第2章 — 消えた生徒
闇が路地を飲み込んだ。
イーサンは即座に動いた。
前へではない。
横へだ。
コンマ数秒前まで彼の頭があった場所を、銃声が切り裂いた。弾丸が金属を貫き、金網のフェンスから火花が飛び散る。
プロだ。
そこらの街のチンピラではない。
頭上を別の弾丸が轟音とともに通り過ぎる中、イーサンはゴミ収集箱の陰に身を隠した。
「落ち着け!」フェンスの向こうから男の一人が叫んだ。「殺しに来たわけじゃない」
「それはどうも、ご丁寧に」イーサンは低く呟いた。
拳銃を握る手に力を込めたが、撃ち返しはしなかった。
まだ、その時ではない。
これは待ち伏せではない。
「演出」だ。
そして演出には、必ずメッセージが伴う。
路地の街灯が再び点滅しながら灯った。
男たちの姿はすでに消えていた。
濡れたアスファルトの上には、あの一枚の写真だけが残されていた。
イーサンは数秒間、レナの痣だらけの顔を見つめ、それから膝をついて写真を拾い上げた。
裏面には、黒いインクでこう記されていた。
「これ以上、探るな」
彼は写真をコートの内側に滑り込ませた。
その時、スマートフォンが振動した。
ギデオン・クロス:
「生きているか?」
イーサンは即座に打ち返した。
「かろうじてな。私の生徒の一人がさらわれた」
三点リーダーが表示される。
消える。
また表示される。
ようやく返信が来た。
「明日、私のところへ来い。まだ警察は巻き込むな」
イーサンは眉をひそめた。
その答えが胸にざらついた。
だがそれ以上に、ギデオンが驚いている様子がないことが、彼を不安にさせた。
翌朝、雨雲が打ち身の痕のようにロサンゼルスの空に低く垂れ込めていた。
ルーズベルト公立高校は、いつもの朝の喧騒に包まれていた。
生徒たちはスマートフォンを握りしめ、書きかけの宿題を抱えて混雑した廊下を押し進み、疲れ果てた教師たちはサバイバル道具のように特大のコーヒーカップを持ち歩いている。
イーサンは、わずか2時間の睡眠で校門をくぐった。
直感が告げていた。表面下ではすでに、何らかの恐ろしい事態が動き出していると。
1時間目が始まっても、レナの席は空席のままだった。
それでもイーサンは授業を進めようとした。
「象徴だ」彼はボードにその言葉を書いた。「作家は平凡な物事の影に意味を隠す」
後方の席からマーカスが眉を上げた。
「先生たちが『グループワークは教育的だ』って言うみたいに、裏があるってことですか?」
数人の生徒が笑った。
「その通りだ」イーサンは無愛想に返した。
普段なら、この教室のリズムが彼の心を落ち着かせてくれる。
だが今日は、何かが狂っていた。
彼の視線は、窓際にあるレナの机へと何度も彷徨った。
空席。
静寂。
彼は、普通の教師なら見落とすようなことに気づいていた。
机の角にある引っかき傷。
昨日まではあったはずのノートがないこと。
そして、彼女のバックパックがそこにないことだ。
レナがバックパックを忘れることなど、一度もなかった。
イーサンは授業を続けながら、静かにクラスを観察した。
マーカスは心ここにあらずといった様子だ。
デヴォンは何度も廊下の方を気にしている。
レナの名前が出るたび、二人の生徒が神経質そうに囁き合っていた。
学校という場所では、恐怖の伝染は速い。
噂話よりもずっと速く。
なぜなら十代の子供たちは、大人が嘘をついている瞬間を敏感に察知するからだ。
そして今日、この校舎にいる大人は全員、すべてが正常であるかのように振る舞っていた。
チャイムが鳴った。
生徒たちが溢れ出していく。
マーカスだけを除いて。
彼は不器用そうにドアの近くで立ち止まっていた。
イーサンは書類を整理するふりをした。
ようやくマーカスが口を開いた。
「……あいつに、何かあったと思いますか?」
イーサンは慎重に顔を上げた。
「なぜそう思う?」
マーカスはフーディーのポケットに両手を突っ込んだ。
「昨日の夜、あいつからメッセージが来たんです」
その言葉が、即座にイーサンの注意を引きつけた。
「何と言ってきた?」
マーカスはためらった後、スマートフォンを取り出した。
画面には一件の未読メッセージが光っていた。
『もし私に何かが起きたら、学校を信じないで』
イーサンの背筋を、冷たい感触がゆっくりと降りていった。
「いつ、これが送られてきた?」
「……11時半くらいです」
イーサンが路地で写真を見つけたのと、ほぼ同時刻だ。
マーカスは生唾を飲み込んだ。
「冗談ですよね? ただの冗談だろ?」
イーサンは無理やり冷静な表情を作った。
「おそらく、な」
自分の声が、自分でも信じられないほど空虚に響いた。
マーカスは鋭くイーサンを見つめた。
「あんた、何か知ってるな」
「いいえ」イーサンは機械的に答えた。
マーカスは鼻で笑った。
「またそれだ」
「何のことだ?」
「大人が嘘をつく時の、その面ですよ」
イーサンが答える前に、教室のドアが開いた。
副校長のハロルド・ウィットモアが、いつもの作り物のような笑みを浮かべて入ってきた。
ウィットモアは政治家特有の、人を不安にさせるほど整った外見をしていた。完璧なネクタイ、完璧な姿勢、そして死んだような目。
「ヴェイル先生」彼は愛想よく言った。「少しよろしいかな?」
マーカスは即座に携帯をポケットにねじ込んだ。
ウィットモアは彼が出ていくのを待ち、ドアを閉めた。
「今日は集中力を欠いているようですね」
「長い夜だったもので」
ウィットモアは微かに微笑んだ。
「あなたがレナ・トレスについて生徒たちに聞き回っていると耳にしました」
イーサンの姿勢はリラックスしたままだった。
「生徒が行方不明になれば、誰だって心配するでしょう」
「ご両親は、家出だと信じておられますよ」
「あなたは、それを信じているのですか?」
ウィットモアはゆっくりとカフスを整えた。
「十代という生き物は、ドラマチックなことが好きなものですから」
イーサンは彼を注意深く観察した。
懸念も、焦りも、人間らしい反応も、そこには微塵もなかった。
ウィットモアが一歩歩み寄った。
「生徒たちを無用に不安にさせるようなことは、慎んでいただきたい」
それだけ言うと、彼は去っていった。
イーサンはその背中を見送った。
直感が同じことを叫んでいた。
ウィットモアは、知るはずのないことを知っている。
昼休み。喧騒と蛍光灯の光、そして統制された混沌が訪れる。
イーサンは一人、教室で作文の採点をするふりをしながら、レナが最近提出した課題を調べていた。
そのほとんどは、ごく普通の、鋭い分析と知的な観察力に満ちたものだった。
だが、オーウェルの『1984年』についての論文を見つけたとき、手が止まった。
特定のフレーズに、奇妙な下線が引かれていた。
無造作ではない。パターンがある。
イーサンはペンを取り、その異常な印を一つずつ丸で囲んでいった。
下線を引かれた文字を繋ぎ合わせると、断片的な言葉が浮かび上がった。
「監視」
さらに下の方には、
「地下室」
そして、
「誰も信じる――」
文章はそこで唐突に途切れていた。
教室のドアがノックされた。
クレアが入ってきた。サンドイッチと、隠しきれない懸念を抱えて。
「昨日のランチも、あなたは姿を見せなかったわね」
イーサンは素早くその紙を裏返した。
クレアは即座にそれに気づいた。
「なるほど」彼女はゆっくりと言った。「それは怪しいわ」
「十代の子供を教えていれば、すべてが怪しく見えてくるものさ」
「ひどい顔よ、イーサン」
「いつも言われる」
彼女は向かいの机の端に腰掛けた。
「レナのことが心配なの?」
イーサンがためらった時間は、あまりに長すぎた。
クレアの表情が和らいだ。
「あの子はいい子よ」
「ああ」イーサンは静かに言った。「本当に」
クレアは彼を注意深く観察した。
「あなた、この件に深入りしすぎているわ」
「それが私の仕事だ」
「いいえ」彼女は優しく言った。「大抵の教師は、傷つかないように無関心を装うものよ」
その言葉は、イーサンが予想していた以上に重く刺さった。
彼女の言う通りだったからだ。
彼は、深入りしすぎていた。昔からずっと。
そして、彼が守るべき人々を守れなかったとき、人は死ぬ。
クレアがわずかに身を乗り出した。
「助けが必要なら、そう言っていいのよ。わかってる?」
危険な一瞬、イーサンはすべてを打ち明けそうになった。
あの写真のこと。路地のこと。誘拐。銃声。
だが代わりに、彼は疲れ切った微笑を無理に作った。
「大丈夫だ。生き延びてみせるよ」
クレアはため息をついた。
「あなたが思っているほど、その言葉は安心させてくれないわ」
彼女のスマートフォンが鳴った。
画面を確認し、彼女は眉をひそめた。
「10分後に職員会議よ」
「そいつは運がいい」
彼女は立ち上がり、ドアのところで足を止めた。
「イーサン?」
「なんだ?」
「もし何かが起きているなら……一人で抱え込もうとしないで」
彼女が去ると、教室に再び静寂が戻った。
イーサンはレナの暗号化された論文に目を戻した。
監視。
地下室。
誰も信じる――
スマートフォンが振動した。
「非通知」からの着信。
彼は即座に出た。
「もしもし」
微かなノイズが響く。
やがて、歪んだ音声が語りかけてきた。
「君は、生徒たちに物語の分析を教えているな」
イーサンの身体が静止した。
「だが、教えるべきだったな」声は続いた。「物語からどうやって生き延びるか、ということを」
――プツリ。
通話が切れた。
その瞬間、教室の電気が一度、点滅した。
二度。
そして、完全に闇に包まれた。




