リメイク第二章 進む覚悟は全ての平和の為
「サクラよ、この世界をミカミ レイと言う存在を抜きにすればどう思う?」
ミカミ無しで考える?無理だろ、この世界ほぼ全てにあいつが絡んでくる。強いていうならあいつがいないこの世界は・・・
「平和?」
俺は呟いた事を後悔した。まさかとは思うが、あいつ、そんなことの為に?
「その通りだ。私は一度彼に尋ねた事がある、君らの世界の犯罪発生率を。ニホンだったな、そこでは一日に起こる犯罪は五千を超えるらしい。そして、この世界の犯罪率は大陸全てで見ても一日三百程度なのだ。
だがこれは二年前からの話、その前の犯罪率は一日軽く一万は超えていた。皮肉な事だ、彼の支配がこの世界に秩序をもたらしたのだ」
「けど、そんな治安維持の為に無実の人を殺し続けるなんて、駄目に決まってんだろっ!!」
「本当か?サム、聞こえているだろ。二年前より彼に殺された者たち。それは本当に無罪の存在だったか?違う筈だ、サムの率いる『反逆者たち』は、あの男に反旗を翻す為に作られた組織の中では最も統制の取れた組織だ。
しかし、二年前には過激な組織や、裏工作をする組織、様々な反逆者がいた。あの男が殺したのは全員この国への反逆意思を持った者に違いはないのだ」
そう言えば前に見た処刑の映像。あの男は殺されるにも関わらず、助けを懇願するよりも三上への怒りを口にしていた。まさか、三上が殺して来た千人規模の人達ってみんな本当に国家反逆の存在だったのか?
「で、でも例えそうだったとしても何もしてない奴らを!!」
「死でなければ示さないのだ、だから彼はその罪を自らに背負っている。それに、お前も一度あの男と対峙したならば知っている筈だ。あの男の怒り、この世界全てを憎んでるあの笑顔を・・・」
・・・て事は、あいつは本当にこの世界の平和の為にこんな事を?いや、ならゲームは何なんだ?何のためのゲームなんだ?
「君も分からないだろ、私もだ・・・一体何が正しいのだろうな。私は考えてしまった、彼亡き後この世界はどうなってしまうのか。きっとこの世界にかかっていた枷が外れるだろう。そうなればこの世界はどうなる?彼は・・・本当は」
「アンリエッタ」
アンリエッタが何かを言おうとした時、グレイシアさんが車から降りて遮った。
「グレイシア、そうか・・・お前はそれでも彼を止めると誓ったんだったな」
こく。
「例えこの先、レイがいなくなって世界の枷が外れてしまったとしても、私はこの歩みを止めないから。私は進む」
グレイシアさんは真っ直ぐ見つめた。そうか、それしか無いよな。
「・・・それしか無いッスね、俺たちは何が何でもあいつを倒す。その先の事はまだ分からないけど、その先まで闘い続けるのが俺たちの役目だろ。そうだよ、このゲームで終わるのはほんの一節だ、全てが終わるんじゃ無いッス。
『ラスボスを倒して平和になりました』なんて、それを実現するのはこのゲームとはまた違う闘いの物語ッス、あいつ倒してどうやって平和な世界にして行くのか、俺たちはそこに向かってまた闘う事になるんだ。考えて学んで、成長していく。それがこのゲームの意味だって俺は思うッスよ」
そうだ、今自分で言って気がついた。終わってからこそが始まりになる。このゲームはその為の試練とも言える。
だから余計に分からないけどな、何で三上はそんな事をやらせようとしてるのか、あいつはそもそもこの世界ごと自分を消そうとしてる。その理由なんて分かりっこないが、俺たちはそれでも進んで平和を取り戻す。
「・・ふむ・・・・成る程、どうやら完敗だ!!負けたよ!!私らしくなかった!!余計な事を考えたのが我が敗因だ!!わっはっはっ!!!」
アンリエッタは突然吹っ切れたように大笑いを始めた。
「そう、それで良いから。アンちゃんらしい」
「うむっ!!そうだなグレイシア!!そしてサクラよ!!感謝するぞ!!おかげで今は気分が良い!!そもそも私は後先考えるのが下手だっ!!」
「俺もッスよ、考えたって答えは出ない。だから今はとりあえず突き進む、それしか出来ないんス」
「フハハハ!!そうか!!お前とは気が合いそうだな!!この戦いが終わった時共に飲み交わそうではないか!!」
「あ、俺未成年ッス」
「構わんっ!!私も酒は飲めんからなっ!!サイダーで乾杯だっ!!」
あら、そうなのね。意外と繊細と言うか、何と言うか。
「それにしてもサクラよ!さっきの一撃は効いたぞ!!お陰で装置がぐっしゃぐしゃだ!!この一瞬で何が起きた!?まるで動きが違ったが!?」
動き・・・あぁ、あれ?あの時は確かやたらとアンリエッタの動きを見切れたんだよな。そんで身体がほとんど勝手に動いてたな。
「お!?まさか覚醒ではっ!?」
あ、麗沢の一言で思い出した。それだ。三上の段階、覚醒だ。
「マジッスか?グレイシアさん?」
「覚醒に大きな変化はないから、けど、覚醒した人は多分全員魔法を合わせた複合魔法が使える。例えば溶岩とか、やってみて?」
溶岩?何だそりゃ。って事は?三上はまだその複合魔法ってのを隠し持ってるのか。はぁ、やだやだ。
けど、俺にも出来るか?
「おりゃ!」
『ボッ!!』
普通に炎が出た、そして土が転がった。溶岩って熱で岩が溶けたものだから炎と土の魔法でやれると思ったんだけど。
「どうやらまだみたい、複合魔法は私も詳しくはないけど、覚醒に至れば否が応でも感覚を掴めるらしいから。残念だった」
「ダメッスか・・・」
こくこく。俺は少し肩を落とした。
「いやっ!!それは違うぞ!!先程私を倒したあの一撃は確実に練度が違った!!つまり君はその覚醒とやらの後一歩の所まで近づいている証拠だ!!自信を持つのだっ!!もっと熱く!努力!!そうすればいつの日か!いや、明日は彼を超える男となるであろう!!!」
アンリエッタが俺の肩に手を回した。けど、あっつい!!本人もだけど鎧が日差しを受けて表面が灼熱だ!!ぎゃーーー!
「あ、そうだ!!次の地区のリーダーについてだ!!サムよ!ここでは地形のせいであまり電波が届かないであろう!!だから私が情報を預かって来た!!勝者たる君らに教えて差し上げよう!!」
あー、確かにこんな何も無い砂漠と土壁じゃ電波は来ないか。
「あぁ!助かる!丁度ここら辺は磁場もおかしいみたいでな!!で、誰なんだ!?」
サムさんが窓を開けて手を振った。
「次の相手はかなり手こずる筈だ、何と言っても彼の右腕たる存在。むしろ彼女を乗り越えれば残りはまだマシと呼べるだろう」
半分過ぎてやたらと強い中ボスって感じなのか。てか、彼女ってまた女の人なのか。
「右腕って、嘘でしょ!?まさかあの子がっ!?」
あ、エルメスが驚きのあまり窓から顔を出した。
「そうだエルメスよっ!!次のリーダーの名は!シャルロット レッドローズ!!王国軍爆破部隊隊長だっ!!」
・・・名前言われても分からんっ。名前はなんか、カッコいいような可愛いような名前だけどもさ。
「サクラよ!!シャルロットの特技と言えば何と言っても爆弾技術だ!!彼女の爆破による建物解体は最早芸術!!そして恐ろしいのはその開発力だ!!彼の持つゲンシバクダンも彼女の開発だ!!」
何っ、この世界の原爆作ったのってそんな女の人なのかよ。てか三上じゃねーのか。て事は、とんでもない天才じゃん。
「シャルは確かに強いから。アンちゃんの言う通り、爆弾に関する知識と技術は多分レイを上回ってる。彼女にかかれば君でも灰も残さずに消し飛ばす事も出来ると思うから」
それって本当に爆弾なんスよね?
にしても爆弾か・・・吉良○影か?カ○スか?それともデ○ダラみたいな感じなのだろうか?
「うむっ!!では私はそろそろ失礼しようっ!!健闘を祈っているぞ!!『全ては平和の為に』!!ではさらばだっ!!せいやぁっ!!はぁっ!!」
アンリエッタは馬に跨り、このクソ暑い渓谷を甲冑着たまま走って行ってしまった。
「さてと、ここも何とかなったしそろそろ行くッスか。てか、暑いから早く車に入りたい」
俺はさっさと車に乗り込んだ。
「わっ!!サクラ汗臭い!!ほらこれで拭きなさいよ!!」
「わっぷわぷ!!」
俺が車に乗り込むなり、エルメスが制汗シートを俺に押し付けて拭いてきた。
「よし、みんな乗ったわね。じゃぁそろそろ出発しましょうか!サム!」
「あぁ、行こう」
俺たちの車は渓谷を走り続ける、景色は綺麗だけど流石に永遠にこれだから飽きてきた。そんな時ふと思い出した事があった。
「そう言えば『全ては平和の為に』って、この世界の人結構使う気がするッスけど、どう言う意味なんスか?さっきもアンリエッタが使ってた」
「ん?『全ては平和の為に』は、この国の国歌の題名だ。作曲者は不明だけど、この国の平和の為に戦った者たちへの歌なんだ。意味的にはこの世界で起こる例え小さな出来事も、その正義があればその全ては巡り巡って、この世界の平和へと繋がっていく、そんな歌詞なんだ」
「だからこの世界のみんなは、その歌詞の意味合いを込めて軍の掛け声にも使うし、他にも受験生の応援とかでもよく聞くわね、後は運動会の選手宣誓にもこのフレーズは大概あるわね」
サムさんが教えてくれた。そして続いてシィズさんが詳しく教えてくれた。
「へぇ〜・・・」
成る程そう言う事、やっと理解できた。お陰で今日はよく寝れるかも、砂漠の夜は寒いけど、疲れたし、気分的にもようやく自分の力で勝利できたし、朝までぐっすり寝れるだろうな。
今日で、ゲーム開始から13日が経過した。




