Magic & Dimension 18
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俺は呆気にとられた。ゲーム画面見るとマピの街なかにいた。死ぬと直前に立ち寄った街に戻る。フィールドにいたはずだ。皆と一緒のフィールドに。
フィールド。流石の俺も気づいた。俺のHPは1。ゲーム内の野良MOBにやられたんだ。当然こうなるだろ、こんな簡単な事に気付かずにいたなんてっ、俺は馬鹿か!
悪魔の微笑み、やっぱり使えないじゃないか!
「カカシに行け」凍結波動連打しながらはるゆりが叫んだ。「隙ができたら私たちもそこへ移動する」
「わ、わかった」
コイツのこういう所は流石ギルマスと感心する。切羽詰まったこの状況で、自分は現実のビースト相手に戦いながら、あの場所を思い出すなんて。
カカシとはマピ訓練場。冒険出発時、チュートリアルでカカシにスキル打つ。そこでなら。いくらでもスキルが打て、しかも野良MOBもいない。
俺は画面操作してマピの街なかを駆けた。勿論、現実のMOBの様子を油断なく伺いながら。でも大慌てで。訓練場に到着した。入り口に駈け込めば自動的にルーム移動。けれど次の瞬間。ガンと頭を殴られたような衝撃。吹き飛ばされる浮遊感。
刹那襲われた暗闇。目の裏で血が泡立った。何が起こったか分からなかった。いや。分かる。最悪の展開だ。
星がちらつく、血で真っ赤になった目を押し開くと。
俺は一人だった。暗い。暗がりの中ファンタジーな建物並んでいる。
飛ばされたんだ。湯布院の街のどこか。ボスの強制座標移動。前回もこれでバラバラにされた。
皆んな飛ばされたのか、ゾズゾズはどうなった……。いや、俺は自分の心配した方がいい。
今の俺はデスペナ中。10分間ステータス5分の1。降臨だらけの街で。一人きり。
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これもゲーム内ではさほど重要視されていなかった。ボスによる強制座標移動。シナリオボスなら飛ばされても同じルーム内。降臨でも同じフィールド内。さほど遠くまで飛ばされない。鬱陶しいだけで対策を立てるほどの事ではなかった。
けれど現実では大違いだった。一瞬で迷う。仲間を、敵を見失う。そしてこれに抵抗するオプションは用意されていなかった。
豆さんは言った。
「アプリ落としとこう。GPSで互いの位置情報教え合うやつ。他に手はないな……。飛ばされてアプリ切り替える暇があればいいけどね……」
そうして俺たちはアプリを取り、互いのスマホを登録した。
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俺はステータス画面を確かめた。緑のステーテスバーが赤く染まり、極端に減っている。画面上部に時計があり、カウントしている。9.41、9.40、9.39、……。
俺は10分間生き延びられるのか。それ以前に仲間と合流できるのか。
ベキベキと建造物の破壊される音。足元が地震のように揺れた。目と鼻の先に飛び出してきた男の人。民芸店風の建物を壊して追ってきたビースト。男の人は叫んだ。暗がりで男の人の顔もビーストの姿形も全く分からない。
「助かった! プレイヤーか!」
「や、俺今デスペナ中で……」言いかけて。威力不足でもいいと思った。スキル撃ってビーストの注意をこっちに逸らす。この人を助けなきゃ。震える指でコマンドログモードに切り替え……。
「助けてくれっ、俺のパーティは全滅した! 助けてくれ早く」叫びながら駆けてきたその人の肩を。
鋭い牙が捉えた。俺の目の前で悲鳴をあげて倒れたその人。俺に向かって伸びていた手は地を打った。ビーストは一瞬獲物を解放し。長い首がうねり、腹に向かった。ブシュっと嫌な音。腹を喰い破った。その人はまだ生きていた。生きていて叫び続けていた。手を俺の足へ伸ばし……。俺は身動きできなかった。固まっていた。悲鳴が途切れ……。だらりと転がった人の体を弄ぶように引き裂いてゆくビースト。四肢がまだ、命あるかの様に、ビクビクと動いている。
俺はジリジリと後ずさった。全身の血が引いていた。
ビーストがかま首を持ち上げた。俺を見た。
「ひっ」喉から弾け出た。
横っとびに飛びすさり、俺は民芸店が立ち並ぶ一角に逃げ込んだ。真っ暗だった。土産物屋が建ち並んでいる。長い首が追ってきている。俺はジグザグに駆け、建物と建物の隙間に飛び込んだ。へたり込んだ。いつでもスキル打てるようにスマホ構え振り返った。長い首が追ってきている。うねりながら、目の前を通り過ぎて行った。
助かった……。やり過ごした……。
ホッとしている場合じゃないとすぐに気づいた。
化け物の放つ瘴気で噎せながら、這うようにして移動した。立ち上がれ、自分に喝を入れ。土産物屋の隙間をぬってヨタつきながら歩いた。今のヤツはクェルカツツ……ケルカックだっけ……? 名前なんてどうでもいい。銀色の鱗持つドラゴンだ。
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クェルカツツはどこへ行った? 俺には分かりようもない。いつどこからソイツが現れてもおかしくない。俺は土産物街の裏側から小道に出た。わななく足で駆けた。見たことある建物が見えた。暗がりの中に看板が。『湯布院の猫ちゃんハウス』。
俺は転がり込むようにして植込みの陰に隠れた。
今の俺はデスペナ中だ。迷うことなくログアウトした。位置情報アプリを開いた。四つのアイコンが地図上に現れた。ユウキちゃんは近い。マップの文字を見ると『下ん湯』。その側にいる。豆さんとはるゆりは少し遠い。まったく地理感のない俺でも分かった。元の場所からあまり飛ばされていない。でも、二人の位置は近い。
俺はもう一度ログインした。ギルチャ立て続けに打った。指が震える。
『ユウキちゃん、そこに居て。隠れてて。迎えに行く』
『豆さん、はるゆり側にいる。ホテル○○館のパーキング。捜して』
見てくれているのか。返信する余裕が無いのか、それとも……、もう生きていなくてスマホだけそこにあるのか……。ギルメンからは次々に応答ある。何があったか知ってるのか、心配している。俺は皆んなに頼んだ。『俺はユウキちゃんを迎えに行く。応答あったら伝えてくれ』
一斉に『おけ』と返ってきたので『よろ』と言い残した。俺はダッシュで駆け出した。マップで方角だけは分かる。けれど土地勘なんてまるでない。もう一度アプリ開くこと考えたけれど、ログインしたままの方が良いに決まってる。
駆けながら、目に飛び込んできたギルチャ。
『名前付いたよ。3.05鬼界噴出』
『政府やっと認めたってこと?』
鬼界噴出……。




