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【書籍化決定】コミュ障の天才魔法使いは、王都の片隅でのんびりお店経営はじめます~魔法学園主席の少女は実力を隠して静かに暮らしたい~(旧タイトル:厭世の魔法人形屋)  作者: 八星 こはく
第四章 フィーネ・フェルナーへの依頼

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第63話 独立都市・モンドへ

 ブルクハルトから依頼を受けた一週間後、フィーネ達はモンド地方行の馬車に乗っていた。

 二国の中央に位置するモンドは商業都市として栄えており、観光客も多い賑やかな場所だ。


(……気が重いな)


 依頼を受けたことに後悔はない。

 けれど、逃げたはずの場所に再び向かっているような気がして、どうしても身体が重くなってしまう。


「フィーネ、顔色が悪いわよ」

「……大丈夫。ちょっと寝れば治るよ」


 ユーリアの肩に頭を預け、そっと目を閉じる。

 眠ろうとすればするほど、思考が活発になって眠れない。


 今回の仕事は各国二人ずつで調査団を結成するもので、ユーリアはその数に入っていない。

 そもそも彼女は人間ではないため、フィーネの魔法具扱いとなるのだ。


(ブルクハルトさんは私のこと、どう思ってるのかな……)


 彼は今まで、戦場で何人もの仲間を喪ったはずだ。その中には、大切な友人だっていただろう。

 それでも彼は、今もまだ魔法軍で戦い続けている。

 逃げ出した上に、親友の魔法人形を生み出したフィーネとは大違いだ。


(間違っているのは私。分かってるけど……)


 正しく生きられないのは、フィーネが弱いからだ。

 なのにどうして、神様は分不相応な力をフィーネに与えたのだろう。



◆



 目的地に到着すると、ブルクハルトに迎えられた。

 仕事前に市長と話しておく必要があったらしく、ブルクハルトは一日早くきていたのだ。


「リヨン王国の人達とは、夕方に合流するんですよね?」

「ああ」

「そ、その、どんな人とかって、分かったりします……?」

「肩書と経歴くらいはな。実際に会うのは俺も初めてなんだ」


 そう前置きしつつ、ブルクハルトはリヨン王国からくる二人のことを説明してくれた。


 一人目はエドガー・ジャンメール。

 ジャンメール侯爵家の長男であり、リヨン王国の魔法騎士隊に所属している男だという。


 ローゼリア王国と異なり、リヨン王国には魔法軍ではなく魔法騎士隊というものが存在する。

 魔法騎士隊は魔法を使える貴族達で結成された部隊だ。

 貴族にとっては魔法騎士隊へ入隊することは栄誉あることで、当主も魔法騎士として戦場へ赴くことがあるのだという。


 二人目はノエル・ルイス。

 ルイス家といえば、ローゼリア王国でも有名な魔法研究家の家系だ。

 世間に流通している魔道具のうち、大半がルイス家による発明で生み出されたものである。


(私、そんな凄い人達と一緒に仕事することになっちゃったの……っ⁉)


 コミュニケーションに自信がない分魔法で貢献しようと思っていたのに、この面子ではフィーネにできることはゼロかもしれない。


「詳しい人柄は知らないが、国を代表しての仕事に選ばれるような二人だ。サボるようなことはないだろう」


 フィーネを安心させるようにブルクハルトが微笑む。


(もしかしてブルクハルトさん、私が働きやすい環境を用意してくれたのかな……?)


 少人数で、しかもフィーネを除いて精鋭ばかりの集まり。

 この状況なら、フィーネだけが仕事を押しつけられることは絶対にないだろうし、周囲が頑張ってくれないことに辛くなることもないだろう。


「……ありがとうございます、ブルクハルトさん」


 気にするな、と少し照れたように呟いて、ブルクハルトは乱暴にフィーネの頭を撫でた。



◆



「そろそろ時間だな」


 夕方まで都市を観光した後、フィーネ達は待ち合わせ場所に指定された噴水広場へ向かった。


「……見た目が分からないから、無事に合流できるかが少し気がかりだが……」

「教官。たぶんですけど、あの人達じゃないですか?」


 ユーリアが指差したのは、二頭立てのやたらと派手な馬車だった。

 しかも馬車を引くのは立派な白馬である。

 開いた馬車の扉から、ちょうど二人の男が出てくるところだった。


「うっ……‼」


 思わずフィーネが声を漏らしてしまったのは、あまりにも特徴的な風貌に驚いた……言葉を選ばずに言えば、ドン引きしてしまったからである。


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