第24話(コンラート視点)知らない戦い方
『とにかく好きなように動いてください。動きに合わせて、魔法が発動するようにするので』
小柄な魔法人形屋はそう言っていた。
死者を復活させる、というとんでもない魔法を使った少女の言葉だ。信じるしかない。
村の入り口から少し離れた場所で、魔物の大群がやってくるのを待ち構える。
これほど大量の魔物と戦ったことは一度もない。
不安はあるし、緊張もしている。けれど怯えがないのは一度死んでいるからだろうか。それとも、頼りになる魔法人形屋が傍にいるからだろうか。
(どっちでもいい。とにかく今は、目の前の敵に集中しねえと)
気合を込めて、コンラートは空中で剣を力いっぱいぶん回した。
その軌道に合わせ、空中に巨大な魔法陣が生まれる。
複雑な魔法陣が、どんな魔法を生成するためのものなのかは分からない。
(好きにしていいって言ってたよな。だったら……!)
「焼き尽くせ‼」
大声で叫ぶ。
コンラートが使えたのは火属性の基本魔法だけだった。
いつも、どうにかしてもっと強い火属性の魔法を使えないものか、と考えていた。
剣に炎を纏わせて戦えば魔物に大きなダメージを与えることはできた。
だが、手が届く範囲にはどうしても限りがある。
剣を持たずとも戦える術が欲しかった。より遠くへ届く魔法を使いたかった。
全てを焼き尽くすことができれば、村を救えたはずだから。
コンラートが剣を振り下ろした瞬間、炎で構成された竜が魔法陣から現れた。
巨大な翼を持つ立派な竜は、幼い時に絵本で見た勇者が従えていた竜に似ている。
竜は空を飛び、魔物達を焼き尽くしていく。
魔物が燃える嫌な臭い、断末魔の悲鳴。
圧倒的な強者として戦うのは、こんな気分だったのか。
燃えながら逃げ惑う魔物達は、昔のコンラートなら一匹ずつ順番に相手をしなくてはならなかった相手だ。
全部倒そうとすれば、膨大な時間と体力を消費しただろう。
炎の竜は低級の魔物のほとんどを焼き尽くした後、コカトリスにぶつかって消えた。
コカトリスは火属性の魔物だ。炎属性の魔法は基本的に効かない。
(まだコカトリス以外の魔物も残ってる。どっちの対処からするべきなんだ?)
悩んでいると、近くに控えていたフィーネがコンラートの耳元で囁いた。
「あの首、落としてください」
顔色一つ変えずにそう言いながら、彼女は近くまで迫ってきた羊型の魔物を蹴った。その瞬間、勢いよく飛んだ魔物が空中で爆発する。
「ちょっとフィーネ! サポートは私に任せてって言ったじゃない‼」
他の魔物の相手をしていたユーリアが駆け寄ってくる。
彼女はフィーネに対して不満を叫びながら、右手に持った大剣を振り回して次々と魔物の首を落としていく。
その姿は、華奢な見た目からは想像がつかないほど雄々しい。
(助手も強いのか……!)
二人だけではない。魔法軍から派遣されてきたというビアンカの結界魔法はかなりの精度で、畑や村に魔物が侵入するのを完璧に防いでいる。
コンラートが知っている戦いとはまるで違う。
そしてあの時代、魔王討伐を命じられた勇者一行は、彼女達のような戦い方をしていたのだろう。
魔王を倒した本物の勇者を見たことはない。
だが、あらゆる属性の魔法を使いこなし、なおかつ天才的な剣術の腕前を持っていた、と聞いたことがある。
そんな人間がいるものかと当時は思っていたが、事実だったのかもしれない。




