リメイク第二章 力を持つは覚悟を持つ事也
「さ、かかっておいでよ」
三上はちょいちょいと零羅ちゃんを煽る。
「なら、つぎはあなたを・・・殺しますね」
「殺すね・・・レオナルド先に殺しちゃった事根に持ってる?」
三上は流血光刃を抜き、構えた。あいつ、まさか攻撃を受け流す気か?
「待て三上っ!零羅ちゃんの攻撃はっ!!」
『ガキィィィーンッッッ!!!』
「あらら」
零羅ちゃんの放つ拳に三上は剣を合わせた。けど、三上の手があらぬ方向に捻じ曲がって剣が吹っ飛ばされ遠くに刺さった。
「三上!零羅ちゃんの攻撃は何つーか、何でもかんでも吹っ飛ばすんス!!攻撃を受け流すのは駄目だ!!」
何で俺敵の大将にアドバイスしてんだよ。
「それだよ、それを確かめたかったんだ・・・そして理解したよ。この攻撃の特徴を」
三上、わざと攻撃を合わせたのか。あの野郎、ハンディキャップを背負って戦う気か?零羅ちゃん相手に素手でやり合うつもりだ。
「その息遣い、そして攻撃を叩き込むタイミング・・・秘密はそれだね?不思議な呼吸だ。吸い続けてるのか、吐き続けてるのか僕にも分からない。それから攻撃の瞬間、心臓の音が跳ね上がって、全身の血液と筋肉がマックスに活動してた、それが君の攻撃力だ。
そしてもう一つ、君の攻撃には型がある。これも特殊な型だ。普通殴れば反動も相応に自分に返る、なのに君はその反動も僕に乗せてきた。抵抗や反発をまるで無視して防御を貫通する、それが君の破壊力だ」
たった一撃でそんなとこまで理解したのかよ・・・三上の強さは腕っぷしよりもあの洞察力だな、手を見せれば見せるほどあいつに即座に対策を練られる・・・
『バキゴキッ!!』
三上は折れた手を伸ばして元に戻した。そして今度はゆっくりと柔道の選手みたいな構えを取る。
「様子見かい?今の間でも攻撃出来たでしょ?」
「戦いならわたしもすきです。だからまってたんですよ」
「成る程、僕もそうだよ。戦いは好きだ、何の理由も要らない。ただひたすらに自身の力を示し合う・・・さ、準備運動はこれくらいにして、始めようか!!」
同時に踏み出した、その次の瞬間に見えたのはぶつかり合う2人だ、そこから更に2人の連打が続きあちこちで巻き起こる土煙で一気に何も見えなくなった。
「けほっ!何よあの戦い方!!これが人間同士の戦いっ!?」
エルメスは最早あの2人が今何処でどういう状況になっているのか見えてないみたいだ、キョロキョロしてる。
「俺も、こんな漫画みたいな戦い初めて見たッスよ・・・」
「まるでヤム○ャ、と言うか戦闘力5のおっさんな気分でござる。あれじゃまるでサイ○人の戦いでござるよ。ほあっ!?」
麗沢のすぐ隣で攻撃が炸裂した、いつのまにか2人が麗沢の横でぶつかりあっていたんだ。早すぎる・・・
「あははっ!!」
「・・・・・」
そして一瞬見えたのは三上の笑いだ。血みどろでありながら無邪気な笑顔で零羅ちゃんの拳とぶつかりあっていた。
今の、むしろ三上が押され気味だ・・・零羅ちゃんの攻撃の方が三上より上だ。互いにダメージは負ってたけど、そのダメージは三上が遥かに上だった。
「あはは・・・久しぶりに楽しいよ。前に言ったよね、自分の平和のあり方についてさ、これが君の答えだね」
「平和・・・」
「そ、やっと見えたよ。平和とは己の心への安心だ、最初に会った時君は不安の塊だった。それが今解き放たれて凄く安らいでいる、それでいいんだよ?何も怖がらなくて良いんだ、壊したいなら壊せば良い。君はそれを抑えようとするからその反動が大きくなって誰も君を止められなくなっちゃうんだ。
人間はどうしても逆らえない性を持ってる、止めたいと思うけど止められない事なんていっぱいあるよ。だから君には彼らが付いてるんじゃないか、もっと頼ろ?この人たちがいれば、その君の性を受け止められるんだから」
「わたしを・・・うけとめる?」
「そう、僕を倒したいのなら君のその力は要だ。けど、君一人が強くても僕には勝てないよ?君の攻撃は殺意だけしかない、そんな一点な攻撃じゃ僕に止めはさせない・・・僕を本当に倒したいなら、ここの全員が今の君を抑えられるくらいに成長しないとね。だから僕は君にこのゲームに参加してもらってるんだよ」
三上・・・そう言えば最初に零羅ちゃんに会った時、零羅ちゃんが最強だとか言ってた・・・零羅ちゃんの秘密はサムさんしか知らなかった筈なのに、こいつはそれを既に見抜いてたのか。そしてそれを知った上でこのゲームへ参加させた。
「はぁ、今日は予想以上の事が起きて楽しかったな。けど、そろそろ幕引きにしないとね、僕も予定があるんだ。次会う時はその力を自分の力で掌握出来るようになろっか。それが僕から零羅さん、そしてここのみんなへの宿題だよ」
『パシッ!!』
三上は剣を風の力か何かで自分の手元へ飛ばした。そして剣を収め、抜刀術のような構えを取る。
「まくひきですか・・・いやですよ、まだわたしは」
「わがままは良くないな、これは君のペナルティでもあるんだよ?さてと、最後に僕の本気一瞬だけ見せてあげる。よく見ておいてね、これが僕の強さだ・・・」
『ドンッ!!』
何だ・・・何も見えなかった。俺が目にしたのは構えてた時とは別の場所で剣を収める三上の姿、そしてゆっくりと倒れていく零羅ちゃんだ。それを見たエルメスが倒れきる前に零羅ちゃんを支えに走った。
「ミカミ!!あんたレイラちゃんに何をっ!!」
「そんな怖い顔しなくていいよエルメスさん、今は少し気絶させただけだからさ・・・南ウィート地区総合病院がここからが一番近いね、医者の手配とかはしておくからとりあえずはそこに連れて行ってあげて?彼女、戦いの最中全く怪我を治してなかった、今は既に治り始めたけど、念の為に診てもらった方が良い
さてと・・・ゲームはまだまだ続くよ、これで6箇所だ。残りの地区も強い人ばかりだから、気を引き締めて頑張ろっか。じゃ、またね」
三上は俺たちに背を向けて歩き出した。
改めてこいつのバケモノっぷりを感じた・・・最後のあれ、何だよあれは。多分あれは誰もが見えなかった筈だ。三上が動く瞬間、あいつに何か呑み込まれる感じがした。
「あ、そうそう・・・一つ挨拶し忘れてたね」
げ、三上さっさと行けよ・・・また声聞こえたから一瞬吐きそうになったわ。
「君とはまだ初めましてだったね、確か名前は天上 睡蓮さん・・・よろしく」
「よろしくないな・・・桜蘭たちから話は聞いていたが、お前のような奴は初めて見たよ」
「あはは、照れるね・・・ま、君もこのゲームを楽しんでってね・・・」
三上はそう言うと今度こそ何処かへいなくなった。
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南ウィート地区総合病院。
「ん、ここは・・・?」
零羅ちゃんが目を覚ました。良かった、この感じはいつものだ。
「南ウィート地区総合病院だ、一応聞くが・・・レイラちゃん、何をしたのか覚えてるか?」
サムさんが優しく質問した。
「はい・・・もう一人のわたくし・・・自分の血を見るとどうしても止められなくなるのです。壊して、壊して・・・そうしなければ身体が疼いて仕方がなくなって・・・みなさん、ごめんなさい」
零羅ちゃんは項垂れるようにみんなに頭を下げた。
「みんな別に怒ってないッスよ。ただ、言っては欲しかったッスね。サムさんもッス」
「済まない、彼女の意思を尊重したつもりだったんだが・・・逆効果だったらしい。旅立つときに言っておくべきだった」
サムさんも同様に謝罪した。
「それにしてもレイラちゃん、あれは一体何なのよ。昔から?」
そしてエルメスが零羅ちゃんの頭を撫でて詳しく話を聞こうとしていた。
「物心ついた頃からです、わたくしは何故か自分の血を見るとあのどうしようもない破壊衝動が襲って見境なくあたりを壊してしまうのです。だからわたくしは学校に行くことも出来ず自身の屋敷で外を知る事なく生活していたのです。多分みなさま思われたでしょう、わたくしは少し世間とズレているって、その原因がアレなのです」
やっと理解出来たよ、なんか何処かズレてるなって思ってた。その秘密をやっと知れた。
「今はどうだ?落ち着いてるか?」
今度は睡蓮が零羅ちゃんに尋ねた。
「今は大丈夫です、怪我も完治していますから」
「そうか良かった。だが、無理はするな。そもそも俺たちは仲間だろ?三上の奴の言う事と被って癪に触るが、間違った事は言ってない。もう少し俺たちを頼れ、少なくとも俺は後から仲間になって何も知らないんだ。だから俺はお前に頼る事もする。お互い支え合わなきゃ駄目だ」
「スイレンたまにはいい事言うじゃないのよ」
エルメスがポンと睡蓮の肩を叩いて笑って見せた。けど、
「そう、ですね・・・ですが思いました。わたくしこの旅を続けるべきではありません、最初はあのボーダーの反逆者たちさんの基地で待つつもりでした。
わたくしが旅に同行した理由はただ単に行かないと駄目と思ったからです。他には何もありません、一緒に行かないと可哀想。ただそう思ったから付いてきた・・・そんなわたくしではこの旅を行く資格はありません」
それは確かに、そもそも旅を始める前にそう思った。一緒に連れて行くのは危険じゃないかって・・・けどさ。
「駄目だから」
そこへキッパリと言い切ったのはグレイシアさんだった。
「え?」
「あなたはもう理解してる、この旅の意味。行かなきゃ駄目だから。それに、インダストリベルトで君は私に言った。自分に勝ちたいと、それはアレの事でしょ?なのに、ここでもう諦める?」
グレイシアさんは淡々と零羅ちゃんに言い放つ。
「一つだけ、覚醒の事言ってなかった・・・覚醒のきっかけは自身に勝つ事、それが覚醒に繋がるから。君はこの旅の仲間の中で最も強い。けど、そんな君が仲間を捨てて一人になって・・・君しかいないから、みんなを強く出来るのは」
「あなたはわたくし何を期待してるんですかっ!!あなたは強くて!覚悟が出来てます!!わたくしにはそれが出来ていないのです!!あなたに今のわたくしが理解出来ますかっ!?」
零羅ちゃんが初めて怒った。涙目でグレイシアさんを睨んでる・・・
「分かるから・・・」
「え・・・」
グレイシアさんは表情を一切変えずに言い切った。
「あ・・・そうか」
そしてエルメスが納得したように頷く。
「レイラちゃん、グレイシアが言いたいのはあなただけが特別なんかじゃないって事よ」
「エルメスさん・・・」
「グレイシアは昔、あの魔法の扱い方が上手くなかったのよ。そしてある日、グレイシアはその魔法のせいで両親を殺してる・・・」
「っ!!!?」
エルメスからとんでもない事を聞かされた。
「そのせいでグレイシアは一人になっちゃったの、殺したショックで喋れなくなって、そして誰も魔法の扱い方を教えてくれない。そしてあなたの癖と同じ、グレイシアも同じ様な事になってしまった」
「そう、私は自分意思に反して近づく人全てを攻撃してしまうようになってしまった。やがて私は『ダスト』って名前で呼ばれるようになった。私は何もかもが憎く思えた。街も、人も、自分自身も・・・けど、その時に私を助けてくれたのがレイだったから」
「三上さんが・・・」
初めて聞いた、これが三上とグレイシアさんの出会いのきっかけか・・・
「レイラ、これもレイの受け売りになるかも知れないけど聞いておいて。レイが私に言った事、『人は常に誰かを傷つけて生きてる。傷つけずに生きる事は出来ない』その言葉のお陰で私は今ここでこうして生きられてるから。
そして決めた事がある、私はそれまで誰かを傷つける事を恐れてた。けど、傷つけても良いって思うようにした。それを恐れてたら何処にも進めない、例え今は傷つける事になっても、私はいつかその人に恩を返す。どんな形でも良い、時には返せない時もあるかもしれない。けど、それが人生だから、私は私の為に周りを傷つけて、そして周りは周りの為に私を傷つける。それを重ねる事がいつしかレイを超える力になる。レイラは・・・どうしたい?」
「わたくしは・・・分かりません、どうすれば良いのか」
零羅ちゃんは服の裾をギュッと握りしめて下を向いてる。
「逃げてる・・・」
「え?」
俺はそんな零羅ちゃんを見て呟いていた。
「零羅ちゃん、今真剣に考えてた?とてもそうは見えなかったッスよ?なんか、考えてるフリをしてる風にしか・・・」
「そ、そんな事はっ!!」
待て待て、俺今なんて事言ってんだよ。今言うべきじゃないだろ・・・けど、あの慌て方。図星みたいだった・・・
「サクラ、それで合ってるから。レイラはまだ逃げ道を探してる。仕方がないとは思う、本当ならこんな重荷を背負わせたくはない。けど、背負わないといけないから」
「ならどうすれば、どうすれば良いのですか!?わたくしは誰も傷つけたくなんかありません!!わたくしはただ・・・」
言葉が詰まった、多分零羅ちゃん自身まだ分かってないんだ。自分が何をしたいのか、薄っすらと見えてもそれは誰かを傷つける自分の望まない場所だ。だからその先を見ようとせずに逃げてるんだ。
「ほら、その先の言葉が出てこないのって、それこそ逃げ道を見てるからじゃないッスか?てか零羅ちゃん漫画は読むだろ?ドラマとかも見てないんスか?結構有名なセリフッスけど、人と言う字は人と人が支え合って出来てるって知らないッスか?零羅ちゃんが一人で背負い込むのは勝手だけどさ、俺たちはそれを見て見ぬふりをする程落ちこぼれちゃいないッス。
もう少しみんなを頼って欲しいッスよ、今まで一人で頑張って来たんだろうけど、人生一人じゃ生きられない。もし零羅ちゃんがちゃんと成長を願うなら、当たり前のように俺たちを巻き込めよな。だろ?麗沢」
「もちのろん!!即売会の時はやはり先輩にコスプレさせると相乗効果で拙者の本が飛ぶように!!」
「はいはい、そんな話零羅ちゃん分からんでしょうが」
俺は麗沢の口を閉じた、何でよりによってそれを引き合いに出すんだよ。
「ま、兎も角ッスけど、アレは秘密にしたいとは思っちゃうかもしれないけど、見ちまったものは仕方ないッスよ、俺は是が非でも零羅ちゃんを助けてあげたいって思った、そしてみんなもそう思った筈ッスよ」
「そうね、私も医療従事者の端くれよ。あなたのそれが二重人格なのか分からないけど、それを克服するためなら協力するわ」
シィズさんがポンと零羅ちゃんの肩を叩く。
「全く、なに良い感じにあんたが纏めてんのよサクラ。言っておくけどね、私はあんたが何も言わなくても私はレイラちゃんを助けるわよ。そして、今度こそレイラちゃんをあんな目に遭わせたりしないわ」
エルメスがわしわしと零羅ちゃんの頭をまた撫でる。
「零羅ちゃん、この世の中誰しもが特異なものを持ってるものだ、俺にもそれがあるから、零羅ちゃんのその今の気持ちは分からなくもない。三上はもしかしたら俺たちにそれを乗り越えさせる為にこのゲームを仕向けてるのかもな」
睡蓮の特異な事って何だろ・・・変な癖とかあるのかな。けど、睡蓮の言う通りかも。あの感じ、三上は少なくとも俺たちを覚醒に導きたいってのは読み取れた。それがただ単にあいつの娯楽の為なのか何なのかは分からないけどな。
「皆の言う通りだな・・・私からもお願いだ。レイラちゃん、ミカミを倒すには君の力はやはり絶対にいる。この先再び怪我もするかもしれない、だが、その度に我々が必ず君を止めて見せる、そしていつか君のそれを克服しよう」
サムさんが零羅ちゃんに頭を下げた。
「け、けどそれじゃみなさんが・・・」
「零羅?俺たちはなんて言ったッスか?巻き込めって言ったッスよ」
「・・・ど、どう言えば・・・謝ればいいのか、感謝を言えばいいのか、わたくしは・・・」
「ただ今したい事をすれば良いから」
グレイシアさんが落ち着いた声で言い聞かせた。
「・・・あの・・・なら、たすけて、下さい。おねがいです あの、わたくしをみすて ないで・・・」
零羅ちゃんの声が上ずって上手く言えないみたいだ。けど十分だろ、年相応だ。今までが大人び過ぎてたんだ、まだ泣きたい時に泣けば良い歳の筈なんだよ。
「誰も見捨てたりしないから・・・ほら、今は思いっきり泣いて。今まで溜め込んでた分、全部ここで捨てていきなさい」
グレイシアさんは零羅ちゃんをゆっくりと抱きしめた。
「んぐ・・・」
零羅ちゃんもまるで母親に抱きつくようにしがみついた。そして零羅ちゃんは思い切り泣いた。今まで本当どれだけ溜め込んでたのか分からない。




