リメイク第二章 勇者を追い詰めるは一人の少女
俺たちは真ん中の広場までちょうど中間地点を超えた。通信で定期的に確認してるけど、他のみんなはとりあえずは大丈夫みたい。それにしても、俺たちのとこだけやたら念入りに爆弾が仕掛けられてる・・・
「ん・・・桜蘭、止まれ・・・この匂い、少し動いたな」
「どうしたんスか?」
多分睡蓮は何かに気がついた、俺は小声で尋ねる。
「あの甘い匂いは、恐らくシャルロット自身が使ってる香水でもありそうだ。そしてその匂いが今動いた感じがした。近くにいるぞ」
より集中しろ・・・ほんの僅かな動きを見逃すなよ。
「・・・あそこ!!誰かいるっ!!」
俺は横の廃屋を指差した。今見えた、あの髪は絶対にシャルロットだ。
「ふふっ、やっぱりそうだったか。私の予想した通り、君の目は厄介そうだね」
目・・・?どこからともなくシャルロットの声が聞こえる。あの廃屋からなのか?
それに、目って事はこいつ。それすらも予測されてたのか?
「何驚いてるの?知ってるでしょ、私は彼の右腕だよ。君たちの特技と特徴はグレイシア以上に知ってるのよ。
さて、どうするの?ここで他の人たちが来るのを待つ?それとも一気に攻め込んで私を追い詰める?」
完全に罠だ、シャルロットはわざと俺に見つけさせた。
「よーく考えた方が良いよ?私に時間を与えたら、いくらでも逃げる算段は建てられるからね。なんなら三秒後にはいなくなれるよ・・・三、二、一」
「今だ桜蘭っ!!」
考えてる暇は無かった、シャルロットは何かをする動きをしていた。ここで逃したらまた探すのが大変だ。俺たちは否応なしに廃屋に突入させられた。
「そこだ!!動くなっ!!」
「っ、違う・・・これは!!」
そこにあったのはプロジェクターとスピーカー。俺たちはこんな単純な罠に引っかかったんだ。
「っ・・・舐めやがって」
珍しく睡蓮が苛立ってる。
「そう怒らないでよ、君の鼻は買ってるんだよ?本当なら黒色火薬の匂いと私の香水を使い分けて撹乱させるつもりだったのに、それは君に看破された。自信に思っていいよ」
外だ!外にいやがる!!
『バァンッ!!』
俺たちは再び外に出ようとしたら、俺たちが突入した窓が爆発した。
「くっ!!こんな目眩しがっ!!」
「通じる筈ないよね・・・けど、時間は稼げたよ。チックタック♪チックタック♪って、すごく良いリズムが聞こえてこない?私はこの音が大好きなんだ、昔からね。特に十二時きっかりのタイミングは最高に胸躍るの分からないかな?分からないなら、見せてあげるよ」
これは・・・まさかっ!!?俺が後ろを振り返るとアンティークな時計に爆弾が仕掛けられていた。そして、その時計は今、12時を示した。
外へっ!!外へ出ろっ!!間に合え!!!
「君の負け・・・サヨナラだね!」
な、何だ?急に眩しく。んで、耳がキーンってなって、で、この熱さ。焼ける・・・
天井?崩れて・・・そこから記憶が飛んだ。
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グレイシアと零羅
『ドォンッ!!』
「今の爆発はっ!?」
「多分、サクラの方だから」
零羅は突然起きた爆発を聞き、即座に桜蘭へと連絡を取った。
「桜蘭さんっ!!大丈夫ですか!?」
『な、何とか・・・あっぶなかったッス。天井が落ちてきた・・・』
『こぉらサクラッ!!ちゃんとしなさいよ全く!!』
桜蘭の返事と共にエルメスが説教を入れる。
『あー、すんませんッス』
「ふぅ・・・とりあえず良かったです。グレイシアさん、先に行きましょう」
「・・・・・・」
「グレイシアさん?」
「あ、何でもないから」
零羅はグレイシアに言うが、グレイシアは少しぼーっとしていた。
「あの通信・・・」
「へ?」
「あ、いや本当に何でもないから。独り言」
「そうですか・・・それにしても、こっちも爆弾がないですねぇ」
「だね、けど何か嫌な予感はする。気をつけてレイラ」
「はいっ!!」
グレイシアたちは先に進もうとしたその時だった。
「やほー!お二人さん!」
目の前にシャルロットが現れた。
「・・・あー、サム?シャル見つけたから」
『何っ?何処だ!』
「真正面だね」
『分かった!!今向かう!!』
「ふふん、今向かっても遅いってのは君なら分かるでしょ?グレイシアちゃん」
「サムが来る前に倒すか、倒されるかだから」
「よく分かってるね。けど、私の作戦はそうじゃない。流石に私でも八対一はきびしーからさ、最悪一人倒せれば良いかな?ってね。で、グレイシアちゃんの場合は足止めだよ」
「どうやって止める?」
「こうやって止める!」
「っ!?左右の建物です!!」
2人の間にあった建物が大爆発を起こした。
「瓦礫の下敷き作戦ってね」
「このっ!!程度なら!!」
麗羅は降りかかる瓦礫を一気に吹き飛ばそうとした。しかし
「レイラちゃん、そこよりも大事なのは足元注意ね♡」
「わぁっ!?」
「あらら」
「作戦その二、落とし穴大作戦ってね〜!!」
2人の足元の周辺が爆発し、地面が大きく陥没した。そして2人はその地面と降りかかる瓦礫に呑み込まれた。
「さて・・・『みなさん、あの、今の爆発はグレイシアさんが面白半分でワイヤーに石投げてしまいまして・・・』」
『あんっ!?何してんのよ!!』
そしてシャルロットは自分の持っていたマイクに話しかける、その声は零羅の声に変わっていた。
「さてサクラ・・・後は君次第、最悪君だけでも乗り越えなくちゃね。でなきゃ本当に死ぬよ?だって、多分私だけがガチで殺りに来てるからね」
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「ん・・・あれ?」
俺は目が覚めた。目が覚めた瞬間に全てを思い出した。爆弾が爆発して俺たちは巻き込まれた。そして瓦礫が降ってきて・・・それから?
天井が目の前の寸前で止まってる。これを受け止めているのは・・・
「睡蓮っ!!」
「や、やぁ・・・気がついた?無事で何よりだ」
「それよりその怪我っ!!痛っ!!!!くっ!!」
頭からダラダラと血が流れ出た。頭がぐわんぐわんして気持ち悪い、足に力が入らずに立てない・・・
「どうやらドジったみたいだ。俺たち2人な・・・あんな単純な作戦に引っかかるなんてさ。済まない」
睡蓮は苦しい顔をして俺に謝った。
「いや、謝るのは俺の方ッス・・・俺がもっと上手く立ち回れれば・・・」
「そ、それより桜蘭。頼みがある、魔法を使ってこの天井をどかせないか?俺の力では無理そうでな・・・」
睡蓮、この人もう立ってるのもやっとなんだ。それなのに俺は、何とかしないと!!
「うおおっ!!」
「これなら、何とか・・・」
土の魔法でこの天井を、押し上げ・・・っ!!駄目だ!力がこれ以上入らない。
『バキッ!!』
「うおっ!!」
「っ!!!力、入れよ・・・もっと魔法の力を注ぎ込んで!!」
魔法でも俺の体力が底をついてて上手く発動出来ない。
何で・・・何で俺ってこうも情けないんだ。情けない、もう嫌なんだよ。俺っていつも誰かに助けられてる・・・睡蓮には命を何度も救われた。グレイシアさんにも俺は救われ、零羅ちゃんにも、麗沢にも、シィズさんやサムさん。エルメス、他にも色々な人に俺は救われてた。
なのに、俺は何も出来てない。少しずつ強くなって来た?何処がだよ、肝心な時に何も出来ないんじゃ意味ないだろ。
そろそろ、誰かを助けさせてくれ・・・まだ力は入る、ならその手を動かせ。まだ意識がある、ならもっと強く押せ。
まだ闘える、なら・・・この程度で挫けるなんて馬鹿みたいだろ。
ブツッ・・・
「睡蓮・・・手を離せ」
「桜蘭!?諦めるな!俺が何とか!!」
「いや、別にもうそんな事する必要ないッスよ・・・こんなのは簡単だ、だから手をどかして・・・」
「桜蘭・・・っ!!信じるぜっ!!」
睡蓮は手を離した。その次の瞬間、俺は銃口を上に向けていた、そして引き金を引く。
『ズバガァァァァァァンッッ!!!』
俺の銃撃は天井を軽く吹っ飛ばした。
「す、凄い・・・桜蘭やったな!!って、桜蘭?」
「え、あれ?何だ今の・・・まただ、急に頭の中が冷静に・・・」
俺はなんか急に正気に戻った気がする。と言うより、あの瓦礫・・・本当に俺がやったのか?そうだよ、出来たんだ。けど、今は出来る気がしない・・・アンリエッタと戦った時の感覚だ。あれに近い・・・いや、あれよりももう少しわかるようになって来た。
「あ、桜蘭・・・もう怪我が治ったのか?」
「ん?あ、これもまただ・・・何となく掴めて来た、睡蓮、覚醒の感覚ッス、後もう少しなんだ。後少しで完全に掴める気がする。っ!!そうだ!シャルロットは?俺はどれだけ気絶してたッスか!?」
「20秒くらいだ、だからまだ近くにいると思う。桜蘭、追おう!!」
「はいッス!!なんか、なんか次はやれる気がする!!俺の視力なら、そもそも爆発も見切れる筈だ!」
「それだな!!あいつ相手には下手に慎重に動くのは逆に愚策だ!!爆弾は中距離の戦闘だ!!つまり至近距離の攻撃には弱い!!接近戦を仕掛けるぞ!!」
俺たちはもうトラップの爆弾を気にせずに突っ走った。例えワイヤーに触れても、爆発する前に潜り抜ける!!
『ドガァァァンッ!!』
何だ?遠くで爆発した?あれは零羅ちゃんたちの方角。シャルロット、そっちに向かったのか。
「桜蘭、気がついてるか?俺たちのところにはもう爆弾が無い。完全にあそこでケリを付けたつもりらしいな。そして次はあそこだ、桜蘭。零羅ちゃんたちとの連絡はどうだ?」
「・・・何とか無事らしいッス!!」
俺はとりあえずみんなに連絡を取っていた。エルメスからは何してんのってどやされたけど、とりあえずはみんな無事らしい。そして聞く限り徐々に追い詰め始めてる。このまま行けば全員で挟み撃ちに出来そうだ。
もうあと少しで村の中央広場、いるとしたらここ!!
「ぎゃっ!!」
「きゃっ!!」
俺はその広場へ飛び出した瞬間だった、なんか馴染みのある頭に俺の頭がぶつかった。
「いったたた・・・」
「っつ〜・・・何よ、何なのよ・・・てか、サクラかよ!!何?本当私に恨み無いの!?」
エルメスだ・・・エルメス、だな。このなんか生意気な感じ。
「でも、何とか無事・・・か?サクラ君、何だ?その怪我・・・」
サムさんも一緒にいる。
「わぁっ!!何よその怪我っ!?」
「もう治ってるッスよ。てか、言ったッスよね。シャルロット追い詰めたけど逃げられちゃったって」
「はぁ?何言ってんのよ、追い詰めたなんて聞いてないわよ、さっきの爆発はあんたのヘマでギリ避けたって聞いたけど?」
そんな報告はした覚えないけど・・・
「と言うか、サクラ・・・何でそんな怪我する程無茶したのよっ!!」
やべ、お説教スイッチが入って・・・
ぼろぼろ・・・
「え、泣いてるん?」
「当たり前じゃないのよっ!!この馬鹿っ!!アホ!ドジのマヌケ!トンチンカン!!私が何の為にあんたについて来たのか分かる!?絶対に死なせない為!!全員でこのゲームを終わらせる為なんだから!!誰一人たりとも殺させはしないんだから!」
エルメスは泣きべそかきながら俺を揺さぶった。怪我は治ったけど疲労があるからきつい・・・けど、そんな思いでずっといてくれてのか・・・なんか、申し訳ない。
「エルメスさん、それよりも今は通信だ。身に覚えの無い通信が来る・・・そしてさっきの爆発音、皆の無事の確認・・・」
ぞわっ・・・今、背筋が凍った。そんな訳あるかよ・・・グレイシアさんたちが、やられた?
「グレイシアさん!!」
俺たちは4人、グレイシアさんたちのいる方面へと走った。そこには瓦礫の山が積み重なっていた・・・
「っ!!こんなの、こんなので何ともなかったはあり得ないわよっ!!グレイシアッ!!返事しなさい!!」
「グレイシアさん!!零羅ちゃん!!」
俺たちは叫ぶように2人の名を呼んだ。瓦礫だらけだ、何も見えない。動くのは無いか?
違う、これは瓦礫が少し崩れただけだ・・・
『せーの』
せーの?何だ?今の掛け声、てかあれ?ここの場所なんか涼しい・・・この冷気は、この下?
あれ、これってまさか!?
「やっべぇぇ!!みんなぁぁ!!伏せろぉぉっ!!」
『チュッドオオオオオォォォォォンンンンッッッ!!』
シャルロットの爆弾なんか目じゃ無いほどの炸裂が俺の真下から起こった。
「ひゃえー!!あっぶねー!!さっきのシャルロットの攻撃より死にかけたッス!!」
グレイシアと零羅ちゃんが何もかもを吹き飛ばして涼しい顔で下から出て来た。
「うん、大分上手だから・・・」
「はい、ありがとうございますグレイシアさん。はれ?みなさん、どうされました?」
グレイシアさんと零羅ちゃんは2人して首を傾げてる。
「どうしたじゃないわよ、巻き込まれてんじゃないのよ。怪我はない?」
エルメスは相変わらずの口調だが、なんか俺よりかは言い方がキツく無い気がする。
「何で怪我?特にするような事あった?」
「いや、思いっきり爆弾に巻き込まれて・・・」
「あ、あれってそう言う事・・・てっきりシャルのいつものおふざけに感じてたから・・・」
あの爆弾をおふざけで終わらせれるあなたは何なんだ?
「あんたは危機感がないと言うか、何と言うか・・・」
「あっ!!それより麗沢とシィズさん!!あの2人もこの事態に気がついてないのならこっちに向かってる筈ッス!!狙われる前に先に見つけないと!!」
「およっ?皆様そろってご機嫌うるわしゅうでごさるな!HAHAHA」




