リメイク第二章 再出発は異世界を知る珍道中
零羅ちゃんはまるで赤ちゃんみたいに泣きじゃくった後泣き疲れてグレイシアさんの胸の中で眠ってしまった。
「やっぱり子供は、はしゃいで泣いて寝るが一番ッスよね」
「小四はもうちょっと違う気がするけどね、にしてもグレイシア・・・あんたなんだかんだ人妻なのね、なんか、負けたわ」
零羅ちゃんを寝かせてるグレイシアを見てエルメスが少し苦笑いしていた。
「そう?」
グレイシアさんは普段通りらしいけど、確かに今の流れは母性を感じたわ。そう言えばグレイシアさんって子はいないのか?ま、プライベートな事は突っ込まないでおいた方がいいかな。
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しばらくして零羅ちゃんは目を覚ました。
「わたくし決めました・・・この旅を続けます。そして今度はあの自分に、そして三上さんに勝ちたいです。ですからみなさん、お力添えをお願いしても良いですか?」
みんなオッケーサインを出した。零羅ちゃん、心なしか前の時より笑顔が自然になったな。
「よし!!なら再出発するわよ!医者に退院の旨は伝えたし!さ、レッツゴー!!」
何故かシィズさんが元気に仕切って俺たちの旅は再開した。
次の目的地は南オーシャナ地区、何でも海が綺麗なリゾート地らしい。大体2日程度はかかるんだってさ。
「で?サム、次のリーダーは誰なのよ」
エルメスは安定に運転席と助手席の間から顔を出して座ってる。ここの法律だと後部座席のシートベルト義務化はされてないんだってさ。
「あぁ、その件なんだがさっきジョシュと連絡を取った。場所はアオシラだ」
「え、マジの観光地じゃないの、治安も良くてさ、そんな所にリーダーね。誰かいたかしら?」
「それがまさかのだ。いや、そろそろ来るとは思っていたがな。水の魔法の使い手、ニャンタだ」
あれ、確かその名前聞いた事あるな・・・確か、ワンコとポンサンの・・・
「あいつなの?けどあいつって確かあの三人組の中で唯一の警察でしょ?軍に入隊出来なくてそれで警察には何とか合格したって」
「まぁその通りですよエルメス様、それでも遅刻、無断欠席が続いたせいで一番治安が安定してるアオシラに飛ばされたんだ」
ワンコとポンサンのイメージが付いてるからな、今の聞くと一人だけやたらズボラだな。
「けど、ニャンタはあの三人の中では群を抜いて強いから・・・」
そこに横槍を入れるようにグレイシアさんが呟いた。
「え、そうなのグレイシア」
こくり。
「その通りです、ニャンタは他者との連携に関しては警察学校での成績は最下位でした。しかし、個人的な実力に関しては全て上級、総合だけならば主席です。数字で言うなればあのランディをも凌ぐ実力と言ったところです」
ランディか・・・あいつでも相当苦戦したのにな。
「あいつ、あんなぽやんとしてるのにそんな強いのね・・・何か対策は?」
「私もそれを考えているんだが、一つ良いものを思いついたんだ、アオシラならばあの人がいる。協力を仰げるかもしれない」
「あー、あいつね・・・確かに使えるかも」
あの人って誰だ?エルメスもそれだけで通じてるっぽいけど。
「ひょっ!?」
「わぁっ!?な、なんスか!?急に麗沢!!」
突然麗沢は変な大声を上げた。
「せ、先輩!!あれ!あれ!!アレでござる!!」
麗沢が窓の外を指差してる。何だ?馬?馬なんてこんなど田舎ならいてもおかしく・・・ん?
よくよく見たらあれ、普通の馬じゃない。シャキーンとした立派な角が生えてる。
『ユ、ユニコォォォォンッッッ!!!』
俺と麗沢は一気にテンションマックスだ。
「わっ、な、何よあんたら、ビックリしたじゃないのよ。え、何?一角獣がそんなに珍しい?」
「な、何を言っているんだ!!ユニコーンだぞ!?伝説の生き物じゃないか!」
後に続いて睡蓮がエルメスを揺さぶる。
「そうですよっ!!ファンタジーを代表する神獣の一角じゃないですかぁ!!その血を飲めば不老不死の力を得たりとかですよっ!!」
俺たちの興奮は零羅ちゃんにも伝わってる。
「へ、へぇ・・・あんたらの世界にはいないのね」
エルメスはギャップのせいかなんか引かれた。
「君たちの世界ではユニコーンと言うのか・・・ここの南ウィートのウィート平原は麦農場と牧場が多いね、ウィート平原産はとても有名なんだ。一角獣もここでよく育てられててね。あ、なら天馬は知ってるかい?同じようにここら辺で有名なんだけど」
「ん?」
サムさんが指差した方向、アレは・・・馬の姿に翼が生えてる・・・
『ぺ、ペガサスゥゥゥッッ!?』
今度は四人全員で同じ反応をした。
「ひえー!!ここに来て急にファンタジーの世界になったー!!」
「はは、改めてここが異世界だった事を再認識したよ・・・異世界に飛ばされたのもあながち悪い事ばかりでもないな」
いつもクール気味な睡蓮でさえ流石に興奮してる。
「お、ならばサム殿!一つ質問でござる!!この世界にドラゴンはいるのでござるか!?あ、ドラゴンと言うのは・・・この世界の訳し方だと、翼竜が適当でござるか?」
「ドラゴンかい?それなら私の実家で飼ってるが?まぁ、空は飛べない種だけどね、私自慢の家族だ」
サムさんが懐から写真を数枚出してきた。トカゲのような姿に蝙蝠翼、そして2メートルはありそうな巨体。ドラゴンだな・・・そのドラゴンにサムさんが写り込んでる。
「ドラゴンの飼育は法律的にも結構厳しいのよね、サムのお父さんはその許可を得てるのよ。それから空を飛ぶ種に関しては完全に飼育が禁止されてるわね。あなたたちの世界にはいないのかしら」
「シィズさん、いませんよこんなの・・・」
俺は外のペガサスとユニコーンに目を向ける。すると珍しいのなペガサスたちも俺たちの車をじっと眺めていた。
『・・・ジ』
「ん?今何か言ったッスか?」
通信機・・・じゃないな。
「お?何がでござる先輩?」
「いや、なんか誰か俺を呼んだような・・・」
今確かに呼ばれたんだけどな・・・誰の声かは分からなかったんだよな、興奮し過ぎたかなぁ。
「ここの平原を越えたらアオシラ海岸はすぐそこだ、もう少し飛ばしていこう」
本当に長い一直線の道を永遠に走り続けていた。これ終わりがあるのか?そう思っていた時の事だ。遂に真っ直ぐの道が白い街並みへと消えていくのが見えた。そしてその先にはもう道はなく見えてきたのは。
「わおっ!海だぁぁぁっ!!」
ようやく変わった景色に俺はまた興奮した。
「あれがアオシラ、アダムス屈指の観光地だ。治安もかなり良い、恐らくここにいる連中はミカミのゲームなんか興味ないだろう、襲われる心配はない筈だ。この地で争いを起こす事なかれ、アオシラの条例で定められてるからね」
成る程、治外法権が認められてる場所って感じなのかね。
車は街へと入る、しろーい壁と建物、そして青い海。まさに南国リゾートだ。
「シィズ、私は彼に会ってくる。ニャンタは恐らく勤務中で今は駐在所の筈だ。それまでビーチで休んでおいてくれ。私が戻った時ニャンタの元へ向かう」
そう言うとサムさんは車を降りて何処かへと向かった。
俺たちも降りる、そしてビーチの方へと向かった。本当だ、みんな俺たちに気がついてるのに敵対する感じの人が誰もいない、むしろ有名人が来たぞー的な感じだ。
「なぁあんたら!例の勇者たちだろ?何でも国王のせいで世界中走り回ってるんだって?御苦労だったな!良かったら俺のレストラン寄ってってくれ!特別タダでご馳走してやる!」
しかもこんな待遇だ、俺たちは海の見えるレストランで朝食を摂った。ここの料理は海鮮が多いのか、と言うよりサーモンマリネ、小エビフリッター、アクアパッツァとかだ。それに加えてデザート、と言うよりドルチェって言いたい。そこへティラミスと来た、むっちゃイタリアンやん。
それにしてもこんなちゃんとした料理久しぶりだなぁ。ずっとガソスタのファミレスだったから。因みに前に食べたジャンバラヤが意外と美味しくてたまにあったら注文してる。おかげで昔より辛いのが克服出来た。
その後俺たちは海の方へ向かった、みんなそれぞれ遊んでる。俺も靴を脱いで波打ち際まで歩いて行く。わぁお、水が青いなんてもんじゃない。透き通った透明だ・・・ほら、近くに浮かぶボートなんかも透明で浮いてるように見える。
じー・・・・
俺が海に見惚れていたら俺の斜め後ろに変な視線を感じた、零羅ちゃんだ。
「な、何してるんスか?」
「い、いえ・・・海が初めて見るもので、写真なもでは見ていたのですが、不思議です。水が来たり引いたり・・・あの遥か彼方向こうで誰かが海をかき混ぜてるのでしょうか?」
真面目に聞くのね・・・純粋と言うか何と言うか・・・
「きゃっ!!」
急に大きめの波がやってきて零羅ちゃんは尻餅ついてしまった。
「濡れてしまいましたぁ・・・」
「ははは、後で着替えるッスか」
「そうですね。それにしても海と言うのは何だか落ち着きますね」
「ッスねぇ・・・」
「あ、これは・・・桜蘭さん、これ見てください!」
「ん?」
零羅ちゃんのテンションがまた上がった。
「本で読みました、これナマコですよね!」
「わーっ!!キュビエ器官出てるぅっ!!」
「わ、ネバネバ・・・けど面白いですね、押したら出てくるんですよ、漫画で見たよりも可愛いです」
零羅ちゃんこの見た目で結構好奇心旺盛なんだよなぁ、ナマコは触るし、あの白い糸も面白いで済ませるし。
「ありがとうございますナマコさん、はい」
零羅ちゃんはナマコを優しく海に返した。やれやれ、それにしてもサムさん遅いなぁ。少しあのビーチベッドで横になろ。
俺は適当に使って良いパラソルの下のビーチベッドに寝転がった。あ〜、海風気持ちぃぃ・・・
「あれ、睡蓮ここにいたんスね」
睡蓮が俺と同じようにベッドに寝転がっていた。
「あぁ、少し疲れてね、それにしてもみんな元気だな」
「ッスよね、零羅ちゃんに至ってはナマコ素手で触ってましたよ」
「す、凄いな・・・麗沢君はそのナマコを解説してたら、ナマコ踏んづけてすっ転んで全身がネバネバになってたよ」
あらら、何してんだよ。
「はぁぁ、それにしてもずっとこんな感じで気楽に出来たら良いんスけどねぇ」
「同感だ」
「我も〜」
俺たちはごろーんと寝転がった。
ん?何だ今の声・・・
「いやぁ、今日は絶好のお昼寝日和だねぇ〜」
もう片方の隣に誰かいたのか。
「そうなんスね、そんな時に来れて良かったッス」
「だね〜、あ〜、仕事戻るのやだな〜。今日はもう一日これで我の仕事終われば良いのになぁ〜」
仕事サボってるのかこの人、って我が一人称かよ。まるで前に戦ったワン・・・
んん?
俺は寝返りをうって横を向いた、寝転がってるのは警察の格好をした男だ。水色のくるんくるんな髪の毛が特徴的だ、警察で水色の髪か・・・可能性があるのは一人だけだ。
「はぁぁぁ・・・ほんとなーんにもやる気起きないなぁ。我なんて陛下から異世界の勇者たちたおせ〜なんて言われてるけどさ、ワンちゃんもポンちゃんもいなくなっちゃってやる気なんか起きる訳ないよ〜。ね〜どうしたらいいと思う〜?」
「あ、諦めたら?」
「そうしよっかなぁ〜。もーこんな事ならリーダー引き受けるんじゃなかったよ〜」
間違いない、この隣でぐでーっと寝転がってるのはニャンタだ、思った以上にダメ人間っぽい。
「けどさー、引き受けちゃったからにはもうさ、やるしかないんだよね〜。ってあれ?君たちアレじゃん、噂をすればなんとやらだね。我ニャンタ、ニャンタ・フゥね。水の魔法使うよ〜、よろしくね〜」
「よ、よろしくッス。桜蘭ッス」
「睡蓮だ」
「よろしく〜。見たところサム先輩はいないね〜、良かったぁ。サボってるのバレるかと思ってちょっとだけ焦ったね〜」
うん、焦ってる人の声じゃない。どっちだ?計画性の塊の存在か、無計画野郎か。
「うーん・・・ねぇ、我本当もうやる気ないからさー、出来る限りガチりたくないんだよ。けど形だけはリーダーやらないと後で酷い目に遭うからね。あ、そうだ、適当に我に一発攻撃当てれば勝ちでいいよ?それで良い〜?」
本当こんなんで良いのかよ・・・




