むしろ良い起爆剤か」
「分かってくれたなら何よりだよ」
三上はニコッと笑って見せた。
「だが、その前に教えてくれないか?唯一腑に落ちない事が一つある。処刑に、そしてこの粛清に意味はあったのか?」
「・・・あの人たちの死に意味を持たせたいのなら、意味が無いのが一番の答えかな?」
「・・・相変わらず、答えになってない答えを言うな、あなたは・・・」
サムはもう一度弓を構えた。
「僕は答えのない答えを探しているからね・・・」
三上も剣を構えた。
「ならば私は、意味のない答えを出す・・・行くぞ!!」
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「ふぅ、流石に強かったよ・・・死を恐れない者の強さはやっぱり侮れないね」
三上は剣を収めた、その目の前にはサムが力尽き倒れている。
「さてと、時間取り過ぎちゃったな・・・これ間に合うかなぁ、えっと今は何処だ?あ、ノザラシパーキングエリア付近か、全速力なら行けるか。ガソリンの臭いには気をつけて置かないとね・・・」
三上は死体を連れてバイクに乗り込み、桜蘭たちのいる方へ向かった。
そして時は、睡蓮が暴走する直前。
「おーい睡蓮どこだー?」
「睡蓮さーん」
桜蘭と零羅は睡蓮を探している。
「ミカイルさん、間に合いました?」
その裏で同じ服装、同じ身長、同じ顔の二人が向かい合って喋っていた。
「間に合いましたよ。しかし、そろそろ限界時間です。彼は一人あちらへふらふらと、不思議に思った桜蘭君と零羅さんが睡蓮君を捜索してます。どうされます?」
「なら、ここで決着を付けさせよう。これ以上無駄な犠牲者は要らないからね。天神 睡蓮、彼には悪いけど僕では彼を救う事はもう出来ない。だからさ、見させてもらおうかな。坂上 桜蘭君の実力を・・・どれだけ成長したのか、少し楽しみだよ」
ミカイルな三上はあの爽やかな笑顔を見せた。
「その笑顔、くれぐれもその姿で見せないで下さいね。バレますよ?」
「ごめん、気をつけるよ」
「なら、僕はこれで失礼するよ」
「君の変装道具はやっぱり役に立つよ、ありがとうね・・・えっと、今度は何て呼ぶ?」
もう一人のミカイルは既に別の誰かになっていた。
「そうね、次は本腰入れたいから・・・私はメリーヌよ、メリーヌ アルセナ」
メリーヌと呼ばれた女性は周囲の一般人に紛れていなくなった。
「ふふ・・・全く面白い人だ。さて、僕も行くか」
「スイレン君?彼ならさっきそこでふら〜っと歩いてたわよ?」
「あっちッスか?けど、その後は何処行ったんだ?」
「さぁ?」
「あの、スイレンさんなら先程あちらへ向かわれましたよ?」
「あ、ありがとッス、ミカイルさん」
さ、観させてもらおうかな。




