リメイク第二章 次なる地に待つは敵か味方かの選択肢
とりあえず俺は料理が運ばれてくるまで聞き耳を立ててみた。
「なぁ、グレイシア様ってさぁ」
ん?グレイシアさんの話?
「あぁ、良いよなぁ。あの涼しい顔で踏まれてー」
すっ転んでいいか?飛んだドMがいるんだけど。
「確かにな、んでもって豚だのゴミだの言われてー」
ダメだこりゃ、別の会話聞こう。
「けど、これ噂なんだけどよ。行方不明って話知ってるか?ここ最近表に全く出ないじゃん。なんでも国王を裏切ったとか」
「え、じゃまさか・・・」
「さぁな、いくらあいつでも妻を手にかける事はしねーだろ。さしずめ閉じ込めたとかじゃないの?」
「鎖で繋がれた、グレイシア様・・・有りだなっ!」
この変態ども無視して、グレイシアさんは行方不明って扱いか。あまり反逆者たちの情報は表に出てないらしいな、あえてだろうけど。
「あいよ!一ポンドステーキ!!それとコーラだ!!」
おぉ、たまに聞くけどボリュームあるなぁ。てか、コーラ瓶で運ばれて来た、栓抜きとセットだ。
さて、とりあえず食べるか・・・って、ん?
「ん?」
「あの、グレイシアさん?なんで俺の分も?」
気がついたらグレイシアさんが俺の前に出されたステーキに手を付けていた。
「? サクラ、食べたかった?」
・・・2つ食べる気だったのかよ!!てか早いな食べるの!麗沢並みじゃねーか!
「・・・コーラ、飲む?」
「いただきます」
「おう!ボウズ!!そのコーラは人気でよ!!すぐ売り切れるんだよ!!普通の飲食店じゃまず手に入らねぇ!!んでもよ、ちょいと裏ルートを辿れば安く手に入るのよ!」
店の人がステーキじゃなくてコーラについて力説してきた。それより、栓抜き栓抜き・・・これか、これ・・使い方、分かんない。
「んでそれから俺が思い立ったのは酒をコーラで割る事!コーラ割りつってな!良かったら飲んでみるか!?うちの新商品!なぁボウズ!!」
「あ、いや俺はまだ未成年ッス・・・」
「あれ、そうなの?意外と貫禄ありそうだなと思ったんだけどよ。まぁいいや、冷えてるうちに飲みな!!んで、お嬢さん。良い食べっぷりだねぇ・・・あんたなら、うちの山盛り行けるんじゃないか?」
今度はグレイシアさんに説明が変わった。これを、どう引っかかるんだ?あれ、滑った・・・開けコーラ。
開けゴマ的に念じてもダメか。
「食べすぎ、ダメって言われてるから。それより、一つ聞いて良い?」
「ん?なんだ?」
「あなたは、どっちに付く?」
グレイシアさんは店の人にド直球に聞いた。すると店の人は少し苦い顔して小声になった。
「例のゲームってやつか。悪いが、答えられねーな。下手に立場を示したら店の売り上げに響く」
「言い方が変だった、ごめん。実はあの人の事をあまり詳しく聞いてなかったから。彼は、ミカミ レイは何をした?」
これは、上手いこと聞きだけそうだ。何とかビンの蓋も開いたし、こうやって開けるのか、蓋は持って帰って良いかなぁ。
「成る程、見損ねたって事か。あまり食事中には話したくない事だけどよ。あいつは、ルール説明の一環で自らの身体をかっ捌いて爆弾を腹の中にねじ込んだんだ」
「ぶふぅっ!!?げほ!げほ!」
俺は一口飲んだらあまりの衝撃的な言葉に吹き出してしまった。
「その爆弾が爆発する条件は二つ。一つ目が各地区のリーダーの持つ発信機の信号が消える事。発信機の破壊が勝利の条件との事だ」
「もう一つの条件は?」
「・・・あの三人の命が、消える事」
「そう言う事・・・どちらかが達成されれば、彼は死ぬ。サクラ、コーラもう一本開けて。私も飲みたいから」
「あ、はい」
ぽんっ。
「美味しい・・・ねぇ、もう一つ、聞いて良い?」
「ん?」
「なんで、そんなに汗をかいてる?そんなに暑い?」
あ、本当だ。店の人は額に汗が流れてる。厨房暑かったのかな?
「いや、話してたら例のその出来事を思い出してな。生で見ちまったからよ・・・」
あぁ、それは気の毒だな。確かに食事中に話したくないか。
「もう二度と、見たくない?」
「あぁ」
「けど、何で今こんなに静かなの?」
どかっ!!
「んげっ!!」
『バァァァァンッ!!!』
俺は咄嗟グレイシアさんに蹴っ飛ばされた。その直後耳が痛くなるような音が聞こえた。
「な、なんスか?」
ぐいっ、俺はグレイシアさんに無理矢理立たされた。そして俺は目の前の光景に固まった。
「最初の質問、答えてくれたね。ここの全員、レイの味方」
さっきステーキを出してくれた店の人は俺に長細い黒い筒状の物を向けている。
さっき変態な会話をしていた男たちは、持っていたステーキナイフを俺たちに向けている。
「許してくれ・・・理解が追いつかないんだ。俺も考えに考えたけどよ、あいつがあそこまでするのなら俺にもう選択は出来ねぇ」
さっき店の人がやったのは銃だ。シングルアクションのリボルバー拳銃、それを撃った。
「っ・・・」
「すまねぇ、ボウズ。俺は家族を守りたいんだ。三人の犠牲で世界は救われるんだ。俺にはそれに縋るしか無い」
震え・・・銃の先は俺を捉えてるけど、たまにズレそうになってる。
「すまねぇっ!!」
カチンッ・・・
ハンマーが起こされた。そして引き金に指がかかる。
「くっ!!!!」
『パチィィィンッ!』
俺は咄嗟にさっきのコーラの蓋を店の人に投げつけた。それが思いの外早く飛んで行って店の人の手に当たった。
「なっ!?」
「今」
『バギィィィンッ!!!』
「わっ!?」
俺の反撃で隙が生まれたらしい。グレイシアさんがこの店丸ごと凍らせた。
「な、なんだこりゃ!!」「く、靴がくっついた!!って、何ダジャレ言ってんだ!?」
「さ、逃げるから。お金は、置いていく。サクラ」
「あ?わ、わぁっ!?」
俺はグレイシアさんに襟を掴まれて強引に外へ連れ出された。
俺は何とか体勢を整えて一緒に走った。
「他のみんなは大丈夫ッスか?」
「分からない。けど、これではっきりした。レイの目的が・・・」
俺はまだ腑に落ちない事ばかりだけどな。とりあえずあいつが死ぬ気ってのはわかった、理由が全く分からんが。
「あ、麗沢」
その途中で麗沢たちを見つけた。
「お?先輩ではござらぬか」
後ろを振り返ると誰も来てない。撒いたか?
とりあえずサムさんと麗沢はまだ見つかってないみたいだ。俺たちはとりあえずここで情報を共有した。
「成る程、全く読めないな・・・何が目的なんだあの男は?それよりも、ここは本当に王に付いた人が多い。そのおかげで見てごらん、祭りの準備が滞りなく進んでいる。王国軍はそっちに集中してても問題は無かったと言う事らしい。住人たちを使えばね」
そう言う策だったのか。多大な戦力をここに置くんじゃなくて住民を無理矢理味方に付けて三上は自分のポリシーを守る。あいつがルールの裏を掻いて来たって訳ね。
「さて、シィズの方はどうなってるだろうか・・・」
「さ、サームッ!!」
噂をしたらシィズさんが零羅ちゃんと一緒に走って来た。
後ろに大量の敵を引き連れて・・・
「ちょっとまずった!!」
「ひぇ〜!!助けてくださ〜い!!」
どうやらやらかしたのはシィズさんらしい。てか、シィズさんは分かるけど零羅ちゃん普通に足速いな。あのローファーで良く走れんな。
って、それどころじゃ無いな、
「サムさん?どうするんですか?」
「うん、逃げたほうが良いよね。これ・・・」
「ッスよね、逃げるッス!!」
とりあえずサムさんに確認して俺はようやく走り出した。
「くっ!!なんなんだこの数!!ミカミ、本当に何をしたんだ!?」
「そっちへ逃げたぞ!」「追えっ!!」「逃すなぁっ」
後ろからは殺気に満ちた声が突き刺さる。
「グレイシアさん!!あれ何とか出来ないッスか?」
「出来る・・・けど、この数はだれかが巻き込まれて死ぬ。私の魔法は、そこまで制御出来ないから」
ダメか、けどこう言うのはアレだけど。グレイシアさんはその気になればここの人たちを圧倒出来るのか。凄いな・・・
けど、俺たちは徐々に追い込まれ。最終的には囲まれてしまった。
「観念しやがれ・・・」
ジリジリと近づいてくる。何でだ?殺すならさっさとやればいいのに・・・そうか、覚悟が出来てないんだ。誰かに責任を押し付けあってる。誰かが動けば一斉に動くんだろうな。
「わ、悪く思うなよ?恨むなら王を恨んでくれ」
逃げてる・・・前にグレイシアさんに言われた事を思い出した。そして急に悲しい気分になって来た。
「逃げてばっか・・・」
俺はボソッと喋った。その声はどうやらグレイシアさんにだけしか聞こえなかったみたいだ。彼女だけが俺をチラッと見た。
俺は今度はもう少し声を大きくみんなに聞こえるように口を開いた。
「俺は別にあんたらを恨むつもりはないッスよ。けど、悲しくて泣きたい気分にはなる。俺たちは絶対に三上を倒すって覚悟を決めたのに、覚悟を持ってないあんたらに殺されるって思うとなんだか、こう、気分が落ち込むんス。ろくに殺気なんて無い、怯えてるだけのあんたらに殺されるなんてさ・・・
俺、その怯えてるあんたらを救うためにここまで来たんスよ?この世界の事を何も知らない、何でここに来たのかもそして戻る方法も見つかってない。なのに俺たちはこの世界の運命を委ねられたッス。
俺だってあんたらみたいに逃げたいよ、何も考えずに自分が助かる方法があるなら、それに縋りたい。けど、俺はあいつと出会っちまったんス。三上に・・・そしてサムさんにグレイシアさん、シィズさんたちと出会った。それで俺は決めたんだ。三上は倒さなきゃいけないって。
お節介とでも言うんスかね、俺は三上を倒して今怯えてるあんたらも救いたいんスよ。逃げずに向き合ってやる、だからせめて、あんたらも俺たちと向き合ってくれないッスか?
俺は俺の正義があって、覚悟があってここまで来た。けどあんたらにそれはあるッスか?俺たちを殺そうとするのは良いけど今一度考えて欲しいッス。その正義はあんたらにとって正しい正義なんスか?都合が良いから逃げてるだけの奴しかいないッスよね?そんな奴に俺たちが殺されるなんて納得がいかない。せめて自分の正義を貫いてからやってくれ。せめて、自分から逃げないでくれ」
俺は長々と語った。追い込まれるとこうも口達者になるもんなんだな、とは言っても思った事は本当だ。覚悟もなく、逃げてるだけの奴らに殺されるのは納得が出来ないんだ。
「サクラ君の言う通りよ、確かにこの子たちを殺せばすぐ終わる。けど、本当にそれで良いの?その犠牲で三上が死んで満足出来る?少なくとも私は出来ないわね、そんなので革命が成就するなんて、拍子抜けも良いとこよ。そもそも、そんな事のために何も知らない三人の命が犠牲になるのは、私は許せないわ」
シィズさんが、俺たちの前に出た。手を横に広げ、俺たちの盾になってくれた。
「私も同感だ。と言うより、これは立派な殺人未遂だ。例え王の命令でも、こんなのは容認は出来ん。それよりも今一度考えてみてくれ、我々の目的はリーダーだ。情報を持っているものがいれば、協力して欲しい。だが、それでも尚ミカミに味方する者がいるのであれば、私は容赦はしない・・・全員纏めて逮捕する」
そしてサムさんも前に出た。この空間にしばらくの緊張が走る。しかし、折れるのは結構早かった。
「くっ、ダメだ・・・俺には、やはり出来ない」
ゴトッ、武器を落としたのはステーキ屋さんの店の人だ。俺を銃で撃とうとした人。
「家族を守りたい、けどその為にたった一人でも犠牲を出すのはやはり間違ってる。なんで命の重さを天秤にかけてんだよ、一人でもダメだろ・・・そもそも、こうなるような仕組んだあいつをどうにかしなきゃダメじゃねーか。これで勝っても、後悔しかしない。済まなかった、考えを改める・・・」
一人行動すれば後は早かった。みんな一気に武器を捨てた。
「情けねぇ、俺は何を思ってこんな事を・・・」
「あいつを王のままのさばらせてた、そのせいでこんな事になったんだ。私たちにも責任がある」
「だな、連帯責任ってやつだ。自分は関係ないとは、言えないよな・・・」
住人たちたちはこぞって武器を捨てた。
たった一人を除いては。
『パチパチパチパチ!!』
突然高い拍手が鳴り響いた。
「っ!!」
その音の方向を見た住民が突然息を飲んだ。この反応、可能性があるのは、一つだけだ。
「良い演説だ、我も感動したよ。サカガミ サクラだったな、この絶対絶命の状態を言葉だけで形勢を再逆転させるに至った。その器に敬意を表し、我も逃げずに正々堂々と立ち向かおうではないか」
おいでなすったか・・・こいつが、
「我こそは、王国軍、土竜部隊隊長にして、陛下より西ボーダーのリーダーを仰せつりし者、ポンサン・ミィだ」




