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Magic & Dimension 10

「いやー、湯布院凄すぎ。まるで異世界だったわ」トンチンカンなことを言った。

「コンビニって災害時でも営業しなきゃいけないのねぇ」

 はるゆりはホテルの浴衣に伴天を羽織っていたけれど、寒かったらしく肩を震わせていた。ユウキちゃんはジャージ上下に、はるゆりの豹柄アウターを借りて着ていた。はるゆりはふざけて俺の前にユウキちゃん引っ張ってきて、アウターのフードをユウキちゃんの頭にかぶせた。

「見て見て。これ見て悶絶しろ。萌え萌え猫耳ユウキ」フードは耳付きだった。ユウキちゃんはイジられて、真っ赤になって恥ずかしがり、恨めしげな目をはるゆりに向けた。


「豹柄だから猫耳じゃなくて豹の耳だろ」俺は冷たくツッコミ入れた。可愛かったけれど。


「分かりやすい奴ぅ。耳が真っ赤だぜ」

「テメエ、タヒれよ」纏わりつくはるゆりを手で払い、豆さんに聞いた。「現実の生命体にスキル撃てませんか」


「それが出来ないって説明を今延々したトコなんだけど」


「お前らが遊び呆けてた間に俺らは必死に善後策を考えてたんだ」俺ははるゆりに言った。


 レジ袋から取り出した缶ビールをプシュッと開けながら、

「あら。私がそんなに気が利かない奴だとでも? スキル振り直すんでしょ?」はるゆりはニヤッと笑い、アイチューンカードを何枚も取り出しトランプの様に広げて見せた。

「どお?」


 スキル振り直しには課金アイテムが必要。


「悪いな。幾らだった? 俺が払うよ」と言う豆さんに「気にしないで。私、一応ギルマスなんだから」ゴキュゴキュとビール一気飲みして、はるゆりは笑っていた。


「スキルは振り直すつもりだけど。露天風呂で会った人はテイマー必須だって言ってた。ソレどうする?」俺が言うと。

「居ないものは仕方ないわ」はるゆりは肩をすくめて答えた。


「ですね……」と頷いてユウキちゃん。「もうお友達ができたんですか?」俺に聞いた。


「うん。フルボッキさんって人」


 ユウキちゃんが真っ赤になって口をつぐみ、流石のはるゆりも目を丸くした。が、出て来たコメントは流石はるゆりだった。

「堅そう……」


 豆さんが吹き出し笑いを堪えて、拳を口に当てて顔を背けた。ユウキちゃんは俯いた。はるゆりは平然と続けた。

「壁なの?」


「いや。俺と同じ物理メイジでギロチン使いだった」


「強そう……」


「多分強いと思うけど」


「ってか、ナニが……」


「お前さぁ、ステ振り直して羞恥心に少し振っとけよ」このルックス、この八頭身キャラが、こんな下ネタ発言連発するなんて、全ての美しく清楚で在ろうとする女性に対して失礼だと思った。


「いいんだよ。今の私は女である前にギルマスだ。ギルメンの恐怖心を少しでも取り除くことができるなら、どんな道化役でもやる」


 絶対そんな殊勝な事考えてない。コイツの発言は全部素だ。


「要はビーストテイマー抜きのパーティ構成を考えれば良いんだろ? 今日の昼の戦闘を踏まえて」

 はるゆりは自信満々な顔して続けた。


「まず、私の『種族』は『水の妖精』だから氷系魔法を外れるわけにはいかない。けれどよるおす。幸い、お前はただの『人間』だ。炎系魔法を外れてもデメリットはない。これを踏まえて」


 マジック&ディメンションにはジョブに向いた種族がある。『氷系魔法向き』の『水の妖精』、『雷系魔法向き』の『大気の精霊』、『炎系魔法向き』の『炎の妖人』、『ディメンション向き』の『時の妖精』、メリット無いがデメリットも少ない『万能』な『人間』。ゲームスタート時に選択する。これを変更できないのは全MMO共通。


 人差し指を立てて、はるゆりは続けた。

「私が『白』を捨て『凍結波動』取得する。波動連打でMOBを凍らせ足止めする。豆さんが自ヒールでタゲ取り。ユウキはMP補填役。部位破壊も勿論してもらう。けれど」立てた人差し指を俺に向けた。「メイン火力はお前だ、よるおす。要らないスキル全部捨てろ。ギロチンは無理でもスピアなら取得できるだろ。勿論、レベル7取得という意味だ」


 俺はため息をついた。勿論、感心して。こういうところは流石ギルマスなんだよな。文句のつけようがない。


 凍結波動はスキル発動間隔が半端なく短い。スキルには『詠唱時間』と『クールタイム』がある。詠唱にかかる時間と、詠唱後次に詠唱するまでに要する時間。凍結波動はこのどちらも半端なく短い。詠唱時間が長い魔法は少ないが、クールタイムが長い魔法は多く、大魔法と呼ばれるものは軒並み6秒を超える。詠唱時間とクールタイムはステータスのD振り、オプションや装備の性能で短縮できる。

 凍結波動を喰らったMOBはウィズに面した体表が瞬間的に凍り、動きを阻まれる。はくの凍結は体内にまで浸透するけれど、凍結波動はあくまで体表を凍らせる。しかし確率に左右される白と違い、確実に凍らせる。

 凍結時間はオプションで伸ばすことができ、スキル発動間隔が速ければ、理論的にはMOBをその場に釘付けできる。威力は他の大魔法に比べて格段に弱い。純魔法メイジのトップスキルの一つだけれど。


 スピアは物理メイジ三大スキルのうちの一つ。術者の頭上高くに巨大な槍を召喚してMOBに放つ。確率で貫通する。貫通すればHPをゴッソリ削れる。HPが滅茶苦茶高い強敵でも。貫通しなくても威力はアロレより上。ギロチンには劣る。『貫通』すれば。スキル威力もMATKも関係ない。敵のHPは残り僅かになる。

 あくまでゲーム上での話だけれど。


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