リメイク第二章 共に旅立つは亡国の王女
「さ、行くッスか!」
俺たちは気持ちよく出発しようとした、その時だった。
「まぁぁちぃぃなぁぁさぁぁいぃぃぃっ!!!」
げっ・・・なんか嫌な予感、この声はエルメスだ。何しに来たんだよ・・・
「な、エルメス!?何だそれは!?」
「私も行くわっ!!連れて行きなさいよっ!!」
エルメスは荷物を抱えて走って来た・・・
「え、何で?」
俺は率直に聞いてみた。どう言う心境の変化だ?
「どーにも、あんたを見てたらなんて言うか、放っておいたら駄目だって思ったのよ。それに、仮にあんたが私たちと同じ一族なのだとしたら、尚更そのへなちょこを見過ごせないわ、だから私も付いていくのよ」
余計なお世話・・・って言うのは流石に失礼かなぁ。
「サクラ君、ちょっと良い?」
アレックスさんがコソコソと話しかけて来た。
「面倒くさいかも知れないけど、エルメスは言い出したら聞かないんだ。それに、あぁ言う風に言ってるけど普通に君たちが心配なんだ、昔からお節介焼きな性格だからね。済まないが、頼んでも良いかな?」
「俺はまぁ、良いッスけど・・・これ以上乗れるかなぁ?サムさん・・・」
仲間が増えるのはいいけど、8人か・・・
「まぁ、八人までなら大丈夫だろう。少し大所帯な気もするが・・・まぁ、仕方ないか」
「決まりね、ほら。さっさと行くわよ」
エルメスはそそくさと荷物を車に詰め込んで乗り込んだ。
「やれやれッスね・・・」
「ま、楽しい人が増えるのはいい事か・・・桜蘭、もし何かあいつに言われたら言ってくれ、俺がガツンと言ってやるよ」
睡蓮が優しく俺の方を叩いた、マジでいい人だなぁ・・・この性格けっこうモテない?仮に俺が女だった惚れてますわ。
さて、やっと出発だ。外を眺めると屋敷の中の窓にエリザベートさんが見えた。そして俺の方を見るのゆっくりと手を振ってくれた。はぁ、安らぐなぁ・・・
で、出発したのは良いけど・・・
「で?レオナルドのいるのはどこらへんなのよ?」
「情報では地区境の町にいると聞いている、これはもしかしたら数時間で着くな・・・今のうちにレオナルドについて詳しく話しておこうか」
サムさんは次の地区のリーダーについて話し始める。
「あのさ、その前に良いッスか?エルメスは何で俺の頭を肘おきにしてんの?」
エルメスは後部座席から俺の頭にもたれかかるように身を乗り出してる。
「ん?なんか丁度良いとこにあったから、嫌だった?」
嫌って言うか・・・普通他人相手にやらないでしょ。この人もある意味で浮世離れしてると言うか・・・
「別に気にしてはいないんスけどね?」
「なら良いじゃないのよ」
「エルメス、世間一般の常識で考えて・・・それはアレックスの頭でもレイの頭でもないから」
そのエルメスに注意したのはまさかのグレイシアさんだ。と言うか、あんたが常識を語るんかい。あ、でも意外と社交性はそれなりにあるわ・・・素の性格がアレなだけで。
「ん、確かにいつもに比べたら違和感あるわ・・・ごめん、いつもこの体勢でよく車に乗ってたからついね。ミカミの奴とたまに車一緒に乗ってたんだけど、あいつの頭乗せ心地が良いのよねぇ」
確かにサラッとした男と言うよりは女性みたいな髪質してるなとは思ってたけど・・・あいつの頭に肘ねぇ、想像できねーわ。
「サクラ、エルメスは王室育ちのせいかちょっとズレてるとこあるから・・・」
あー、なるほど。それで変に浮世離れしてるのか。
「ちょっ失礼ね!いや、たまに思うこともあるけど・・・それよりグレイシアこそ人の事言えないでしょ!話す事はミカミの事ばっかりだし、それから高校の時、男たちから告白されても認識皆無だしさ!」
「告白? 何を?」
グレイシアさんは頭から???ってマークが出てる。
「ほらね?これどう思うよ?グレイシアの奴、昔からスタイルも顔も結構良かったから学校でよく告白されてたのよ。なのにグレイシアときたら、『付き合って下さい』に対して『何処に?』だよ?」
チラッとは聞いてたけど、確かにグレイシアさんとエルメス、凸凹コンビってあだ名は間違ってないな。互いに天然だこれ。
「それより話戻して良いかな、レオナルドについてなんだが・・・」
話は戻った。
「あぁ、あいつね。あいつの事ならサムより私の方が詳しいわ、同級生だしね」
けど、そのレオナルドについて詳しく知ってるのはエルメスだった。
「レオナルド アキレア、成績はそこそこ優秀だったわ。ただ、敵として考えるのであればあいつはかなりの策士と言うより、ずる賢いわね。昔球技大会であいつはルール無視ギリギリな事やって勝ち進むって事やってたからね。それで先生に叱られてたけど、あいつ口も達者なのよ。その結果お咎め無しでなんと優勝よ。その話術とずる賢こさがあいつの武器ってとこね。
あ、あと一番厄介なのがあったわ。あいつ、下は幼子から上は老婆までとことん女好きなのよ。女性と見ればすぐに手を出そうとするわ。だからあいつ相手に絶対にレイラちゃんを出しちゃダメよ?」
エルメスは隣に座ってた零羅ちゃんの頭を撫でた。
「それは私も同感だ、レオナルドならば恐らく真っ先にレイラちゃんを人質に取ると言った行動に出るだろう・・・それだけは何としても阻止しなければ・・・」
サムさんも同意見らしい、凄い力強く言い放った。そんなにズルい奴なのか・・・友達になりたくないな。
そんな事を思って俺は外を眺めた。ひたすらに何もない畑が続く。人っ子1人もいやしな・・・い?いや、アレは人影か?10人くらいはいる。
それにあの服って、確かポンサンも同じのを・・・
「あのサムさん。ここってまだ北ウィート地区ッスよね?」
「そうだけど?どうかしたかい?」
「いや、確認なんスよ。一応ここは解放されてるから軍はここで戦闘してはいけないんだよね?」
「そう、ミカミ国王のルールに従うのであればね」
「いや、2時くらいの方向に王国軍が見えたもんスから」
「・・・ん?あれはっ!!」
『レオナルドの部隊!!』
サムさんとエルメスが口を揃えて叫んだ。
「待ってよ、情報だったらレオナルドはまだこの先」
『ジジッ・・・よっ!勇者御一行か?聞こえてたら返事してくれー』
無線に突然通信が入る。なんかキザったらしい声、これがレオナルドか?
「レオナルドあんた!!ここで何してんのよっ!!」
エルメスが無線機を取って声を上げる。
『ん?あら?その声はエルメスちゃんじゃん、相変わらず忙しなくて可愛いな。なに、暇だったもんだからちょっと迎えに来てみたって訳よ』
「レオナルドそれ、ルール違反だから・・・レイに怒られる」
そこにいるって事はそうだよな、解放した地区での戦闘は禁止だ。
『これはグレイシアちゃん、あんたも相変わらず綺麗な声してるわ。なーに、陛下の事なら気にする必要はねーよ。だってバレなきゃ問題ないんだからさ。ここにあいつはいねーのよ。それに、こっちもあんたらに勝たなきゃ駄目なんね、ちょっとズルさせてもらうぜ?』
「お前、恥とかは無いんスか?」
俺は少しムカついてエルメスの横から無線機に向かって言い放った。
『それでお前がサクラか。恥だって?そりゃ恥ずかしいさ、律儀にルール守ってそして負けましたなんて、俺はそんなのがすげー恥ずかしいんだよな。
終わりよければ全て良し、それが俺様の座右の銘だ。結果さえ上手く運べば、俺はどんな手を使ってでも俺が納得出来る答えを導き出すのさ』
この男、本当に羞恥心ってのが無いらしい、ある意味尊敬するわ。
「って事は、ここでやるしかないスね?」
『そう言う事、因みに言っておくとあんたらが今見てるそいつらの中に俺はいる。あえて目立たせてるからな、けど、後ろ見てみな?いや、全方位だ。もう既に囲まれてるぜ?』
「っ!!先輩っ!!あちこちから雑兵共がゾロゾロとぉっ!!」
麗沢がわちゃわちゃあちこちに指差してる。この数、どれだけいるんだ?突然待っていたかのように、前後左右あらゆる方向から敵の軍が現れて俺たちを囲んだ。
俺たちは止まらざるを得なかった。
「ちっ・・・完全に囲まれてるわね、サム。私たち二人では無理?」
シィズさんがサムに小声で話しかける。
「無理だ、私はあくまでも警察の人間。立場は追われても志まで捨てる事は出来ない。故に誰も殺すつもりはない・・・ここは大きな賭けになるが、全員でやるぞ。誰一人怪我をさせるな・・・敵味方全てな、全員気絶させるんだ。行けるか?」
俺は電撃を使えば出血もさせずに気絶は出来るだろうけど、怪我させるなは難しく無いか?
「流石にこの人数は怪我人無しは不可能だから」
グレイシアさんがサムさんの無謀について突っ込んだ。
「そうだな・・・確かにそれは不可能だ。しかし、こちら側の怪我人無しは行けるか?特にレイラちゃんだ・・・」
「っ!!! は、 はぃ・・・」
何だ?どう言う事だ?確かに魔法に関しては俺より上手いとかはあるけど、零羅ちゃんはそれ以前に戦えるような子じゃ無い。三上のせいで無理矢理参加させられてるんだ、守らなきゃいけないのは分かるけど・・・そんな頑なに怪我させちゃいけない理由って何だ?それに零羅ちゃんもなんでそんなよそよそしいんだ?
「そんなの当たり前じゃないのよ、レイラちゃんは私が守るわ」
「・・・ならば零羅ちゃんの護衛はあんたと俺の2人でやるか、そうした方が確実だろ?」
エルメスが零羅ちゃんの護衛に付くと言った直後、睡蓮が反発するように割って入った。
「何よ、守るだけなら私一人で十分よ」
「守る戦いの難しさをあんたは知らないだろ・・・」
「言うじゃ無いのよスイレンさんよ、いいわ、私一人で十分ってのを証明させてあげる」
睡蓮とエルメス、なんかバチってる?
「よし、レイラちゃんは二人に任せたわ。後もう敵は待ってくれそうに無いわよ。三、二、一のタイミングで一気に飛び出すわよ?いいわね?」
シィズさん、救急隊の割には戦い慣れてると言うか、指示を出し慣れてるって感じするな。
「三」
「二」
「一」
『今だ!!』
俺たちはドアを全開にしてそれぞれの方向へ飛び出した。




