第41話 君のような
「やり過ぎだぞ、フィーネ」
決闘終了後。逃げるようにアンドレアが立ち去ると、ブルクハルトにそう言われた。
彼の視線の先にあるのは、フィーネがぐちゃぐちゃにした校庭である。
「すっ、すいません……すぐに直しますから」
「ああ。頼む」
慌てて魔法陣を地面に描く。
元通りに土を移動させるだけだから、使うのは土属性の基礎魔法だ。
といってもかなり広範囲の地面をぐちゃぐちゃにしてしまったせいで、かなりの魔力量を消費するはめにはなるが。
「フィーネ、お疲れ!」
駆け寄ってきたユーリアが、ブルクハルトに慌てて頭を下げる。
ブルクハルトは生徒達の間では鬼教官と恐れられているのだ。
「あ、あの、先生! フィーネは確かにちょっとやり過ぎだしみんな怯えてましたけど、元々喧嘩を売ってきたのはアンドレアの方なんです! 他にも、フィーネが優秀だからって嫉妬する人が多くて……だから、フィーネは悪くありません!」
「ユーリア、その、その話は……!」
「どうして⁉」
「しっ、心配させたくない、から……」
なんて、ブルクハルトの前で言っても遅い。
あ……と口を開けて固まったユーリアが、ごめんなさい‼ と頭を下げる。
「う、ううん。ユーリアに悪気がないのは分かってるから」
「でも考えが浅かったのは確かよ。ごめんなさい、フィーネ」
「ううん。ユーリアが私のことを心配して言ってくれたって分かってるから」
「いやでも、私のせいで……」
私が、いや私が、と交互に繰り返している二人を見つめていたブルクハルトが、耐えかねたように笑った。
彼を見てユーリアが目を丸くする。
(学校じゃ全然笑わないもんなあ、ブルクハルトさん)
家でも表情豊かというわけではないが、笑わないわけじゃない。
(でも最初は私も、ブルクハルトさんの笑顔を見たら驚いてたな)
当時を懐かしく振り返っていると、いきなりブルクハルトに頭を撫でられた。
大きな手のひらと、少し強過ぎる力。
「……ブルクハルトさん?」
頭を撫でられるなんて、ずいぶんと久しぶりだ。
「よくやった。派手過ぎるところはあったが、動きはよかったし、土人形を五体同時に操作できるようになったのは成長だ」
「……はい」
ブルクハルトに褒められると、嬉しくて、照れ臭くて胸がいっぱいになる。
魔法の訓練は別に好きではなかったけれど、こうして褒められるのはずっと好きだった。
「フィーネが自分から決闘を申し込むようなタイプじゃないことも分かっている。が、売られた喧嘩を買うタイプだということも知っている」
「……はい」
「きょ、教官! 今回、フィーネは教官のことで煽られて、だから……!」
フィーネが叱られてしまうと思ったのだろう。
慌てて口を挟んだユーリアを見て、ブルクハルトは優しく笑った。
「――だから、君のような友達ができてよかった」
「……え?」
「フィーネ。友人は大事にするように。それと、もしこれ以上人間関係でトラブルがあるようなら報告しろ」
もう一度、ブルクハルトは乱暴にフィーネの頭を撫でた。




