Magic & Dimension 19
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終わらない夢を見たことがあるか。古い映画の台詞。
それが終わらなければ、どうしてそれが夢だと分かる。夢が終わらなければ俺にとって現実はどっちだ? けれどこれが夢ならどんなに良かったか、と思う。電池代わりに水溶液ポッドに入っている人生の方が何倍もマシだ。
息が切れて立ち止まる。ゼイゼイ言いながら暗闇に目を走らせる。下ん湯って一体どこなんだ? まるで見当もつかない。きっと小さい。
ゲーム画面に目をやれば。画面上部にワールドチャット。
『加入希望Lv380純魔、俺のPTは全滅、由布院駅近く、隠れている、申請送ってくれ、緊急』
『ヒーラー求む、ゆふいん○○館側で戦闘中、現地で。早く』
皆んなこの街で戦っているんだ。チャット見る限り人間側劣勢だ……。俺はうなだれた。いや、思い直した。戦う手段はあるんだ。俺はステータス画面を開いた。相変わらず赤く、極端に減っている。けれど後2分で戦える。まずはパーティと合流することだ。
あらためて辺りを見回すと。真っ暗な中、小さな掘っ建て小屋に微かな灯り。きっと裸電球の灯り。入口の扉の隙間から漏れている。入口の扉が少し開いている。掘っ建て小屋の向こうには闇が広がっている。建造物が全く無い感じ。
下ん湯って金鱗湖に面してるんじゃなかったっけ……。じゃあココが? でもマジでここ? が正直な感想。小屋の前には料金を入れる箱が立っている。
俺は小屋へ向かって降りていった。辺りを見回した。ユウキちゃんの姿はない。ひょっとしてこの中に……、当然思った。隠れているのかも、と。
横開きの木戸を開くと、思った通り。そこにはうずくまりガタガタ震えているユウキちゃんが。
黄ばんだ光に照らされたそこは、本当に小さな温泉だった。ユウキちゃんは竹製のついたての前にうずくまっていて、その向こうには小さな湯船、両脇に脱衣棚。その奥にもう一つ小さな湯船。そこはオープンスペースで……、本来なら金鱗湖に面してのんびり湯に浸かる露店風呂……。
ユウキちゃんが俺の顔を見て激しく反応した。何度も首を振った。その理由を、その奥にある物をすでに見ていた俺は容易に理解した。
本体はきっと金鱗湖にあるのか。ここを覗き込んでいるのは、小屋の開口部を覆うほど大きな顔。疣だらけでヌメヌメした皮膚、窪んだ目、鼻は見当たらない、口はまるでワーム……。いや、もっと悪夢だ。
丸く開いたそれは内側がぐちゅぐちゅで細かく鋭い牙が奥の方まで無数に。螺旋状とか、段々にとか、そんな規則性は全く見当たらない。気持ち悪い肉塊から突き出た無数の小さな牙。
グリュっと喉奥が盛り上がってきて、ひときわ大きな牙持つ肉塊が襲ってきた。捕食時のクリオネの様。
俺はユウキちゃんの手を引っ張って後ろに倒れこんだ。間一髪、牙は衝立を噛み砕いた。俺はユウキちゃんを抱いてその場にへたり込んだ。ステータス画面を横目で見た。まだカウントが続いていた。




