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【書籍化決定】コミュ障の天才魔法使いは、王都の片隅でのんびりお店経営はじめます~魔法学園主席の少女は実力を隠して静かに暮らしたい~(旧タイトル:厭世の魔法人形屋)  作者: 八星 こはく
第四章 フィーネ・フェルナーへの依頼

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80/80

第80話 ようこそ、魔法人形屋『ルクス』へ

「フィーネ! 手紙が届いたわよ、リドワーン様から!」

「……またか……」


 ユーリアから渡された赤い封筒を受け取る。彼からの手紙はいつもこの封筒で届くのだ。


 フィーネが近衛隊付き監察官になって二カ月。

 既に二回ほど仕事を任されたが、監査官という名の便利屋のような仕事だった。


(人手の足りてないところの監査を命じて、ついでに魔物討伐を手伝わせるんだもん。人使いが荒いっていうか、なんていうか……)


 届いたばかりの封筒を開ける。命令文は常にシンプルだ。


『一週間後、魔法軍のモントズィール地方調査に同行し、その様子を報告するように』


 アレクサンダーの意向を受け、最近の魔法軍は調査業務を始めた。

 救援依頼を受ける前に、魔物の存在を調査する仕事だ。

 リヨン王国とも連携を取り、魔物用の薬物についても研究を進める方針だという。


 だが、上からの命令があっても、真面目に働く人間ばかりではないのが今の魔法軍だ。

 そこで、彼らを監査するためにフィーネが派遣されるのである。


(……で、魔物がいたら私が倒すことになるんだよね、ほとんど……)


 フィーネに課された仕事は魔法軍の仕事ぶりを国王へ報告することだ。

 だが、目の前に魔物が現れれば加勢するしかなくなる。


「モントズィール地方ね……観光できるようなところあったかしら?」

「ユーリア、遊びに行くわけじゃないんだよ」

「ついでに遊んだっていいじゃない。お金はたっぷりもらえるんだから」

「……それはそうだけど」


 経費として任務にかかった費用をもらえる他、仕事をこなすたびに給料が支払われる。

 最初に給料をもらった時は、あまりの高さに間違っているのではないかと確認してしまった。


「そうだ。さっき孤児院に言ったら、嬉しいニュースを聞いたの」

「嬉しいニュース?」

「国王陛下の命令で、国中の孤児院に役人が派遣されるらしいわ。文武両部門の人事担当役員が各地を回って、優秀な人材がいないかを確認するらしいの。もしそこで才能が認められたら、国費で教育を受けられるそうよ」


 現状、予算に差はあるものの、孤児院では満足な教育を受けることができない。

 魔法軍を除いた役人登用試験は身分問わず受験可能だが、孤児院出身者が合格することは稀だ。


(陛下は、才能があれば教育を受けられる仕組みを作ろうとしてるんだよね……)


 その一環として、孤児院へ役人を派遣することを決めたのだろう。

 小さな一歩かもしれないが、誰かの人生を変える一歩かもしれない。


「ちょっとずつだけど、世界がよくなっていってる。そんな気がするの」


 ユーリアが幸せそうに笑った。


(陛下の下で頑張ることが、私達の夢を叶える方法なのかも)


 そう考えると、便利屋のような仕事にも文句は言えない。


「……次の任務も、ちゃんと頑張るよ」

「ええ! あっ、フィーネ、お客さんよ!」


 チリンッ、と入口のベルが鳴って、店の中に若い女性が入ってきた。

 三つ編みにした茶色の髪はぼさぼさで、食事がとれていないのか顔色も悪い。

 目が合うと、彼女は勢いよく土下座した。


「お願いします‼ どうか、どうか……お嬢様を、生き返らせてください……」


 彼女の瞳からこぼれた涙が床を濡らす。床についた手が震えていた。

 魔法人形屋の仕事にも慣れてきた。けれど、同じお客さんは一人として存在しない。


(大切な人がいて、もう一度だけでも会いたくて……『別れ』なんて辛いのに、それをやり直すために、ここにきてるんだ)


 今だって、初対面の人と話すのは得意じゃない。

 けれど、前のように対応をユーリアに丸投げしたいとは思わない。


(だって私が、ルクスの店主なんだから)


 軽く深呼吸をして、そっと三つ編みの女性の肩に手を置く。

 ゆっくりと顔を上げた彼女を見て、フィーネはぎこちない微笑みを浮かべた。


「ようこそ、魔法人形屋『ルクス』へ」





 ――魔法人形屋『ルクス』

 ここは、大切な人との別れをやり直すための店だ。


最後までお読みくださり、ありがとうございました!

楽しんでくださった方は、の☆マークから評価して応援していただけたら嬉しいです!


また、本作の書籍版が10月23日(金)にグラストNOVELS様より発売します!

たっぷり加筆修正しておりますし、素敵なイラストもついているので、手にとっていただけたらとっても嬉しいです!

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