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【書籍化決定】コミュ障の天才魔法使いは、王都の片隅でのんびりお店経営はじめます~魔法学園主席の少女は実力を隠して静かに暮らしたい~(旧タイトル:厭世の魔法人形屋)  作者: 八星 こはく
第四章 フィーネ・フェルナーへの依頼

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第67話 魔力の無駄遣い

「鏡で見た情報によると、この森には土属性の魔物が多く棲息してるんだよね」

「らしいけど、私、土属性の魔物って好きじゃないのよね。気持ち悪いのが多いし……」

「そうかな。私はあんまり気にならないけど」


 ユーリアと話しながら森へ入る。

 魔物をおびき寄せるために風魔法で何本かの木を揺らした。魔物は魔力につられて出てくることが多いのだ。


 案の定、がさごそっ……と葉の間から大量のドルンワームが出てきた。

 通常のワームより少し大きく、全身に棘を持つ魔物である。


「ぎゃあああああああっ‼ ふぃ、フィーネ、いやっ、は、早くどうにかしてっ‼」

「ゆ、ユーリア落ち着いてよ、ドルンワームはほとんど害がない低級の魔物だし……」

「そういう問題じゃないってば! とっ、とにかく早くっ‼ いやああああああっ!」


 ユーリアがひたすら叫ぶ。フィーネにはよく分からないが、ユーリアはドルンワームの見た目が気持ち悪くて苦手なのだ。


(昔からユーリア、昆虫系の魔物はすごく嫌ってたよね)


 ドルンワームは特に知能もなく、昆虫とほとんど変わらない。

 だが、放っておけばドルンワームを餌とする上級の魔物が集まってくるかもしれない。


「分かった、とにかくさっさと片付けるね」


 低級の魔物を一気に片付けるなら、光属性魔法の雨を降らせるのが最も早い。

 コンラートとの戦いでも使った魔法だ。

 素早く魔法陣を描き、魔法を発動する。

 光り輝く雨粒が触れると、ドルンワームは呻きながら消滅していった。


「ユーリア、消えたよ」

「消える姿も気持ち悪い……」

「そ、それはさすがに可哀想なんじゃないかな……」


 ドルンワームは駆除したが、確かこの森には一匹、巨大なギフトシュイターがいる。

 ギフトシュイターは巨大なクワガタのような見た目をしており、体液が毒を持つ少々厄介な魔物だ。


「……なんで私達がここの担当になったのよ……」

「そ、それはまあ、じゃんけんで決まったことだし……」


 ユーリアを宥めつつ奥へ奥へと進む。すると、頭上からいきなり薔薇が降ってきた。


「なっ、なに……⁉」


 甘い香りと共に地上に降りたってきたのはエドガーである。

 彼の周りには、比喩的表現ではなく物理的に薔薇が舞い続けていた。


(え、これ魔法? 魔法でわざわざ浮かせてるの?)


 確か彼は、東にある川へ向かったはずだ。

 魔物が少ない場所だったとはいえ、もう駆除を終えたのだろうか。


「悲鳴が聞こえたから急いできたが、何かあったのか?」


 喋り出しても、まだ彼の周りを薔薇が舞っている。


「えっ、えーっと、ユーリアがドルンワームが気持ち悪いって騒いだだけで……あっ、でも、ドルンワームは全部もう倒しました。光属性の魔法で一斉に駆除したので……」

「一斉に? 森全域をか?」

「あ、はい。その、ドルンワームは弱いので、広範囲攻撃で全滅させられますし……」

「ノエルも言っていたが、お前、かなり魔力量があるな」

「いっ、いえその、あ、あはは……」


 褒められた時の適切な反応が分からず、ぎこちない笑みを浮かべると、呆れたようにユーリアが溜息を吐いた。

 そして、フィーネが聞きたかったことを代わりに聞いてくれる。


「どうして、エドガーさんの周りに薔薇が舞っているんですか?」

「ああ、これか」


 エドガーが腕を動かすと、赤い薔薇も腕に沿った舞い方をする。

 彼はわざとらしく髪をかきあげ、麗しい微笑みを浮かべて胸を張った。


「美しいだろう?」

「えっ、あっ、そ、そうですね……?」


 珍しいことにユーリアが混乱している。

 だが、フィーネとしては気になって仕方ない。普段なら流すところだが、つい自分でも質問をしてしまう。


「あ、えっと……その薔薇に結界効果があるとか、あるいは隠密効果があるとか……?」

「ないぞ。通常の薔薇より匂いは濃いから逆に目立つだろうな」

「……あ、あの、じゃあ……何の為の魔法、なんですか?」

「美しく戦う為だ」

「な、なるほど……」


(どうしよう。答えてくれたけど全然分かんない……‼)


 じっと観察すると、どうやら薔薇は本物の薔薇ではなく、創造魔法で生み出した薔薇のようだ。

 しかもその薔薇を風魔法で常に浮かせている。


(どう考えても魔力の無駄遣いだよね……?)


 彼なりのこだわりがあるのだろうが、フィーネには理解し難い。


「よし、行くぞ。ギフトシュイターの討伐を手伝ってやる」

「あ、ありがとうございます……」


 彼の後ろを歩く。時折、空中を舞う薔薇がフィーネの顔にあたって、かなり邪魔だった。



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