リメイク第二章 それぞれの覚悟は貫くべき己の信念
「俺たちは、あいつの言いなりになってこのゲームをやらなきゃダメなんスか?」
俺はぼやくように呟いた。
「どうやら、そうらしい・・・ミカミがここまで早く行動を起こすとは思わなかった。今は彼の言うゲームをやらなければならないだろう」
サムさんは言葉を重く申し訳なさそうに語った。
「むぅ、避けられぬゲームならばこのまま攻略ルートを決めねばな!キリッ!ゲームと言うからにはルールがあるでござる!そのルールの裏をかけば、もしかしたらこのオワタ式クソゲーを究極のオレツェェ系のヌルゲーに変えることもできるやもしれぬ!」
「な、なに?レイサワ君?おわ?式?」
「あー、サムさん。要するに麗沢の言った事は三上のゲームにあえて乗って、あいつの示したルールの裏をかけばもしかしたら今のこの戦力で三上を倒す事が出来るかもって事だと思うッス。その為に作戦会議しようぜって事だろ?」
「お!!拙者の翻訳かたじけない!!」
俺は国語得意なんだよ。後、なんだかんだまるっと一年付き合った仲だぞ、翻訳出来るわ。
「成る程、それはいい案だね、そこから考えようか。とりあえず既にゲームは開始された。細かい話を後日するとは言っていたが、ミカミが示したさっきの大まかなルールに変更とかは無い筈だ。彼はそう言うとこは律儀だしね、恐らく細かいルールと言うのは勝利の条件や、違反の事になるだろう。それを踏まえてこのゲームのルールをおさらいしよう」
サムさん主導の作戦会議が始まった。食堂が会議室に変わったみたいだ。
「確か、このアダムス十六地区に住む者全員がこの子たちを倒せってのが最初に言っていたわね」
そしてシィズさんが最初のルールを語った。
「あぁ、その事で少し思いついた事があるんだ。彼のルールは『国民』が彼らを倒すことだ」
うん・・・そうなると俺の味方はサムさんたちしかいなくなるよな・・・どう覆せばいいんだか・・・
「けど、ミカミは言わなかった。国民に立場だけ与えて他は何も言っていないんだ。そして次のルール、君たちの役割だよ。十六の地区を周りその地区にいるリーダーを倒せばミカミは敗北を認めると言った。
つまり国民にとってはどちらに転んでもミカミが消える事に違いは無いんだ、それで私はこう考えた。これはミカミによる我々への挑戦とも言えるかな。国民は恐怖に屈し君たち三人を倒す簡単な道を行くのか。はたまた君たちを信じ、互いに手を取りミカミを倒す道を選ぶのか。このゲームの真価は我々『反逆者たち』がどれだけの国民を味方に付けるかにかかってる。私はそう考えている」
それはちょいと考え過ぎとも思ったが、三上は確かに国民に対してルールはほとんど示してない。こっちに寝返ったペナルティとかも示さなかった。って事はこれこそ三上の言うゲームなのか?
国を二つの勢力に分断させる事が・・・
「それで私たちは今その全十六地区のうちの一つを解放、残る地区は十五。そしてボーダーは『反逆者たち』の最重要拠点、ミカミ国王は最初からこのゲームをここから始めようと考えていた?」
次にシィズさんが考察した。ここまで来るとマジで三上の奴はそこまで考えてる可能性が出てくる。
なんとなく光明って言うのかな、理解が追いついてきた。
「そうだなシィズ。この条件の元、ゲームは開始された。次にやるべきは行動だ。我々の悲願である世界への反逆はたった十六のリーダーを倒せば完遂出来る。しかしその為には君たちの協力は必要不可欠になる・・・
そこで改めて問いたい、サカガミ サクラ君、レイサワ ダン君。そしてカミワズミ レイラさん。君たちはこの世界の為に私たちに協力してくれるだろうか?」
サムさんは俺たちに問いた。俺はこの時若干躊躇したのかもしれない。もう後戻りは出来ない、そう考えたらちょっと怖くなった。だから先を越された。
「ふっふっふ・・・拙者の答えは一つ也!!拙者は必ずあの三上という人物に天誅を下す!!あの食を冒涜するかのようなあの者は決して許しはせぬ!!」
単純だな・・・けど、それでいいのか、単純で。俺はあいつに酷い目に遭わされた、やり返さなきゃ気が済まない。世界がどうのこうのとかは後回しだな。
「俺も、あいつにキッツイ灸を添えなきゃ気が済まないッスからね」
俺たちの意志は決まった。後は零羅ちゃんだ・・・どうするんだろ。
「わたくしは・・・」
流石に零羅ちゃんにこの選択をさせるのは辛いよな・・・別に俺たち二人で向かって零羅ちゃんをここで匿っても問題はないしな。
「殺さなくては・・・いけないと、思いました」
俺がそんな事を思ったら零羅ちゃんから物騒な一言が聞こえた。
「彼は、きっと人間ではないのでしょう・・・楽しむかのようにあらゆる命を弄ぶ彼は、わたくしの最も嫌う存在です。ゲームか何か知りませんが、わたくしの心は今彼を殺せと言いました」
変わってる子だとは思ってたけど、ここまで言うか?けどなんだろ、この感じは怒ってるから出た言葉なんだろうけども、違和感を感じるな。
「・・・・・そうか、ありがとう。これで役者は揃ったか、後ひとつ問題があるとすれば」
「時間・・・」
そしてこのゲーム最大級に理解の出来ない事にグレイシアさんが口を開いた。
「それだ、あの日付はなんだ?四月二十八日、午前八時六分十八秒。グレイシアさん、分かりますか?」
「分からない・・・けど、その時刻がこの世界のみんなを殺す事に関係があるかもしれないから」
問題はそれもあるんだ、いくら三上でもこの世界の人間全てを殺す方法なんて無理に決まってる。けど、その時刻に何かするつもりなら・・・
「恐らくそれだろうが、細かすぎる。爆弾?を使うにしてもこの世界の人間を全て殺すことなんか出来る訳無い。それに、爆弾ならばシャルロットを頼る筈だが、彼女はそんな中途半端な時刻に設定はしないだろう・・・」
サムが色々考えてるが、これ以上進展が無さそうだ。
「サム、この事は多分。今考えても意味ないから・・・すべき事は、行動」
「・・・ですね、ここが最も腑に落ちない部分だが、要するに私たちが勝てばこの期限の今は無くなる。今は行動しましょう、サクラ君たちよ、私がこの十六地区を巡る旅の案内をしよう。よろしく」
「よろしくッス」
俺はサムさんと握手した。異世界を巡る旅、聞こえは良いけど目的は残る15人のリーダーを倒す為の旅か、落ち着かない旅になりそうだな。
「無論、私も行くわ。怪我人の回復出来る人がいるでしょ?」
シィズさんも立ち上がる。
「そして私も行くから・・・私は、えっと・・・暑い日にかき氷用意出来る」
う、うん・・・グレイシアさん理由そっち?
「お?三上殿への責任とかでは無いのでござるか?」
「あ、」
麗沢のツッコミに、グレイシアさんはそれ言えば良かったって顔になった。
「まぁ、ともかくだ。勇者三人と反逆者たち三人。この六人でゲームの旅に向かうとしよう。けど、まずは外に出て状況把握からだな」
こうして世界の命運を掛けたゲームが始まった。敵がどれくらい強いのかなんて分からない、多分差は歴然だろうな。けど、俺たちはそれを突破しなきゃならない。そうしなければ俺たちは生き残れないんだ。
勝つぞ、勝って必ず俺たちの平和を・・・
そして外へ出た。三上が言っていたな、ここではもう戦闘は禁止とか言ってたけど、普通に考えりゃ一般人からすりゃ知ったこっちゃないよな。ここで殺されて別の場所に持って行けばどうとでもなるし、ここは気をつけて・・・
と、思っていた矢先だった。俺は目を疑った。
「ここに出てきたって事は、覚悟は決まったって事で良いんだよな?サム」
そこにはあの定食屋の店主ジョシュと、そしてここにいるのはこのボーダー地区ほぼ全ての住人がここに来ていた。敵対する為ならわかる。けどこれは、俺たちを労うかのようだ。
「ジョシュ、これは一体・・・」
「今の間に集めておいたぜ、これがボーダーの意志だ。ここにいる奴ら全員、ミカミに一泡吹かせたいとよ。天秤にかけて関係ないこいつら巻き込むくらいなら、あんたらを信じてミカミをぶちのめす方に懸けたいんだよ」
三上の奴の圧政、もしかしてこれってあいつのミスか?やり過ぎたあいつの政治は誰もあいつを味方に付けなかった。
日頃の行いってやつかな・・・運が味方してくれたみたいだ。
「お!これはラッキー、ハッピー!今夜はステキなステーキでござる!!」
韻、別に踏めてないぞ。ラップバカにしてんのか?麗沢は、と言うか麗沢もこの展開には驚いたらしい。
「レイサワ君鋭い!そのステーキの名店のある場所から攻めたらどうだ?って提案したかったんだ!」
いや、多分普通にこいつステーキ食いたいだけじゃ・・・
「お?」
「西ボーダー地区。エイド方面への貿易や、交通の中心のあるのが西ボーダーだ。そこを解放できたら情報も入りやすいし、色んな方面へ向かう拠点になり得る。それにあそこの駅前にあるステーキ屋さんは俺も認める名店だ。行ってみると良い」
情報か、確かに現代の戦争は情報を制した方の勝ちとか言うしな。三上の動向を知れるのならそこから行くべきか?
「ジョシュ、確かに良い案だが。私はやめといた方が良いと思う。ボーダーの次に西ボーダーを狙うのはミカミの想定の範囲内だろう。私がミカミなら西ボーダーには最も厄介なリーダーを置く。私ですら敵わない相手を出すだろう。
だからまずは観光地である南オーシャナから向かい、この子ら専用の武器を揃えてから国をぐるっと一周するように回る。そして北のコールド地区から西ボーダーへ戻り、インダストリベルトを超えて中央を目指す。その間にこの子たちの育成と、更なる反逆者たちの仲間を集めれば、勝てる可能性は格段に上がると私は踏んでいる」
おぉ、サムさん凄い先まで読んでる。地名を言われてもよく分かんないけど、なら・・・俺が選ぶなら・・・どうしよ。
「成る程、しかしそこさえ押さえれば仲間もより集めやすくなると言うメリットもあるが」
「今はまだ出来る限り危険を避けるべきだろう、どの道相手にするにしても経験を積むと積まないとでは、その差はかなり大きい」
一長一短ってやつか。思慮深く行くべきかなとも思うし、突き進んでも良い気もする。うーん・・・
「いや、西が良いから」
この審議中の会議にグレイシアさんが西ボーダーへ勧めた。理由はなんだろ・・・
「あの街は今、明日の祭りで忙しいから」
ま、まつり?
「グレイシアさん、この非常時にやるでしょうか?」
「やる、何がなんでも明日の事を止める事はないから。サム、あなたも明日は何か知ってるでしょ?」
「・・・英雄の日」
「そう。レイはそこに中止になり得るような戦いが出来る強い奴は置かない。むしろ南オーシャナの方に厄介なのを置く、私が思うに南オーシャナは恐らくニャンタがいると思う」
ニャン?猫?この間はワンコだし・・・
「ニャンタか・・・南オーシャナなら確かにあり得るか」
「あ、あの〜・・・サムさん?」
「ん?どうしたんだい?サクラ君」
ここは聞いておこう。
「すんません、全ッ然ついて行けて無いッス。そもそも英雄の日ってなんスか?」
「そうだな、最終的に何処から行くのか選ぶのは君たちだ。その為にもこの話は少し聞いておいても良いかもね。ミカミ国王がかつて世界を救ったのは話したよね、それに纏わる話でね。
二十年前、この国の最大の脅威ゼロがいた。それを倒すべく立ち向かったのが異世界の勇者、ミカミ レイ。氷の魔法族の末裔、グレイシア ダスト。そしてもう一人が国境警備隊隊長、ビーン・ムゥ。その三人でゼロと戦ったんだ。
しかし、ゼロとの熾烈な戦いの中ビーン隊長は命を落としてしまった。その後ミカミはゼロの討伐を完遂するんだ。それからその戦いで犠牲になったビーン隊長の為に、ミカミは前国王に祝日を設けて欲しいと頼んだんだ。それが明日、ビーン・ムゥ隊長の誕生日だ。隊長は西ボーダー出身でね、そこで毎年祭りを開いている。大風が来たりして、延期はしても毎年必ず行ってたんだ。何があっても中止はなかった」
戦いで犠牲になった人の為にそこまでやるのか・・・なら、尚のことあいつの今の命を軽く見てる感じが理解出来ない。俺はしばらく考え、答えが出た。
「・・・サムさん、決めたッス。俺は西ボーダーってとこから行く。祭りなら人がごった返すから軽い変装で警備を抜けられるかも。それにリーダーがどんな奴かは分からないッスけど、それは何処から行っても変わらないッスからね」
「そうでござるな!キリッ!拙者は先輩の行くとこに付いて行くでござる!!」
麗沢が俺の隣に立って親指を立てた。
「わたくしも、桜蘭さんに付いて行こうと思います。当たって砕けましょう」
零羅ちゃん、砕けちゃダメだよ・・・
「答えは出たか、ならば我々は西ボーダーから向かうとしよう!」
そしてサムさんが取り纏めた。
「ならサム!こいつを使いな!無線機だ!反逆者たち専用の周波数を使え!」
誰かがポイッと太いアンテナの付いた電話のような物を渡した。懐かしデザイン・・・
「あ、西ボーダーなら三十分後の貨物列車に乗れば車よりも速く西ボーダーに行けます!」
そして若い男から提案を受けた。
「そうだな、その貨物列車に隠れて行こう!」
「はいッス!!さてと、三上に目にもの見せてやるッスよ!!ゲームスタートと行こうじゃないッスか!!」
「うむ!!GAME START・・・で、ござる。キリ・・・」
「は、はい!!ゲームスタートしましょう!」
「そうだね、『全ては平和の為に』」




