リメイク第二章 三人目は争いを嫌う優しき少女
「ワンコ隊長が、やられた・・・」
周囲の奴らから少しずつどよめきが起こり始めた。
「あの二人・・・本当は強いのか?」
「だって陛下の武器も・・・」
この感じ、これチャンスじゃね?
「おら見たかっ!!これが俺の後輩の実力ッス!!舐めんなよ!!今なら見逃してやるから!さっさとこのワンコ連れてどっか行け!!」
「ぐっ!!」
お、適当な煽りだけど効いた・・・
「くそっ!!隊長がなんだってんだ!!数は依然我らの方が多いんだ!!一斉にかかるぞ!!」
やべ、やっぱダメか?でも、なんとなくだが俺でも分かる。今のへっぴり腰のこいつらなら俺たちで力を合わせれば勝てそうだ。だってサムさんとグレイシアさんこっちにいるし、負ける要素が無い。
けど、流石に俺もなんとかしなきゃな。
「なぁ麗沢、これこいつら全員倒したら好きなものたらふく食えるって言ったらどうするッスか?」
「お?それは愚問でござるな。そんな提案乗らぬ訳が無いであろう!!さー!覚悟せい者ども!!ひょひょひょひょぉぉぉぅっ!!」
うん、そもそもこんな奇声を上げる奴の相手するのは怖いよな。でも、さっきのギャグみたいな攻撃相当トラウマになってるのか?みんなガタガタだぞ?
「さぁ、行くでござる!!」
「や、やめてください!!!」
「お?」
「あ、ん、わ?わぁっ!ぎゃぁぁぁぁっ!!」
『パカーンッ!!!』
突然の大声に麗沢はまた躓いてボールみたいに転がっていった。そして兵士たちはボウリングのピンのように飛んでいった。
「おう、のう・・・」
「ギャ、ギャフン・・・」
ギャフンて・・・生で聞いたわ。そんな断末魔上げる奴いるんだな・・・
「あ、す、すみません・・・あの、わたくし」
そう言えば麗沢を止めた奴は誰だ?
すると俺の後ろから誰かが走って来た、その子はぶっ倒れてる麗沢たちの元へ走って行った。
「女の子?」
「みなさん、あの、大丈夫ですか?」
「お?いえーす。失敬失敬、拙者とした事が・・・」
女の子は麗沢へ手を差し出してる。その子は二つ結びした長めの黒髪を肩から下ろし、やたら上質なワンピースを着ていた。どう見てもお淑やかなお嬢様感がある女の子だ。
「ならもうやめてください、こんな戦い・・・誰も得しません。こうなってしまった原因がわたくしにあると言うのなら謝ります!わたくしはどうなっても構いませんから、お願いですからこんな殺し合いはやめて下さい!!」
小学四年生ぐらいか?そんな子が涙ながらに訴えている。ここにいる奴らは敵とは言え流石に人の心を持ってない三上の様な奴じゃない。そのせいかその子の訴えにみんなどうしたものかと考えている。
小学生か、俺以上に高難易度なパターンにされちまったみたいだな。しかも俺と違って知り合いはこの世界にいないし、まだこの世界の事を聞かされていないみたいだ。同情するよ・・・
しばらく沈黙の時間が流れた。けど、それを割って入る声が聞こえた。
「おーいワンちゃんいる?とりあえずここでの用事が終わったから帰ろ・・・かな?って・・・思ったんだけども、これ何?どう言う状況?」
何でこんなタイミングでお前が来るんだ・・・俺が頭の中で奴を思い出したせいか?
「三上 礼・・・」
「あれ?確か桜蘭君だったね、昨日ぶり」
ボロボロになった丈の合わないロングコートと、腰に刺してる白い刀身の剣。そしていつもニコニコ笑って感じだけど、じっと心の奥底を見抜いてくるあの目・・・
「っ・・・」
「そんなに警戒しなくても・・・どうやら一悶着あったらしいね。おーい、ワンちゃーん大丈夫?」
三上はワンコをぺしぺしと叩いてる。
「んはっ!?空からケツがっ!?あ、あれ?陛下?」
ワンコが跳ね起きた、麗沢の悪夢でも見てたのか?
「うん、おはよう。でも君がやられるなんてね、何があったの?」
「サムたちによる反乱です陛下!!サムは三名の異世界の人間を見つけ、陛下に反旗を翻す組織への入隊を強制していた模様!」
ワンコはキリッと敬礼して三上に報告してる。
「あ、そっちはいいの。君はどうしてたの?」
「我、ですか?我はその反逆者を倒そうと・・・しかし、敵の抵抗は思いの外強く・・・」
「あぁ、流石の君でもあの子ら相手ではきつかったみたいだね。ワンちゃん、そんなに気に病まなくていいよ。君は僕の為に動いてくれた、それだけで十分だ。死ななくてほんと良かったよ」
ワンコ、すんげえ嬉しそうな顔してるなぁ・・・
「はっ!!しかし、奴らをこのまま見逃す事は出来ません!!レイサワだったか?我ともう一度勝負をしろ!!次はもう貴様の動きに惑わされはしない!!」
ワンコの奴、目がギラギラしてる。本当に忠誠誓ってんのかよ。この得体の知れない奴に・・・
「お?別に構わぬでござるー」
麗沢はまだ飄々と前に出るが、またさっきの幸運が続くとは思えない。今度こそやられるぞ?
ワンコはまた拳を構えた。
「いや、もう戦う必要なんてないよ・・・」
「は?」
「へ?」
「なっ!」
「っっ・・・」
みんなこの急激な状態の変化についていけなかった。
「へ、陛下・・・?」
ワンコが急に力のない声で三上を呼ぶ。そしてワンコの口から大量の血が溢れた。こうなってようやく何が起きたのか理解出来た。三上はワンコの心臓を後ろから剣で突き刺したんだ。
「君の忠誠心は本当に素晴らしかったよ。でも、気がつかなかったのはいただけないな、君なら僕の考えを汲んでこの『反逆者たち』は僕があえて見逃してるって気がついて欲しかったな。だって気になるじゃない、この烏合の衆がこの僕にどんな作戦をぶつけてくるのか、すごく面白そうじゃない。
それに、三人の異世界の人間と僕を裏切ったグレイシア、彼らはこんな駒をも手に入れてる、これからが面白くなるのに君はその僕の楽しみを潰そうとしちゃった。僕は僕の思い通りにならないと凄くムカつくんだ。だからもう死んでいいよ?ワンちゃん」
「へい・・・か・・・」
三上は剣を引き抜き、血を拭って収めた。
「逝ってらっしゃい、ワンちゃん・・・」
俺は今、逆に三上の顔をじっと見てた。変わらねぇ・・・人を一人殺したのに、自分を慕ってくれた存在がいなくなったのに、こいつ・・・顔色一つ変えやがらねぇ。
許さねぇ・・・いつまでそのヘラヘラした笑いをしてるつもりだ?俺が、俺が必ず!!
「この・・・クズ野郎っ!!」
「ん?」
俺は手に持っていた銃を鈍器のように三上へ殴りつけた。
「あぁ、それ君が持ってたのか・・・グレイシアがくれたの?」
三上は俺の攻撃を受け止め、俺の顔をじっと睨む。
「くっ・・・てめぇ、その顔はなんなんだ!!今、人殺しておいてその顔はなんなんスかっ!!テメェには殺すって意味がどうなのか理解出来てねーみたいッスね!!」
「あぁ、今の事・・・別に君が気にする事じゃないじゃない、もう終わった事だ。で、死ぬ事、殺す事はどんなのかなら理解してるよ?その生命が終わりを迎える事でしょ?」
「それを終わらせて良いだなんて誰が決めた!?」
「誰も決めてないよ、強いて言うなら僕が決めた。支配者たる僕はこの世界の存在の命を自由に選択出来るんだよ。
君こそ考えてみて、殺してはいけない理由は何?法律?それは人間ごときが勝手に決めたくだらないルールブックだよ。人間はそれがなきゃ勝手に自滅するから人間が人間を支配する為にそんなのが生まれたんだ。けど、そのルールから外れた僕ならどうだ?僕はあらゆる存在の上を行く支配者、だから僕が決めるのさ」
こいつ・・・こいつは何を言ってるんだ?自分は人間の上を行く?
「テメェは、神様か何かにでもなったつもりなんスか!?」
「神様なんて言わないさ、僕にも限界がある。だから殺さなくちゃいけないんだよ」
「テメェは・・・テメェには人を殺す事に、生き物を殺す事になんなも感じないんスか?」
「そうだね、可哀想にとは思うよ。でも君こそ思わない?人間ごときが蔓延る事にムカつかない?全ての魔法を扱えるのは僕だ、僕はこの世界の全てを超越してる。君たちさえも超えてね、それに桜蘭君、相手に物事を問う時は同じ質問を何回もしない事だよ・・・君が聞きたい事への問いは、僕は支配者でありこの世界のあらゆる事を決める権利がある、命もまた然りだ。それを何度も何度も言い方を変えて答えてるだけだ。じゃ次に僕から質問しようかな?僕だけが答えたら不公平だ。けど、相手は桜蘭君にじゃない。君に聞くよ・・・」
三上は女の子の方を見た。
「え・・・」
「くそ!!させるかっ!!」
あの子に三上のヤバさを味合わせる訳にはいかねぇ!!俺は全力で三上を止めにかかったが・・・
「がはっ!!」
俺は何もしてないのに吹っ飛ばされた。何が起きた、何も見えなかった。三上の速さが速すぎて目で追えきれなかったのか?
「先輩っ!?何者でござるかこの男!!拙者は気分次第で何でもかんでも殺すお主の様な輩とはやはり食事は出来ぬなっ!!」
「そう、僕はいつでも歓迎だけどね。けど、僕と一緒にご飯食べたいなら僕に付いて来れなくちゃ・・・ほらこうやって宙をまう事になる」
まただ、三上も何もしてない・・・なのに、攻撃は弾かれ吹っ飛ばされる。
「ならば私から問おう!!私にはサクラ君の気持ちがよく分かる!なのに何故お前は理解が出来なくなった!?何故人を殺すのにそんな笑って出来る!?」
「サムさん・・・あのね、僕はこの子に質問をしようとしてるの。邪魔しないでくれるかな・・・はぁ。ま、答えるなら答えは単純、誰だって勝利する瞬間は嬉しいでしょ?嬉しくて思わず笑っちゃうこともあるでしょ?それだよ。さて、そろそろやかましいからちょっと離れててもらおうかな?」
「なっ!?」
「はっ!?」
「ひょぉっ!?」
俺たちは全員、更に同時にあちこちは吹っ飛ばされた。マジでどうなってんだ?近づく事もできないなんて・・・
そして三上は女の子の前でしゃがんで視線を合わせた。
「ねぇ、君は平和が好き?」
質問は、そんな事を聞こうとしていたのか?お前のせいで平和を奪ったあいつが、その質問をするのか?、
「僕は好きだよ、平和って良いよね・・・」
三上は女の子へ質問をぶつけた。




