リメイク第二章 予言は終わりを告げる一つの書
「ほら、行くわよ」
エルメスは一気に俺に切り掛かる。大丈夫だ、これならまだ俺でも見切れる。ギリギリまで引きつけてからゼロ距離射撃だ。
「やぁぁっ!!」
「ここだ!!」
振り下ろすタイミングで俺は少し横に避けた。そして一気に銃を引き抜いて電撃をお見舞いした。
「へ?」
「確か、あんたはあんまり魔法の威力が高く無いんだって?この私の防御を突破できなきゃせっかくの一本も無しになるわよ」
エルメスは俺の銃撃を素手で受け止めていた。嘘、ポンサンとかでもこの程度は避ける行動をしていた。手加減したとは言え、まともに喰らえばヤケドはするくらいだぞ?
「サクラ君、エルメス相手に一本を取りたいならもう少し踏み込まなければね。こう見えても純粋なアダムスの血統だよ?」
アダムスの血統って言われても・・・それって何?
「あ、そうかっ!!サクラ君!!今のが喰らわなかったのは彼女の魔法のせいよ!!アダムスも魔法族の一人!そして私と同じナナの魔法を使うの」
シィズさんがアドバイスをくれた。
「中でも私たちの一族は回復に加えて身体能力の強化も出来るのよ。だからあなたのチンケな攻撃なんて私には通用しないのよ。ほら、ぼけっとしてたら真っ二つよっ!!」
エルメスの手元がほんのり明るくなった。その次の瞬間、彼女の持つ薙刀の速度も威力も跳ね上がった。
「ひえっ!!」
「ちっ、あなたのその避ける速さは認めてあげるわ。けど、それでミカミに勝てる?この程度でさ!」
むかっ・・・俺だって結構頑張ってんだよ、何もこれも三上に勝つ為に俺は今頑張ってんのに。
「何よその顔・・・大体ね、私はあなたみたいにナヨナヨしてる奴は嫌いなのよ。もっと背筋伸ばして堂々としなさいよね」
「エルメス、言い過ぎだぞ」
アレックス前国王はエルメスに少し注意している。
「分かってるわよ。けどね、なんかあんたを見てると、こうイラッとするのよ」
ぐさっ・・・そうか、俺嫌われてるのか。あるよね、理由なくても馬が合わないってさ。けどいざ言われるとなんかショック。
「・・・おい、そこは聞き捨てならないぞお前。前国王の娘だか知らないが、よく分からないからイラつく。それを当の本人の前で言うか?俺から言わせればお前はもう少し口の聞き方を覚えろ」
その中、睡蓮が割って入ってくれた。
「す、睡蓮さん別にそこに怒らなくても・・・」
「いや、俺は最低限の節度を守らない奴は許せなくてな、
それにお前のその優しさ、俺はそれに救われてる。あいつの言うそのナヨナヨにな、それがお前の良さだろ?だから人の生き方にケチ付けるあいつに俺は腹が立ったんだ」
「な、なによ。次はあなたがやるの?」
睡蓮、これマジでキレかけてる。エルメスは多分本気で言ってる訳じゃなかった。
「睡蓮さん、大丈夫ッスよ。要はちゃんと俺を示せば良いんスよね。俺の覚悟を」
このまま行けばもしかしたら怪我人の出る大喧嘩になるかもしれない。それを収めるには俺がしっかりとしなきゃ。
睡蓮もまだここに来て色々と追い込まれてる状況にある。そもそもこの世界で勝手に、世界の命運を懸けたゲームに参加させられてる時点で相当キツイんだ。
それを思って睡蓮は今のエルメスの言葉に腹が立ったんだと思う。だから俺はエルメスにこの戦いの覚悟を見せなきゃいけない、それがエルメスから一本を取る方法。
「ふん!言葉ではどうとでも言えるのよ」
「ッスよね、だから行動で示すッス。エルメス・・・一瞬で決めてやる」
「っ!? 言うじゃ無いのよ、このウジ虫のくせに!!いいわっ!!私の全力受けてみなさい!!」
エルメスは薙刀を構え、力を込める。徐々に身体が明るく染まる。
そして俺も構えた。
「覚悟しなさい!!やぁぁぁぁぁっ!!」
エルメスは大きく振りかぶり上段から一気に振り下ろした。
「え、ちょっ!!馬鹿!!!」
「ぐっっっ!!!!」
そして俺はエルメスの攻撃を素手で受け止めた。この威力だ、刃がグッサリと手に食い込んだ。
「仕留めそびれたッスね・・・エルメス」
「この、なんで避けないのよこの馬鹿っ!!」
「あんた言ったッスよ、受けてみろって。文字通り受けてやったんスから。で、これがエルメスの全力なんスよね?俺を真っ二つに出来なかった、この程度があんたの覚悟だ!」
「あ、あんたおかしいわよっ!?」
「俺は!もっとおかしい奴に会っちまったから!こうまでする覚悟をする羽目になったんだ!」
「っ・・・・・・」
俺はエルメスの言葉を遮って少し声を荒げた。この痛み、あいつはなんで平然としてられる。あいつの覚悟はまだ俺の上を行くのか。
「エルメス・・・サクラ君の西ボーダーでの活躍はお前ももう知ってるだろ?彼は弱い人間なんかじゃ無い。彼らはあの日の彼と同じ目をしている」
アレックス前国王はエルメスをなだめた。
「くっ!!分かったわよ!!全く、あんたには一本取られたわ!私の負け!謝るわ!!ほら、手を貸しなさい!」
エルメスは無理矢理俺の手を取ると、回復の魔法で一瞬で俺の怪我を治した。
「す、凄い・・・これがアダムスの魔法、同じナナの血統でも凄い差」
シィズさんが治癒速度を見て感心していた。
「違うわシィズ、魔法の力は精神の力。これも私なりの覚悟よ、私もミカミに対する覚悟はしてるんだから・・・ほら、早く上がりなさい。食事と寝るところの用意はしてるわ」
エルメスはさっさと屋敷の中へと入ってしまった。
「ほんと済まないね。エルメスは少し不器用でね、本当は君たちの事が心配でできる事なら戦わせたくないと思ってる優しい子なんだ。けど、世話焼きな性格も相まってあー言う感じになってるんだ」
「良いッスよ別に、今回のこれで少しは分かり合えたんじゃないッスか?」
「だったら良いな。ほら、早く入りなさい」
俺たちは屋敷の中へと案内された。そして応接室のような所へ入った。
「さてと、改めてまして。私がアレックス アダムス。このアダムス連合王国の先代国王だ。よろしく、異世界の勇者たち」
「どもッス」
「キリッ」
「こちらこそ」
「宜しく」
俺たちはそれぞれ返事を返した。
「話の続きだが、私がミカミ君から受けた指示はここで休息を与えて送り出せってのが彼の命令なんだ」
「え、って事はミカミ国王は、あなたが彼を裏切っている事を前提にあなたにリーダーの役割を与えたと言うのですか?」
「その通りだよサム君。と言うかは、元より私は彼に国を奪われた存在だ。彼は私を最初から味方にするつもりは無いんだよ。そう、突き詰めるのであればミカミ君はきっと二十年前のあの時から私をずっと睨んでいた。あの時からずっと私は彼を裏切り続けているのかもね」
「どう言う意味ッスか?」
俺はアレックスさんの言った意味がよく分からなかった。なんで20年前から裏切った事になるんだ?
「そうだね、その事についても話しておかなくては。嘘はもうごめんだ。二十年前、彼が戦争を終わらせたのは皆知っているね?」
こくり、こくこく。みんなそれぞれ頷いた。
「そのきっかけになったのが一つの予言の書だ。ミカミ君の現れる一週間前に突如発見された。そこにはこう書かれていたんだ。
『異世界 ニホン より ゼロ 現る それは 「バケモノ」で 世界を 亡くすもの 後 異世界 ニホン より レイ 現る それは あらゆる魔法で 世界を 救う 勇者 そして 全てを始める者』
この文章の意味は全く分からなかった。ニホンという言葉も知らなかったからね。けど、それをさらに突き詰めるとこれは予言であり、世界救済の物語となるとね。けど、誰にも知られていない予言もそこには書かれていたんだ。これはまだ世間の誰にも公表していない。
その予言の文字には少し特殊な加工がしてあってね、火で炙る事で新たな文字を浮かび上がらせる事が出来たんだ。そしてそこには最後の一文の後に『終わりを』という文字が新たに浮かび出た。そしてそれはゼロをこの世界から救う勇者が現れる。だがその存在はこの世界に同時に終わりをもたらすという解釈に至った。それから一週間後、彼は現れそして見事に世界をゼロの手から救い出した。
私はその時からずっと彼を監視していた。ゼロとの戦いの時からずっとね。だが、その彼を見ていて私は思った。彼の目は本当に純粋だったんだ。彼はただひたすらに平和の為に戦っていた。ゼロ亡き後は終わりをもたらすどころかこの世界に革命を彼は巻き起こし、この世界を一気に発展させたんだ。
私の不安は外れた、『終わりを』の意味は古い時代の終わりを意味するのだと思うようになっていた。だが、二年前突然彼は変わり、そして今、その予言を現実にしようとしている」
俺は大体の三上の生き方を知った。そしてやはり理解を外れた。あいつのやって来た事、それは今の俺たちがやろうとしてる覚悟と大差ない。三上はこの世界の平和の為に戦って勝利した。なのに、そんな奴が恐怖で支配を目論んだ?
「ところで君たち三人に聞きたい事があるんだ。君たちはミカミ君と一度会ってるんだよね?そして一度対決した。どう思った?彼の攻撃は」
アレックスさんは突拍子のない事を言って来た。あいつの攻撃がどう感じた?言うなればヤバかったしか・・・
「・・・激しく、怒ってる感じ・・・でした」
後ろの方でボソッと零羅ちゃんが呟いた。怒り?あんな笑ってたのに・・・いや、待てよ?俺がなんであいつにビビったのかって、あいつの目に屈したからだ。俺はあのにこやかな目を見た瞬間に縮こみ上がった。あれは、おかんからの雷を喰らう以上に熱く重たい感情、憎悪だ。
「はっ!?あの・・・」
零羅ちゃんは視線を感じて顔を埋めた。
「いや、その通りだよレイラちゃん。二年前のあの日から彼の目には怒りしか見えない。優しく包み込むようなあの笑顔は消え失せ、全てを貫くような怒りに満ちた笑みへと変わってしまったんだ。
私は独自にその原因を探った。そしたら一つのヒントを手に入れたんだ。彼が変わったあの日の朝、ミカミ君は一冊の本をアダムスの国立図書館から貸し出された。
タイトルは『この異世界より真実を込めて』
私はその本に原因があると踏んでいる」
え、それって・・・三上が変わった原因をこの人は突き止めたのか?
「ん?アレックス様、確かその本は私の記憶が正しければただの恋愛小説では?中身の程は覚えてませんが、あまり売れない本だったと」
けど、サムさんはその本を知ってたらしく原因はそれじゃ無いっぽい。
「そう、その筈なんだよサム、私もそう記憶していた。しかし、念には念をと思いその本を探したら、何処にもそんな本は存在してないんだ。国立図書館の恋愛小説の棚にあった一冊、それしかその本はこの世に存在していないんだ。サム、私たちは誰もその本を読んだ事なんてないんだよ。ミカミ君以外はね」
「な、そんな馬鹿な・・・いや、でも確かに読んだ記憶は無い。しかし、中身を漠然と覚えてる・・・なんだ、これは?」
サムさんが頭を抱えて悩んでいる。俺なんてもっと頭おかしくなりそうだ。
「故に私はこう考えている、その本にこそ彼が変わった・・・いや、変わらざるを得ない事柄が記されていた」
「ま、待って下さいッスよ!!もし、もしも俺たちが三上に勝ってそれを手に入れたら、俺たちは一体!!」
まさか俺たちも三上と同じになっちまうのか?たった一冊の本で正義感が180度変わるなんて・・・
「君達にそんな重荷は背負わせないよ、彼が何故変わったのか、私も知らなくてはならない。けどその為にはまず彼に勝利しなくてはならない。そして本を見つけて共に真実を解き明かすんだ」
その本には何が書かれていたのか、すげー気になるけど今は進むしかないよな。まずは俺を信じよう、もしもその本を読んでも俺は俺のままだ。俺は、1人じゃないからさ。




