↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/80

第20話 自治会

 ビアンカが剣を構える。フィーネは懐から杖を取り出し、素早く魔法陣を描いた。

 地面が盛り上がり、地中から現れたのは土でできた剣である。


「お姉ちゃん、すご……っ‼」

「ただの土属性魔法だよ」

「でも、本で読んだことある‼ なにかを作る魔法って、大変なんでしょ! 特に、剣みたいに硬いやつは、強化魔法も必要だって書いてた!」


 どうやらこの子供達は、それなりに魔法に関する知識があるらしい。


「相変わらずの腕前ね」

「……ビアンカまでやめてよ」

「むかつくけど本音よ。貴女、創造魔法が昔から上手かったじゃない」


 創造魔法とは、その名の通りなにかを創造する魔法である。魔法人形の作成も創造魔法の一種だ。


「じゃあ、行くわよ!」


 勢いよく地面を蹴り、ビアンカが飛びかかってくる。

 動きに磨きはかかっているが、戦闘スタイル自体は変わっていない。

 軽い身体を活かした速攻型。剣も軽めの物で、素早く突きを繰り出してくるのが特徴的だ。


(前よりずいぶん速くなったけど、基本の動きは変わってない)


 ビアンカは名門貴族の家に生まれ、幼い頃から家庭教師をつけて剣術を学んだのだという。

 それゆえ基礎が完璧だが、いかんせん、教科書通りの動きをしがちでもある。

 土で作った剣で一度、ビアンカの攻撃を受け止める。素早く次の突きを繰り出そうと彼女が一度身を引いたところで、地面を蹴って上に飛ぶ。


「フィーネ⁉」


 慌ててビアンカが剣を上に向けても、空中のフィーネには届かない。

 だが。


「終わりだよ、ビアンカ」


 フィーネの剣が真っ直ぐに伸び、ビアンカの剣を地面に落とした。

 ビアンカが剣を拾うよりも先に、地面に下りたって彼女の首筋に剣先を向ける。


「私の勝ちだね」

「貴女ねえ……‼ 剣の勝負でしょ⁉ 魔法使うのやめなさいよ!」

「剣だよ。ちょっと変わった剣だけど」

「それを魔法って言うの‼」


 ぎゃあぎゃあと騒ぐビアンカに背を向け、呆然とした顔でフィーネを見つめている子供達へ視線を向ける。


「もし相手が剣を使う魔物でも、相手の剣がただの剣だと思わない方がいいよ」


 今回フィーネが創造魔法で生み出した剣は、やり方次第でいくらでも加工できる。

 先程のように長さを変えることはもちろん、炎を纏わせることも、電気を纏わせることも。


「魔物との戦いはルールのある決闘じゃない。訓練とは違うから、気をつけて」


 指を鳴らすと、剣が一瞬で消えた。

 立ち去ろうとすると、待ってください! と剣術の指導をしていた青年に慌てて呼び止められた。


「ありがとうございます。その、私達では気づきにくいことを教えていただいて」

「……別に」


 ビアンカの後ろに隠れながら返事をすると、呆れたようにビアンカが溜息を吐いた。


「気にしないで。この子、昔からこうだから。それより教えてあげて。どうして貴方達が、こうして子供達に剣術を教えているのかを」


 ちゃんと聞きなさい、と手を引っ張られる。


「シュネー村には自治会があって、そこで、十六歳を越えた人は村のためになにかしらの役割をもらうんです。私達は、子供達に剣術を教える役目についています」

「……自治会?」


 驚いて聞き返すと、青年は誇らしげに頷いた。


「はい。他には農作物の改良について研究する係や、他の村との連絡係、商人との連絡係、備品の管理係等、色々な役割があります。うちの村は住民が少ないので、一人ひとりが協力して村を守ろうとしているんです」

「村を守る?」

「はい。この村はそうやってずっと守られてきたのだと、父からも聞いています」


 青年は一度息を吸うと、近くにある『辺境の勇者』像を指差した。大きな盾を持っている銅像だ。


「辺境の勇者コンラート様は、父の幼馴染でした。あの盾は、父が作った物なんですよ」

「盾を……?」

「はい。当時、武器を都会に買いに行くことなんてできなくて、コンラート様の武器や防具は全て村で作っていたんです」


 知らなかった。そんなこと、日記帳には書いていなかったから。


「コンラート様が生きていた頃は、今のような自治会がなくて……コンラート様が亡くなった後、父が村長に働きかけて自治会を作ったそうです」

「……『辺境の勇者』は、強くて、勇気ある若者だった……んだよね」

「はい。でも同時に、すごく怖がりで、臆病な人だったとも聞いています」

「それは初めて聞いたわ」


 ビアンカが驚くと、青年は少しだけ気まずそうに笑った。


「あまり、外の人には言わないでください。『お前を世界一の勇者にしてやる』って、父は昔コンラート様と約束したみたいなので」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。