リメイク第二章 王を愛した二人の覚悟は互いに懸ける命
海岸道路の車の中、俺たちは次のリーダーについて話してた。
「で、次のオーシャナ地区のリーダーなんだが・・・エルメスさん、グレイシアさん、あなたたちにまた関係のある人でした。あなたたちの高校時代の後輩、ベアトリーチェ ブルーベルだ」
『リーちゃん?』
サムさんの情報を聞いたグレイシアさんとエルメスは同時に聞き返した。
「その通りだ。しかし彼女は軍人でも、ましてやニャンタのような警察でもない。ごく普通の一般女性の筈だ。二人は何か分かりますか?」
サムさんの話によれば次のベアトリーチェって人は普通に一般人らしい、それでいてエルメスたちの後輩だとか。やっぱりリーダーってのは、三上が集めた軍とか関係なしで作った少数精鋭みたいなもんなのか。
「あー・・・リーちゃん、ねぇ。ミカミのやつ絶対わざとよ。これサクラたちよりもグレイシアにぶつける為に用意したんじゃない?」
エルメスがどうしたら良いのか分からない苦笑いになってる。
「どゆことッスか?なんかグレイシアさんと一悶着でもあった?」
「そんなとこよ、この恋愛おバカさんは気が付いて無かったみたいだけどね」
「・・・?」
本当だ、グレイシアさんは今自分の話をされた事に気がついてない。
「ま、つまりはリーちゃん、ベアトリーチェは大学時代にミカミに出会った訳よ。
あの日は確か・・・あ、そうそう、ミカミがお父様と一緒に大学の研究室に来てたのよ。それこそ異世界に関する何かのデータが見つかったかなんかで。でも、その日にバケモノが大学内に侵入してさ、ベアトリーチェは逃げ遅れた訳ね。そんな時にベアトリーチェを救ったのがミカミって訳」
あぁ、成る程。こりゃ恋のライバルだわ。てかあの野郎、なにイケメンな事してんの?
「でも、三上はグレイシアさんにしたんですよね?」
「そ、ベアトリーチェはグレイシアと違って引っ込み思案でさ、それで何も気づいてないあんたが先に告った訳。分かった?」
「・・・え? リーちゃんレイの事好きだったの?」
そこまで言ってようやく理解してくれた。
「なら、一緒に結婚すれば良かったから・・・」
あぁ、この人天然っての忘れてた・・・
「はぁ・・・ね?分かるでしょ?あの子がリーダーな理由がさ」
よーく分かりました。
そんなこんなで到着、ここは海沿いの街でアオシラと違って漁業で繁栄したって感じだ。あちこちで干物とか売ってる。あぁ、たまには新鮮な海鮮丼でも食べたいなぁ。
「あ、あのっ!!」
と、思ってたら緊張した声で声をかけられた。
「ん?」
「あ、リーちゃん久しぶりね」
こ、この人が・・・確かに引っ込み思案っぽい、てか根暗か。少し猫背で前髪も長い、服もなんか長めのスカートだ。そして何より・・・アレが。
「あ、エルメス様・・・ご、ご機嫌よう。あ、は、はじめまして。勇者さんたちですよね、あたし、ベアトリーチェです。あ、よ、よろしく・・・ね?」
うん、挨拶もぎこちない。
「話は聞いてるわよ、こんな事でリーダーを引き受けてって、言いたいけど、あんたにとってはそれぐらいの覚悟って事なのよね」
「そ、そうですよ・・・けど、アレはあたしが先に言えなかったせいで・・・そこは怒ってないです」
もじもじ・・・
この子大丈夫かなぁ。
「こら!そんな風じゃダメ!!どちらにしたってグレイシアと戦いたいんでしょ?せめて全力でぶつけなきゃだめよ!言いたい事はちゃんと言わないと!!」
それにしても、敵に対してとお節介焼くんだなぁ・・・エルメス。
「う、うん・・・ぐ、グレイシア・・・あたしが、怒ってる事は、ただ一つ・・・あの人を幸せにしなかった事・・・それを、言いに来た!!」
ベアトリーチェはグレイシアを前にやっと背筋を伸ばして真正面に立った。互いに見つめ合い、時が流れる。
「これは・・・なぁ桜蘭、気がついてるか?」
睡蓮が二人を見てある事に気がついた。
「あぁ、流石の俺でも分かるッスよ」
「うむ、これは流石にベアトリーチェ殿に武があるでござるな、キリ・・・」
男たち三人も、真剣に2人を見ていた。
「あんたたち、いつの間にそんな師範みたいな感じになったのよ・・・でもリーちゃんのが強いって、どう言う事?」
「見て分からんか?エルメス・・・ベアトリーチェは」
せーの
『グレイシアさんよりおっぱいでかい!!!』
ゴッチン!!
言った瞬間にゲンコツ3発喰らった。
「こんな時にどこ見てんのよ!このド腐れ童貞共がっ!!」
いや怒られるのは分かってたけどさ、根暗な子は実は巨乳ってベアトリーチェのそれはそんなレベルじゃないんだ。マジで大きい。
「あ、ありがとう・・・あ、あたしが勝てるのってこれくらいだから」
「ち、因みにサイズいかほどでござる?・・・こ、これは単純な疑問であって決してスケベなそれでは!!拙者の嫁は二次元故!!」
麗沢が聞きに行くとは・・・個人的に考えると、トップで100センチは確実に超えてる、アンダーが服のせいでわかりづらいな。だとしても、Kはあるかな?
「い、一応・・・トップが百二十の、アンダー七十三でぴ、Pカップです・・・」
『ぉぉ・・・』
「この男子共・・・」
俺たち三人どころかサムさんまでどよめきだった。
「あれ?Pって、この世界アルファベットあるんスか?」
そんな会話の中で俺は疑問に思った。
「あ゛?ミカミの奴が広めたのよ、そのあるふぁべっと?それがあるとないとじゃ生活のし易さが違うんだと!因みに言っておくけど、私はEだから!すんごい綺麗な形してんだからね!デカけりゃ良いってもんじゃないのよっ!!」
エルメスは鼻高々に言い放つ。
「あれ、グレイシアさんは結局どんなサイズなんスか?」
俺は何となくこのノリのまま聞いてみた。
「・・・覚えてないから、けど、確か・・・Gか、H?見てみる?」
「ファっ!?」
グレイシアさんは突然コートのボタンを外し始めてしまった。
「わーっ!!やめなさいよ!!人前で脱がないっ!!」
エルメスが慌てて間に入る。
「? でもいつも家だと風呂上がりとか暑いから裸・・・」
「あんたいつか公然猥褻で逮捕されるわよ?」
「で、あんたらいつになったら始めんのよ!この爆乳雌牛共がっ!」
こんな会話の中、より毒の強いイライラした声が聞こえた。シィズさんだ・・・そう言えばこの人相当小さ・・・
「ったく!!乳自慢ばっかりしやがって、私ゃ何食っても成長しなかったんじゃぼけっ!!その結果AA以下じゃ!!サクラ!スイレン!!この話を振ったあんたら!覚えときっ!!」
で、相当口悪くなってる。
『す、すいませんでした・・・』
やれやれ、このままこんな流れで戦いが終わってくれるならどれだけ嬉しい事か。
けど、この戦いは俺の遥か想像を絶する戦いへと発展してしまった。
「グレイシア・・・あたしは、あなたをここで倒します!」
こっからはやっとグレイシアさんとベアトリーチェの1対1の戦いだ。ベアトリーチェは武器を取り出す、あれは盾?
「グレイシア、あなたの力は知ってる・・・だ、だからあたしはこれを使う。この盾は・・・あらゆる魔法を、と、止めるわ」
「そう、なら攻撃は?」
「攻撃は、こうするのっ!!」
え、早っ!!?ベアトリーチェは盾を構えて突進をかました、あの胸であんな動きが出来るのか。そしてグレイシアさんは氷の剣を作り出し防御したけど思いっきり吹っ飛ばされた。
「ふぅ、中々重たいの待ってるね。それは良い攻撃だから」
あ、けっこう平然としてる・・・グレイシアさんは埃をパッパって払って出てきた。
「い、今のを喰らっても平気なのは、流石は魔法族ですね・・・」
「で、もう終わりなの?」
「終わる訳、ないでしょ・・・ミカミ様は仰った、あたしをリーダーにした時に!意志を貫けと、そうすればあたしの気持ちに応えてくれると!」
ベアトリーチェの攻撃は激しくなった。不思議なもんだ、あいつの為になんでここまで真剣になれるんだろ。そして三上だよ、あいつ女の子をはべらかすの得意なのか?
そんでこのベアトリーチェって子、絶対メンヘラ気質だ。それなのにその子を煽ったら、そのうちグレイシアを本気で殺す気になるんじゃ・・・待て、まさかそのつもりなのか?
「レイが?」
「そう、や、やはり貴方じゃ役不足でしたね。貴方じゃミカミ様の相手は務まらない。だ、だからまだ子も授かっていないのではないのですか?」
「っ! ちっ・・・」
え、今舌打ちした・・・図星なのか?
「ふふっ、やっと分かりました。やはりあ、あたしが、ミカミ様を支えるに相応しかった・・・あたしの方があの人を幸せに出来る、あたしの方があの人を支えられる。
あたしは調べたの、あの人の好きなもの、嫌いなもの、何もかもを。あ、貴方は知らないでしょ・・・ミカミ様のホクロの数、今日の爪の長さ、抜けた毛の本数。あたしはずっと見てたから知ってるの・・・」
ぞわぁ・・・こ、この人ヤバい子だ・・・ストーカーも良いとこだ。
「こわ・・・」
流石のグレイシアもドン引きだ、そして隣でエルメスが固まってる。
「あ、あの子・・・そこまで拗らせてたなんて」
「そ、それよりも・・・あたしが気に入らないのは、ミカミ様が心の底から笑ってくれなくなってしまった事。ミカミ様は貴方を見るといつも悲しそうな顔になる・・・貴方がいるからいけない。だから死になさいグレイシア、ミカミ様の為に・・・」
目が、目が死んでる・・・さっきまでの暗いけどまだ社交性があった面影は消えた。今は完全にヤンデレストーカーのそれだ。これ下手すりゃ三上すら殺すって言いかねない。
「・・・リーちゃん、私は元からそのつもりだから。あの人の為にこの命を懸ける。あなたもそのつもりなの?」
え、何これ・・・この感覚。これって
「も、勿論です!あたしはミカミ様の為ならこの命・・・」
「ベアトリーチェッ!!逃げろ!!グレイシアはっ!!」
俺は咄嗟に叫んだ、この感覚、殺気だ。グレイシアさんの殺気。前に特訓してもらった時に感じた。けど、今のこれはその時の感覚を遥かに超えてた。
けど時は既に遅かった。グレイシアさんはベアトリーチェに馬乗りになって押し倒して、その後両手両足を一気に凍りつかせ身動きを取れなくし開いた口にグレイシアさんの手が突っ込まれた。
「リーちゃん、本気なら私は君を殺すから。けど、まだ間に合う、選んで?」
「・・・っ!!んぐっ!!」
ベアトリーチェは身動きが取れず悶えてる。
「ちょっと!!グレイシアあんた!!何もそこまで!!」
「エルメス、黙って・・・これは、私の戦いだから・・・」
「っ!!」
エルメスも気がついた、この異様な殺気。この先俺たちは踏み込めない。
「で、どうする?命を懸けるなら、振り解ける筈だから。けど、早くしないとダメ。どっちからが良い?両手足が凍って、腐って使えなくなるか?それともこの口から冷気を送り込んで内側から臓器を使えなくしてくか?どっちでも良いから。けど、早くしないとあなたは死ぬから」
「や、 やめ・・・」
「やめないから、あと三秒で右手は完全に凍る。もう二度と使えなくなるから」
おいおいおい、グレイシアさんマジかよ。あの人、本気で殺す気だ。これ、零羅ちゃんと違って自分の意志で殺そうとしてる。また三上に祈るなんて都合のいい展開は無理だ・・・
「ん、んぐ・・・・・・お、おね がい」
あ、今こんな事言っちゃアレだけど、色々と漏れてしまった・・・
「はぁ、分かった・・・やめるから」
『バギィィィンッ!!』
そしてそれを見た瞬間、グレイシアさんは我に返ったように氷を砕いた。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・な、なんで」
ベアトリーチェは涙目でグレイシアを見つめた。
「リーちゃんは死の恐怖に負けてたから・・・悪かった、あなたはまだそこにすら立ってなかった。それを見誤った・・・」
「死の・・・恐怖・・・」
「うん、私の攻撃、あなたがそれを克服してたなら防げた。さっきの私の攻撃を止める最大の手段は死なない事。例え腕がもげても、内臓が潰れても私は生きる。さっきも噛み付くとかも出来た筈。けど、あなたは死の恐怖が先に襲ってきて身体が動かなくなってたから・・・」
グレイシアさん、前々から思ってたけど・・・やっぱり覚悟の差がえげつないな。
「あと、レイは簡単に命を捨てろなんて絶対言わないから。むしろ、そんな奴はレイが一番嫌う人」
「っ!!・・・」
こりゃ完全にグレイシアさんの勝ちだ、強さも精神も。ベアトリーチェも頑張ったんだろうけど、差がありすぎる。確かにエルメスの言った通り、これは三上がわざと仕組んだっぽいな。
「そう、ですね・・・あ、あたしは、ミカミ様を知り尽くしたつもりだったのに、全然足りませんでした・・・ごめんなさい。グレイシア様、貴方の勝ちです、何もかも・・・や、やっぱり、本当に好きなんですね、ミカミ様の事」
こくり。
「私は、何としても止めるから・・・」
「グレイシア様、こ、これが装置です」
ベアトリーチェは何処かからあの装置を取り出した。胸の間から出したのか?
「・・・・・グレイシア様」
ベアトリーチェはグレイシアさんに問いかけた。
「リーちゃん、私は呼び捨てで良いから」
「なら、グレイシア・・・お願いがあ、あるんです。ミカミ様を、あたしが見たあの笑顔を・・・もう一度取り戻させて下さい。せめて一度だけ、あたしはあの人が心の底から笑ってくれるのを見たい。だ、だからお願い・・・あの人を止めて、貴方なら・・・いえ、貴方たちなら、ミカミ様を止められると信じてます」




