リメイク第二章 支配は己の欲望を満たす為の娯楽
「あ・・・っ、う・・・」
女の子は口をぱくぱくさせて喋れないみたいだ。当たり前だ、こんな人殺しが目の前に現れたら恐怖で何も言えなくなるに決まってる。
「成る程ね、良い目だ。平和を愛してる綺麗な目だよ。ねぇ、君は僕が憎いと思う?」
2個目の質問・・・何勝手に理解したつもりになってんだ?そんな目を見ただけで分かる訳ないだろ。
「わ、わたくしは・・・」
女の子は震えた涙声で訴える。
「凄いね・・・まだ君は僕から目を逸らさない、その目に僕への恐怖は微塵も無い。他を見てごらん?みんなはこんなにも僕を憎み恐怖してるのに、君のその目は哀しみだ・・・」
こいつ、読心術でも使えるのか?それとも勝手に自分の都合のいい事を適当言ってるだけか?
「わたくしは、ただ・・・分からないのです。あなたは何故、周りを憎ませたいのですか?このままだと一人になってしまいます。仲間を殺して、周りに憎しみを植え付けて・・・そんなのになってしまうなんて、あなたが可哀想じゃないですか」
この子・・・本当に三上の奴を憎んでないのかよ。こんなことされて、それでもこいつを可哀想って思うってどう言う生活してたんだ?この子も大概普通の子じゃ無いのかも。
「それが答えだよ」
「え?」
「僕はわざと周りに憎しみを与えてる。その理由を知りたい?」
こくり・・・女の子は首を縦に振った。
「答えは単純、僕がそう言うのが楽しいから、好きだからだよ。僕ってちょっと強すぎるからさ、一人でいいんだ。だからこそサムさんみたいな人が現れるのを待ってたんだ。僕が毎日処刑を放送する理由はそこにある。
待ってたんだよ、この僕の世界に反逆する者が現れるのをね、それに知ってる?僕が毎日殺して来た人、彼らは全員僕への憎しみを持った人たちだ。毎日毎日聞く悲鳴、その中で泣いていた人は一人もいなかったでしょ?」
そう言えば・・・この間の処刑の映像も、三上を睨んで殺されてた・・・
「ならば何故我々を真っ先に潰さなかった?」
サムが質問を投げかけた。
「君たちは行動理念が彼らと違うからだよ。憎しみを持ちながらその先を行く感情。復讐心ではなく革命を目指す者・・・『反逆者たち』って僕の見る限り、憎しみ以上にこの世界への平和の心がその剣を、槍を、魔法を、そして銃を動かしてる。そしてその心は一つになり、やがて僕を脅かす程の力になる。僕はそれを待ってるんだ。それを僕の力で叩き潰したいのさ!」
「そ、そんな・・・ひどすぎます・・・」
女の子はポロポロと泣きながら三上に訴える、けど三上は。
「そう、僕はとても悪い人だ、ひどい人なんだよ。けど、僕は君のその目を殺すなんて事はしないよ。君は何かを押さえ込んでるよね、その目に憎しみが無いのは嘘になる。その目は確かに憎しみがある、けどその矛先は自分だ。自分への憎しみが僕への哀しみに変わってる。見せてよ、その憎しみを超えて、僕に立ち向かうその日を・・・待ってるからさ。他のみんなも同じ、待ってるよ。君たちが僕を殺せるその時を・・・けど、僕も全力で抗うさ。
どちらが勝つのかなぁ、僕への憎しみから生まれ出た正義の心が僕を倒すのか、それとも僕が君たちを潰して、世界をもう二度と反撃の意志も失くす程に知らしめるのか。なんならこの世界ごと終わらせた方が面白いかもね・・・アハ、アハハハッ!!ハハハハハハハッッ!!!」
三上は咄嗟大笑いを始めた、世界を終わらせると言った事がそんなに面白かったのか?くそつまんねーんだよ・・・いつまでも、俺がくたばったままでいられるか!
「くっ、っぅぅぉぉおおおおっ!!!!」
俺は痛む身体を無理やり起こした、こうなりゃやけだ。俺が出来る最後の力を振り絞る!!
「へー、立てたのは凄いよ・・・けど」
「ダァァァァァァァッッ!!」
俺はめちゃくちゃにパワーを込めて引き金を引く。撃てた・・・電気の玉見たいのが三上に向かって飛んでいく。
『バァァァァンッ!!!』
凄まじい炸裂音が鳴り響く。三上はそれを防ぐと少し手元を火傷したみたいだ。
「ん、これは・・・中々の威力に跳ね上がったね、さしずめ火事場の馬鹿力って所かな?」
「うおおおおっ!!」
ここまま突っ込め!!間合いを詰めて目の前で心臓でも撃てばこいつでもくたばるだろ!?
「え?」
気がついたら三上は俺の目の前に立っていた、そして俺の銃の銃身を掴んで止めている。
「それいい銃でしょ?ちょっと装飾は鬱陶しいけど我慢してね・・・さてと、良いものを見せて貰ったお礼に僕の魔法を見せてあげるよ。その銃、離さないでね?」
『バゴオオオオォォォォォンンッッッ!!!』
三上は俺の手を掴むと俺に無理矢理引き金を引かせた。その一撃はまるで何かのレーザー光線みたいな勢いの炎が空に向かって放たれた。そして三上の胸にポッカリと穴が空いた。
「は、は? は?」
俺は訳が分からなくなった。なんなんだこれ・・・
「これがこの子の実力だよ、そして君たちが僕を倒すにはみんながこのレベルに到達しなきゃいけない、はい・・・これにて講習は終了。後は今の感覚を理解、考察して自分のものにしてみてね」
「な、治ってる・・・」
三上の空いた胸は見る見る治っていった。確かに俺たちも怪我は治せる。けど、こんな速度では無理だ。それにあんな即死しそうな一撃なんて、俺では耐えられない。
「さ、そろそろ僕は帰るよ・・・それじゃ」
三上は背を向けて去ろうとした・・・これ、これはチャンスじゃないか?とりあえず今あいつが手に持ってる剣。あれを弾き飛ばせればワンチャン行けるかも・・・
三上、今のを見せられて俺の戦意を喪失させたらしいが、俺はお前への怒りの方がまだ勝ってる!!行くぞ!!
「うおおおおおおおおおおおっっっ!!」
「あらら?」
俺は突進を繰り出した。三上は無論それに反応する。けどな、さっきの麗沢の真似だ。ここで体勢を一気に変えて狙うはその武器だ!!
『ガキィィィーンッッ!!』
俺は銃を鈍器の様に振り、三上の手元にあった剣を弾き飛ばした。
「ふ、中々・・・でも!!」
三上の奴は飛ぶつもりだ!!くそ!!先に手に入れる!!
俺も大きく飛び上がった。
届けっ!!これで終わらせるんだ!!あいつの剣さえ奪えば!!
パシッ・・・
「これが、実力の差だよ・・・けど、いい手だった」
剣の柄を掴んだのは三上だ。俺は取り逃がした・・・
トン
俺は覚悟してたけど、三上は俺の肩を叩いてそのまま剣を鞘に収めた。
「うん、凄くいいよみんな、今のも彼が奪えばこのまま一斉に攻撃に回る気だったみたいだね、いい連携だ。敬意を表するよ。あ、そうだ・・・僕とした事がとんでもない事を忘れてたよ。君たち全員にきちんと自己紹介してなかったね、僕の名は三上 礼。このアダムス連合王国の現国王、よろしくね、異世界の勇者たちよ・・・さ、僕は名乗ったんだ。君たちも名乗って、名前を知らない子が互いにいるんだから」
この子の事か・・・
「俺は坂上 レイノルド 桜蘭」
「拙者は麗沢 弾と申す・・・うむ、これ以上は今セリフが思い付かぬ」
「良いよ麗沢君。僕は名を聞いただけだからね、まぁ僕から君に今何か言うのならば、君の奇想天外な動きにはとても期待してるよ。さてと・・・それより本題、君の名前なんて言うの?」
「わ、わたくしは 『レイラ』です 神和住 零羅・・・」
零羅・・・思いの外最近な名前だ、けど神和住・・・どっかで聞いたことあるような。なんだったかな・・・
「零羅さんね、よろしく。さてと零羅さん、君に一つだけ忠告しておく・・・この世に人が存在する限り平和なんて来ない、善の心で人を救っても、人はその分、いや倍以上に悪が膨れ上がってしまう。君が守りたい平和は何なのか、もう一度聞いてみて、自分の心にさ・・・そして答えはその先に見えて来る筈だよ」
「それは、どう言う・・・」
「君は戦う意志が無いみたいだから、ちょっと後押ししたくて。僕と戦ってくれないと僕がつまらないじゃない。それに、僕の見立てでは君が一番誰よりも強い。下手したら、グレイシアを軽く変えるほどにね・・・」
零羅ちゃんが、ここの誰よりも強い?全然分からない・・・確かに俺は弱いけど、零羅ちゃんにはまさか三上みたいなチート持ってんのか?
俺は零羅ちゃんを見たけど、涙目で必死に三上に戦いをやめて欲しいと訴えてるようにしか見えない。
「それじゃね」
三上はいなくなった。後を追って軍の奴らも撤退していく、ワンコの死体もいつのまにか消えていた。
一件落着。なんて言えないか、こんな状況じゃ・・・これから、どうしよう・・・
「は、はれ?」
俺はペタンと座り込んだ、また腰が抜けたみたいだ・・・
「何とかなった・・・と呼ぶには」
「ね、むしろ悪化したの方がいいかしらね」
サムさんとシィズさんが口々に言った。悪化した、そう事態は俺の思ってたよりも悪い方は転がってる。
「でござるなぁ、拙者もあの者を思い返すだけで胸焼けが、流石にもう今は何か食べる気分になれぬでござる・・・と、いうより・・・ここの近くに厠はござらぬか?うぷす・・・」
そりゃ、唐揚げ山盛り食べてその後にピザワンホール食べてからあんなでんぐり返しの連続してやったら、胃が洗濯機みたいになって戻って来るわな。
それプラス人の体に穴が開くグロ展開だ。普段のこいつなら耐性はあるだろうが、生だしな。
「あ、あのお手洗いなら そこの公園にあるみたい・・・ですけど」
零羅ちゃんが教えてくれた。公衆トイレがある。
「あ、サンキューッス零羅ちゃん。ほら麗沢、歩けるか?」
「うむ、かたじけないでござる先輩・・・」
俺は麗沢をトイレへと連れていった。
「あ、私も手伝うわ」
そしてシィズさんが俺と一緒に麗沢をトイレまで案内した。そう言えばシィズさんは救急隊所属だったっけ、連れていったのは良いものの麗沢の手当てをシィズさんはさささーっとやってくれるものだから俺はやる事無くなった。
そして俺は先にトイレから出てきた。
『ゔぉぉろろろろらろろ・・・ふひぃー・・・・』
「はーい、よしよし。全部出しちゃっていいわよー」
中から麗沢が麗沢を出してる音が聞こえて来る。そしてそれを介抱してるシィズさんの声だ。俺はもうちょっと離れようと思ったけど、トイレの入り口で零羅ちゃんがトイレの中を覗き込んでいた。
「あの、あの方は看護師さんなんですか?」
そして零羅ちゃんは俺にそんな質問をしてきた。
「え?いや、救急隊とは言ってたけど一応看護師免許はあったりするもんなのかな?すまん、俺もよく分かんないッス。けど、それがどうかしたんスか?」
「い、いえ・・・大変そうだなと思いまして、わたくしも将来はあんな風になりたいな、なんて思ったりしてました」
思ったりしてたって・・・なんか変な言い方。
「確かに、凄いッスよね看護師の仕事って今考えるとさ。仕事きつそうだし、麗沢のアレの処理も、年寄りなんかは他のも色々面倒見なきゃならねぇんだろ?俺には多分いや絶対に出来ない仕事ッスよ」
「けど、凄くやりがいはありそうです。傷ついてる人たちがいつか、みんな笑顔になれる仕事を・・・」
立派だなぁ・・・俺なんて将来の夢なんか無いからな、ただある程度金稼いで適当に遊べる事が出来れば十分だよ。にしても、将来か・・・俺これからどうなるんだろ。
そもそも三上、ありゃなんだ?なんであいつだけあーも特別なんだ?あんな胸に大穴開けてピンピンしてるなんて、チートにも程があるだろ。俺あんな事してみろ?死ぬ自信しかない。
「覚醒・・・」
「わぁっ!?」
「きゃっ!?」
俺と零羅ちゃんの間に突然グレイシアさんが割って入ってきた。
「な、何なんスか!?急に!!てか、助けて下さいよ!!」
「ごめん、君たちの実力見てたら、入りそびれたから・・・」
確かにグレイシアさん、なんかじっと俺たちを見てたしな。
「てか、覚醒って何なんスか?」
「レイの強さの原因。昔、ゼロとの戦いでレイは覚醒した。その覚醒が、今の君たちとの差を広げてるみたいだから」
覚醒・・・パワーアップした的な感じなのか?それだからあの強さ、なら俺たちはそれをしなくちゃあいつには勝てない。
「知ってるのなら、教えてくれないッスか?その覚醒って方法を」
俺はグレイシアさんにお願いした。
「ごめん、その方法が分からない。礼は教えてくれなかったから」
グレイシアさんにも教えてなかったのか。けど、その覚醒って方法があるって知れただけで少しだけ心が軽くなったかな?
「・・・と、言う事はゼロ暗殺任務を調べれば何か分かるかも知れないな。覚醒なんてのは私は聞いた事が無い。ならば、それを踏まえて二十年前のあの戦いをもう一度調べ直そう」
サムさんが立ち上がる。
「そうね、よし!なら一旦アジトに帰るとするわよ!そして特訓再開ね!!何としてもその覚醒ってやり方を見つけるわっ!!とりあえずレイラちゃん、私たちと一緒に来てくれる?」
そしてシィズさんも元気になった。
「はい、付いて行くしかありません」
なんかこの子、ちょっと言葉のキャッチボール下手?




