第39話 決闘、始め!
「はあ、やっと終わったわね……!」
ユーリアが満足して呟いた頃には、既に朝日が見え始めていた。
物が多すぎてほとんど見えなかった床はしっかり見えるようになったし、台所はピカピカに磨かれた。
あちこちに散乱していた衣類も丁寧に洗濯し、明らかに賞味期限の切れた食材も処分した。
「すごい、この部屋ってこんなに綺麗になるんだ……」
「なるわよ」
「ありがとう、ユーリア」
「……貴女って本当、家事は苦手なのね」
呆れたように笑ったユーリアの顔がとても優しくて照れてしまう。
彼女の言葉には、不出来なフィーネを責めるような意図は一切なかった。
(私、ほとんどなにも手伝えなかったのにな)
雑巾がけをすれば力が強すぎて床を破壊しかけたり、食器洗いをすれば勢いあまって食器を割ってしまったり、フィーネはほとんど役に立たなかった。
後半は、掃除に必要な清潔な水を水魔法でバケツに出し続けただけである。
「ふわあ……ちょっと寝るわ。貴女もちゃんと寝るのよ」
ユーリアがベッドに倒れ込む。フィーネも横で眠れるように、ぎゅっと身体を丸めてくれた。
(私も疲れてるけど、朝ご飯の準備をしようかな)
掃除はユーリアがほとんどしてくれたから、彼女のことは限界まで寝かせてあげたい。
フィーネは二、三日くらいなら徹夜をしても問題ないし、朝食の用意をしておいてあげよう。
(元気が出るように、牛肉を使ってあげよう。魚も野菜もちゃんと入れて、調味料もたくさん使って……)
頭の中でレシピを考えながらキッチンへ移動する。
せっかくユーリアが綺麗にしてくれたのだから、極力汚さないように使わなくては。
(ユーリア、喜んでくれるといいな)
誰かのために食事を用意するのは初めてだ。自信があるわけじゃないけれど、喜んでもらえたら嬉しい。
――そう思いながらフィーネが作った朝食は、ユーリアに『家畜の餌』と称されてしまうわけだが、それはまた、別の話である。
◆
決闘当日。校庭には、全校生徒に近い人数が集まっていた。
ペンダントの所有者同士、しかも入学したばかりの一年生が戦うということで、注目が集まったのだろう。
フィーネとしては期待通りとも言えるが、さすがに人数が多すぎて緊張する。
真正面に立つのはアンドレア。
情熱的な赤毛をポニーテールにし、ペンダントを見せつけるように立っている。いつもの制服姿ではなく、運動に備えて体操着だ。
そして決闘の見守り役としてやってきたのはブルクハルトである。
(アンドレアさんと決闘することになったって言ったら、何事かって驚かれちゃったな)
同級生達に嫌がらせをされていて、と言うわけにもいかず、実戦的な訓練がしたくて、ととっさに嘘をついたがバレているかもしれない。
「開始前に改めてルールを確認する。制限時間は一時間。時間が経過するか、どちらかが降参するか、危険だと俺が判断したら終わりだ」
決闘のルールは単純である。魔法は使い放題な上に魔法以外の攻撃も認められているが、杖以外の武器の使用は禁止だ。
「決闘、始め‼」
ブルクハルトが勢いよく手を下ろした。




