リメイク第二章 巨大渓谷に待つは熱き心の騎士
俺たちはまだ海岸道路を走り続ける。俺は海をぼーっと眺めてたらなんか大きな島が見えて来た。
けど、あれ?あの島・・・なんかずーっと追いかけて来てるように見える・・・でかいせいなのか?
「いや、あれ?やっぱりあの島動いてるっ!!」
俺は声を上げた。
「島?あぁ、あ!クラーケンだわっ!!」
エルメスが少し興奮気味に指差した。クラーケン?あの神話とかに出てくる系の?
「おぉ、本当だ。あ、やっぱり君たちの世界にはいないんだよね?クラーケン」
「サムさん、俺たちの世界には数百メートルあるような生き物は存在しないッスよ」
そもそも馬に羽生えてるのも変な話だし、人間にヒレがあるのもどーなってんだ?って話。人魚って何処で呼吸してんだろ。
「にしてもこの時期にクラーケンは珍しいわねぇ。あ、クラーケンってのは海に生きてる生き物で、創歴元年時代からいるって言われてる生き物ね。生態系に関しては不明でそもそもあの一体しか存在が確認されてないのよ」
はえ〜、この世界でも珍しい生き物ではあるのね。
「ついでに言うとねサクラ、聞いて驚きなさい。あの島みたいのでもクラーケンほんの一部の触手なのよ!驚いた?」
マジか!そりゃ驚きますとも!!
「ひょぉぉぉっ!?という事は!と言う事でござるなっ!?」
「うお」
そして俺は麗沢の声に驚いたわっ!!あれで一部って本体はどんなレベルなんだ?
「けど、あいつ人間襲う危険なやつでもあるのよねぇ。ま、けどどう言う訳か海岸から50キロ越えなきゃあいつは襲ってこないわ。あいつはこの世界の海どこにでも現れるから船は絶対に陸から五十キロ離れない航路が作られてるわね。
因みにここで見えてるあいつは普段もうちょっと夏が深まってからよく見えるようになって、その時期になると観光船も運行されてるわ」
シィズさんが付け足して解説した。観光って、ホエールウォッチングじゃ無いんだから・・・てか、この世界って海の向こうに行けないって事なのか?
「さてと、海とはここら辺でおさらばだな。ここからは砂漠地帯に入る。暑いから心してくれ、この車あまりエアコンの調子は良く無いからね」
サムさんはハンドルを切って道はどんどん海から離れていった。暑さならきっと大丈夫さ、エリザベートさんの服、なんか良い感じに気温に応じて体感温度が全然違うから!何なら最終的に最強クーラー、グレイシアがいるし!
「あっつ〜・・・・・」
砂漠地帯舐めてました。服装で何とかなるレベルじゃない、何だこの強烈な日差し。服を突き破って燃えるかって程に暑い・・・
「このままじゃ死にそう、グレイシアなんとかしなさいよ」
エルメスがグレイシアに頼る。てか、この人まだコート着てる・・・あぁ、あの人自分一人エアコンコートしてるんだった。
「良いけど・・・けどやったら車壊れるから・・・」
「あぁ・・・あんた自分に使う以外だと加減出来ないもんね・・・くそ、どうしたもんかなぁ・・・あついよ〜。サクラ、氷出せる?小さくても良いからそれで良いわ」
カラン・・・
俺はエルメスのコップに銃の先端から氷を出してみた。丁度良い感じのブロック氷出せたけど・・・俺の魔法の水って飲めるの?
「あ〜・・・多少マシだわ、どーもねー」
そしてエルメスはその氷を氷嚢に突っ込んで使ってた。
「お、ヒュージキャニオンに入ったな。ここからしばらくは日陰も出来る。さっきの何も無い砂漠道路よりかはマシのはずだ。それに見てごらん。ここがヒュージキャニオン屈指の名所『歴史の風道』と呼ばれてる。この渓谷に吹く風と差し込む太陽の光が作った絶景だ」
おー、壁沿いにすら〜っとした線と光のグラデーションでなんかすごくいい感じの景色になってる。
「サクラあんた、今テキトーな感想持ったでしょ」
「ぐぬ、だってこの景色には、なんか俺がどうこう言っていい感想が思いつかなかったもん」
「国語から教えてあげようか?」
エルメスはイタズラな笑みを俺に向けて来た。
「エルメス、そろそろ目的地ですよ。サクラ君をいじるのはその辺で」
「い、いじってるわけじゃないわよ!!てか、次は誰だっけ?」
「あ・・・噂をすればだ。またあなたが知ってる人ですよ、私も印象強すぎてよく覚えてます。軍所属にも関わらず彼女の話は警察にもよく飛んできました・・・にしてもすごいな、日陰とはいえこの地で軍の甲冑着てますよ・・・」
道路のど真ん中、まるで待ってましたと言わんばかりにその人はいた。
白馬に乗り、大型のランスを携えた西洋甲冑を装着している。そして必勝と書いた鉢巻と金髪ポニーテールが印象を強める。そして極め付けは・・・
「我こそはっ!!ヒュージキャニオン地区リーダーにして!!アダムス王国軍突撃隊長!!アンリエッタ!ヴェロニカッッッ!!!待っていたぞ勇者達よ!!!さぁ!!正々堂々と勝負と行こうではないか!!フハハハハッッ!!!」
声でかっ!?車はまだ閉め切ってるのにも関わらずこの声量、そしてキャラが暑苦しい。
「うわ・・・アンちゃんかよ・・・私もちょっと苦手なのよねあいつ。高校の時、隣のクラスの学級委員だったけど、同じく学級委員だったの私以上に仕事熱心で、特に運動会とかの話になると組分けについてとか種目とかについてやたらと突っかかって来たのよね・・・」
エルメスは頭の上に氷嚢を乗せたまま窓の外をこそっと眺めてる。
「さぁ!!腕に力ある者が居れば来い!!私としてはランディとポンサンを打ち負かしたと言うサカガミ サクラとの決闘を挑みたいが!!」
「先輩、ご指名でござるよ」
「俺はホストじゃねーよバカ麗沢」
「けど、この雰囲気は1対1の勝負ですよね?と言う事はやはり桜蘭さんから行った方が良いのでは?」
「そうだな、雰囲気的にも感覚的にも桜蘭が適任な気がする、だって桜蘭が一番俺たちのリーダーっぽいから」
勇者組4人でヒソヒソ話し合ったけど、なんか無理矢理俺が行かされる雰囲気になった。てか睡蓮のはなんだ?俺がリーダーっぽいって嬉しいんだか嬉しく無いんだか。てかみんな多分外暑いから出たく無いだけだ。
『と言う訳で頑張ってくださーい』
「麗沢、もし俺が負けるような事があったらお前が次外に出ろよ?」
「もっちのろん!!しかし拙者は先輩を信じてるでござるよ〜」
送風口に顔を近づけて言うセリフじゃねーよ。けど、リーダーはリーダーだ。やる時はやらないとダメか。
「んっ!!遂に出て来たなっ!!」
「あぁ、俺が坂神 桜蘭ッス・・・てかあっつ!!何この気温!!」
「ほうっ!!この私に、一人で挑むかっ!!私はそう言うガッツのある奴は好きだ!!自己紹介し直そう!!我が名はアンリエッタ ヴェロニカ!!そして我が愛馬のポリス アルバトロス!!よろしくなっ!!」
鳥なのか警察なのか軍人なのかどれだ!?
「さぁ、もっと熱くなれよ!!」
いや結構ッス・・・なんかこの人背景にあの熱いプロテニスの人がチラつくなぁ。
「サクラ〜、ついでに言うとアンちゃんは高校時代テニスで世界取ってるからね〜」
エルメスが窓を少し開けて蛇足を入れて来た。
「さて!そろそろ始めようか!!君の意志に応えて私も馬から降りて戦おう!!さぁサクラよ!剣を抜けっ!!」
ジャキィィンッ!!!言われなくてももうやってる。俺は剣を、アンリエッタもランスをそれぞれ構えた。
「・・・・・・・・行くぞォォォっ!!!!」
ランスの攻撃!!早いなっ!!けど、これなら見切れる!!
『ギギギギッ!!!』
お、重っ!!こんなの直撃したらやべーな!!何とか捌けっ!!
「うおおおおおおっ!!」
「んっ!!弾かれたっ!?」
隙だ!!ここに攻撃を叩き込め!!俺はあいた胴へ剣を振る。
「ふぅんっ!!!!」
「切り返しがっ!!」
仕方ないっ!!しゃがんで避ける!!で、もう一度だ!!
『ガギィィィンッ!!!』
けど、俺の攻撃はアンリエッタのランスに阻まれ鍔迫り合いとなった。
「フハハハハッ!!!いい動きをするではないかっ!!サカガミ サクラ!!」
「くっ!!まだまだこれからッスよ!!」
けど、どうしたもんか・・・スピードもパワーも負けてる。こうなれば一か八かだな、位置エネルギーに頼ってみるしかない!!
俺は距離をとって銃口を下に向けた。
「ん?」
『ズガァァァァァンッ!!!』
そして俺は出来る限り最大出力の風で大きく飛び上がった、要するに飛び上がって俺の振り下ろす。けど、何十メートルも高く飛べばアンリエッタの攻撃を打ち砕ける筈!!この人の事だ、避けるなんて真似はしないと思う!!
「行けぇぇぇぇっ!!」
「ふっ!受けてたとう!!!」
タイミング良く振れ、最も力の入る体制で一撃を入れろ。
「ここだぁぁっ!!」
「行くぞっ!!!」
互いに攻撃がぶつかり合う。けど、弱いのは俺だ・・・これだけやってもパワーはアンリエッタのが上。
「どうやら私の勝ちらしいな!!」
「くそっ!!まだだ!!うおりゃぁぁぁっ!!」
俺は電撃をアンリエッタに向かって撃ちまくった。
「ほう!!いい作戦だったな!!しかし!!この鎧は魔法を受け流す!!私の勝ちだっ!!」
「うわっ!!」
俺は押し負け、ランスが肩に刺さる。
「くっ!!痛た・・・」
負け・・・負けた。俺は倒れてアンリエッタは立っている。ちくしょう、俺の実力はまだこの程度なのかよ・・・
「ふぅ、中々良い戦いだったな・・・中々悔やまれる逸材だ・・・」
ん?
アンリエッタ・・・こいつ、なんで・・・
「さぁ、次だ次!!次は誰だっ!!」
「お、およ拙者ぁ!?」
「いや、待てよアンリエッタ・・・一つ聞かせてくれッスよ、お前なんで三上に付いてんだ?」
俺は立ち上がってアンリエッタに質問した。
「・・・そんな事、知らなくて良い筈だ」
この顔っ!! プツン・・・
「っ!?」
「おっ!?」
俺はアンリエッタに向かって電撃を撃ってた。アンリエッタは何とか受け止めたが手は痺れたな。
「くっ!!まだ戦うと言うか!!しかし!!その怪我ではっ!!」
「怪我?何の事ッスかね?」
「何だと、治った?ふっ・・・ならばっ!!」
再びアンリエッタのランスだ。
『グサッ!!』
「な、何をして!!?」
「お前こそ他所を見るなっ!!」
「ガハァッ!」
俺はランスを抱えて巻き込んでから、体勢を低くしてアンリエッタの顎を思い切り蹴り上げた。そして仰け反った身体に風の魔法を撃ち込んで一気に吹っ飛ばした。
ドサッ!!!
「お、お?お?」
「この力・・・な、何?その傷、もう治っているだと?」
俺の2回目の貫かれた傷も塞がった。そして俺は倒れてるアンリエッタに銃口を向けた。麗沢は卍みたいなポーズで固まってる。
「なぁ、アンリエッタ。お前は三上に忠誠なんてないだろ。なのに何で従ってるんスか?あんたは強いし、俺よりも賢い筈だ。なのに、何で・・・」
戦いの最後、俺はアンリエッタを見失った。それまで真っ直ぐだった俺たちの戦いが突然切られたんだ。三上、あいつの存在のせいで。それで再び感じた、逃げる感覚だ。アンリエッタは急に逃げてしまった。俺はそこに異様な程怒りが湧いて来た。
「流石と言うべきか・・・私が彼に忠を誓う理由か。実のところ私にもまだ分からないのだ。私の中には彼のやり方に反した意思を持ってるのは確かだ。しかし、同時に彼を正義で見てる私もいる」
「あいつにか?」
「そうだ、サクラよ。一つ質問だ、お前たちの世界は完全なる平和な世界と呼べるか?」




