リメイク第二章 そこにいるは全てを置き去りし狙撃手
「おはようございます・・・って、くっっ!!」
「いやぁ今日も天晴れ、日本晴れでござる!キリッ!」
しばらくしたら、次々と起きてきた。けど、零羅ちゃんが何故かプルプルと震えてる・・・あー、成る程。
「やぁ、みんなおはよう・・・って、れ、レイサワ君・・・な、なんだその髪型。ぶふっ!!」
サムさんが外から来たけど、今朝の麗沢を見るなら吹き出した。
「ふぁ、みんなおはよー・・・って、だっはっはっはっ!!!レイサワ君何よその髪型ぁっ!!アッハッハ!!!あー朝からお腹痛い」
麗沢のいつものアフロみたいな天然パーマが、寝癖でフライドチキンみたいな風になってた。みんな失礼だから笑うのを堪えてたんだ。けど、シィズさんは遠慮なしだった。
「し、シィズさん失礼・・・で、す けど ごめんなさい 」
どうやら零羅ちゃん、我慢の限界らしい。腹筋壊れるぞ?
「レイサワ、それ面白い。それどうやる?私もやりたい」
グレイシアさん、ツッコむとこ違う。
「うむぅ、昨日のシャンプーが合わないのか・・・拙者、自分専用のシャンプーを使わねばいつもこうなるのでござるのだ、ふんぬ!!お?これは気になる木みたいになってしまったでござる。ほれ、む・・・これは超サ○ヤ人、ほぃっ!およ?北海道はでっかいどう」
しばらく麗沢の髪型七変化を眺めてた。
「麗沢、朝シャンすれば?」
「拙者、顔は洗うでござるが朝シャンは余計に酷くなるので嫌でござる」
こいつ、この見た目で意外とこだわるんだよな。ならもうちょい服のセンスを磨けって思うけど、俺も人のこと言えないか。
「麗沢さん!これを!わたくしの荷物にあった櫛ですけど」
「お、かたじけない!!ほぅ、これは良い櫛でござるな。拙者のこのくるんくるんが纏まる!ほっ!」
バキッ・・・
「あ、あれま・・・」
「す、済まぬ・・・零羅殿」
零羅ちゃんの渡した櫛が折れたけど、麗沢の髪型はなんとかなった。
「よしっ!行くわよ!!目指すはインダストリベルト!エンデン町、旧エンデン変電所!!」
みんなが準備を整えると、シィズさんは元気に前を指差して高らかに叫んだ。
「あの、それより俺何も知らないんスけど、これからの移動はどうやって行くスか?」
「下りれば分かるよサクラ君」
俺たちはサムさんの言う通り、下のロビー階まで降りた。そして玄関のロータリーに一台のバンが置かれている。要するにハイ○ースだ。
「あー・・・成る程」
「知り合いから譲り受けたんだ。これなら六人に加えて武器や道具なども多く運べる、この先の移動はこれをメインに置こうと思う。それにこの車ならあちこち走ってるから、怪しまれにくいしね」
俺たちはそれに乗り込んだ、運転はサムさんがやるらしい。そして俺たちは西ボーダーを後にした。
「ん?サクラ君、あれをみてごらん?」
サムさんが窓の外を指差した。あれは、あの丘の上。あのステーキ屋さんの・・・確か、ジョナサン。それに西ボーダーの人たちがみんな俺たちを見送りに来ていた。中には横断幕を用意してる人もいる。
『全ては平和の為に』
横断幕にはそう書かれていた。そして、声は聞こえないけどジョナサンの口は「負けるなよ!」と言っているのが分かった。
「絶対勝つッスよっ!!」
俺は窓を開けて叫んだ。聞こえたかどうかは分からないけど、また気が引き締まった。
そして3時間後、車はインダストリベルトの地区境を越えた。
そこから更に数時間、車はエンデン町に着いた。ここら辺一帯は所謂ゴーストタウンと呼ばれる場所だ。
三上が現れた事による劇的な技術の進歩にこの町は置いて行かれ、錆びた鉄骨の廃工場や、木造の空き家があちこちに見受けられる。
「なんだろ、急に暗い感じになったッスね。なんか、薄気味悪いというか何というか」
「そうだねサクラ君、その感覚は覚えておいた方が良い。今君が感じてるそれは、殺気だ」
え、嘘・・・もう?
「車を降りよう、旧変電所はあそこだ。ランディ、わざと殺気を私たちに向けたな?」
サムさんは車を停めて、降りた。今既に何処からか狙われてるんだよな、慎重に降りよう。
「この先は流石に私一人では全員を守り切れる自信がない。だからこの先に向かう人数を絞る。グレイシアさん、レイラちゃんはここに残ってくれ。ランディの相手にはグレイシアさんは相性が悪い、そしてレイラちゃんは言わずもがな・・・
だから、この四人で変電所内に入る、全員背中合わせになるんだ。常に動くものに目を光らせろ。そして万が一撃たれたとしても急所を外せ。その為にシィズがいる」
急所に当たらなくするにはどうすれば良いんだろうな。そこんとこを教えてくれなかったけど、今更聞けない。今やれるのは葉っぱの一枚の動きまで目を光らせる事。
「・・・っ!? サムさんっ!!何か光った!!」
「なっ!! くっ!!」
どかっ!!!
サムさんは麗沢を勢いよく突き飛ばした。
「ノーっ!」
そして次の瞬間には、麗沢の足元に小さな煙が見えた。既に撃たれた?
「その小屋に飛び込めえっ!!」
俺たちは麗沢が突っ込んだプレハブ小屋に駆け込んだ。
「麗沢、大丈夫ッスか?」
「う、うむ拙者は無事でござる。先輩が真っ先に気がついたおかげでな」
良かった、無事だ。
「運が良かったわね。にしてもサクラ君よく反射光に気がついたね」
シィズさんが俺の頭をぽんぽんと叩いた。
「ランディ、遊んでるな」
サムさんがボソッとつぶやく。
「どういう事ッスか?」
「今の攻撃、私はてっきり南から撃つと考えそこに集中していた、太陽を背にするのが狙撃手の基本だからな。しかし、今は逆光の北から撃って来た。恐らく君らを試したのだろう」
あー、成る程。わざとスコープの反射光を俺たちに見せた訳ね。
『流石にそれは分かりましたね、サム・ヨゥ警部』
「うおっ!?」
突然サムさんの無線に通信が入った、俺は驚き変な声を出す。今のがランディの声か?まだ結構若そうな声だった。
「ランディ、何処にいる。姿を見せたらどうだ?」
『サム先輩、流石にその煽りで出てくる狙撃手はいませんよ。しかし、少し君達をみくびっていたよ。出来る限り反射光が見えないようにしてたんだけどな、サカガミ サクラ。意外と良い目をしてるな』
「そりゃどーもッスね、けど次は見つけてやるッスよ」
『けど、見えてないでしょ?』
「お?お主の今のスナイピングポイントはあの北にある鉄塔の上ではござらぬか?いくらサプレッサー付けているからと言えども、流石に銃声は微かに聞こえるでござる。そしてそれを踏まえて地面に穴が開いてから銃声が聞こえるまでの計算を考慮すれば約500メートル、となるとここから500メートル程のスナイピングポイントはそこの鉄塔でござる」
・・・・・
「麗沢」
「お?」
「お前数学のテスト何点だった?」
「38でござるが?」
やれやれ・・・こいつ本当変なとこは異常に頭良いんだよな。それを勉強に活かせば良いのに、趣味の方でしか発揮出来てねー。
『へぇ、サム先輩。この異世界の勇者たち、聞いてた以上に優秀じゃないですか。叩き込んだんですか?何も知らない彼らに、人の殺し方を』
「人聞きの悪いことを聞くなランディ。そもそも彼らにこうさせているのは君らだ。何も関係ない人を巻き込むように仕向けたのは、君らだっ!」
サムさんは声を荒げた。
『確かにな、こうなるように仕組んだのは僕らだ。だったらお互い様だサム。君らに僕らを責める資格は無い、互いに自分たちの為にこの人たちを利用した。
さ、次はどうする?僕の居場所は掴めたか?なら行動に移したら?この彼らを利用してね・・・けど、そこに本当に僕のはいるかな?』
パリィィンッ!!!
「えっ!?」
突然この部屋にあった花瓶が割れた。俺たちは今北側を、麗沢が言い当てた鉄塔を背にして壁に隠れてる。今割れた花瓶は俺たちの左奥にある机の上に置いてあった。あれを撃ち抜いたとなると花瓶の前にある壁をすり抜けた事になるぞ?
『さぁ、今のはどう撃った?』
「まさか、跳弾でござるか?」
『残念、レイサワ君。君の予測位置では鏡を使ってもその花瓶は見えない。けど、僕は当てた。更に言えば僕は真っ直ぐ撃った。けど、やろうと思えば跳弾も出来る』
チュインッ!!
「ぐっ!!」
突然サムさんの足から血が噴き出した。サムさんはうめき声を上げて倒れた。
「くっ・・・馬鹿な、逆に今のは鉄塔の上からでしか・・・」
サムさんはランディの攻撃が始まってからすぐ俺たちの盾になってくれてたんだ、だから当たってしまった。しかし、どうやって当ててる?確かに今のはあの鉄塔っぽかった。けどあの花瓶は、2人いるとかなのか?実は双子でしたとか。
『なら次は、左側。西からしか撃てない場所から撃とうか?』
とりあえず今は何処からも見えない場所に隠れるしか無い。そして跳弾しても当たらないように机のバリケードを作るか。
「サムさん、怪我は大丈夫ッスか?」
「あぁ、何とかな。しかし弾丸を早く取り出さなければ・・・シィズ、頼む」
「分かったわ、これちゃんと咥えててね。いくら回復の魔法が使えても中に残った銃弾を魔法では取り出せない。まず抜いてから一気に止血する。良い?」
「あぁ」
シィズさんはサムさんに木の棒を咥えさせ、そして取り出したピンセットを傷口にねじ込んで一気に引き抜いた。俺はグロくて目を逸らして耳を塞いでた。
「はぁ・・・はぁ・・・流石に、傷は塞がっても、歩くには後数時間はかかるか・・・にしてもランディの奴。今度は逆に動くのをやめたな。やはりこの位置は流石の奴も撃つ事は出来ない。しかし、それは私たちも同じか・・・待っていると言う事か」
『正解、その位置は確かに良いと思うよ?現に僕はそこには流石に撃ち込めない。けど、それは君らも同じ。さぁ、勝つには動かなきゃな。けど、動けばすぐに撃ち抜くよ?』
そうなんだよ、何処から撃ってるのかが分かればまだ対策出来るのに、あいつ縦横無尽なんだ。せめて、場所さえ分かれば・・・
「一歩出れば終わり・・・いや、どこから撃つのか分かれば、避けられるか?」
サムさん、何をしようとしてる・・・まさか囮とか言わないよな?
「そうでござるなサム殿、一か八かの賭け、何処に飛び出すかで拙者たちはこの勝負の勝ち負けが来まるでござる。一つ、拙者に案があるのでござるが・・・」
いつになく麗沢が真面目だ。麗沢は自分の作戦を俺たちに教えた。
「・・・、危険すぎるぞ?第一、それがランディの秘密の正体だと分かった訳ではない」
「かと言ってこのままでは埒が開かぬ。昔我が父が言っておったでござる。幸運は自らの行動が手繰り寄せるものであるとな。拙者は出来る限り善を努めて来た、今こそ応えてくれると思うでござる」
『さぁ、どうする?そこで永遠に待って餓死する?それとも僕に撃たれて死ぬ?僕は構わないが、それではあまりにつまらない。僕の方から仕掛けても良いんだよ?やはり、誰も僕を超えられはしないみたいだ』
ランディの奴、この状況の俺たちを撃てるのか?
「今でござるっ!!」
俺たちは次の瞬間、みんなしてそれぞれ別の方向に飛び出した。
『愚か・・・』
撃たれた・・・狙って来てるのは、俺の方だ。弾丸が見える、真っ直ぐ俺に向かって飛んできてる。これあれだ、自転車で走っててひっくり返った時、時間が遅く感じるあれだ・・・けど、避けることが出来ない!!なんとかして最小限のダメージにしないと、死んじまう!!




