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ヒダカアローズ2  作者: 快速ナイトネリウム53号
第2章「待機」
16/17

II(九州)

@九州連邦共和国鹿児島県西之表市種子島臨時空軍基地―仮設射撃練習場

2月25日九州標準時刻1052時

 イリハはNTW20/14.5の上部に取り付けたスコープをのぞき込み、銃を動かして十字線(レティクル)の中央に目標をとらえる。

 (南南東の風、風力2)

 イリハは頬にかかる風から風向風力を判断、2キロ先の目標に命中するようにわずかに腕を動かし、照準を微調整。

 そして愛おしむようにそっとトリガーを引く。

 ダァン!!

 カチャン

 チャキン

 イリハは素早くボルトを引き、薬室に弾丸を装填、排出された空薬莢がコンクリートの地面に落ち、乾いた音をたてる。

 再照準。

 ダァン!!

 14.5ミリ弾の力強い射撃音が静かな周囲に響きわたる。

 カチャン

 再びボルトを引き、弾薬を装填。素早く再照準。

 ダァン!!

 カチャン

 同じ動作。さらに素早く再照準。

 ダァン!!

「おー全弾命中。心持ち右にずれてるが問題ないな」

 ヒエンコが手元のMCPでイリハの射撃訓練の結果を確認すると、VSGS(Visual Shooting Gallery System:仮想射撃訓練場システム)を終了させる。

 同時に、イリハのスコープ上に表示されていた目標が消える。

 イリハが撃っていたのは訓練用の空砲。

 VSGSは仮想上の目標をモニターに表示させ、銃に取り付けられた重力計などからの銃の動き、使用弾、風向風力を元に弾道を計算、仮想上の目標に命中したかを判定するシステムで、日本列島のみならずオーストラリアなど極東地域各国で広く使用されているシステムだ。

「よっし射撃訓練は終了!!解散!!」

「ありがとうございました!!」

 イリハはヒエンコに敬礼をすると地面においたNTW20/14.5を担ぎ、格納テントへと向かった。

「で、どうだ?彼女は」

 それと入れ替わりにヒエンコの後ろからかけられた声に振り向くと、そこには相変わらずぼんやらかんとした表情の谷田がいた。

「射撃技術は相応なものですね。視力も裸眼で2.0ですし、センスもある」

 谷田の身長は170センチ、それに対してヒエンコの身長は153センチなのでヒエンコは谷田を見上げる形になる。

「そうか。それなら使い物になるな」

「と、思いますよ。割と撃ち方もこうボンッ!!という感じではなくてスッ。みたいな感じで正に『霜が降るごとく』ですしなかなかに根気強い、それに真面目。将来性もありますね。ただ――」

「ただ?」

「あえて贅沢を言わせてもらうと撃ち方があまり空対空戦闘には向いてませんね。固有魔法が多重シールドですし、どちらかと言えば対地攻撃向きで、まあ30ミリなんかを装備したらいい伏兵になるんじゃないでしょうか」

「そうか。なら戦力にはなるな」

「対地攻撃についてなら、ですがね。流石に見越し射撃はまだできないみたいですね」

「わかった。ありがとう」

「せんきゅーさー!!」

 ヒエンコはおどけてラフな敬礼を谷田にすると、自らの射撃訓練を行うために扶桑45式対装甲ライフル(対物狙撃銃)の用意を始め、書類仕事(デスクワーク)がまだ残っている谷田はテントに戻っていった。

文中に出てくる架空兵器の解説を




扶桑45式対装甲ライフル

種類:アンチ・マテリアル・ライフル

口径:12.7ミリ

全長:1650ミリ

銃身長:753ミリ

重量:13500g

装弾数:11発

動作方式:反動利用式ショート・リコイル、ターン・ボルト・ロッキング

ステータス:生産配備中

セミオートのアンチ・マテリアル・ライフル。

折り畳み機能はないが、比較的汎用性が高く、機動歩兵、特に重量の制限が厳しい航空機動歩兵のメイン武器として使用されることが多い。


ちなみに、NTW20/14.5は実在する銃で南アフリカのダネル社(ヒダカアローズの世界ではD.O.N.L社)製の対物ライフルでNTW20はドイツの対空機関砲用の20ミリ弾を使用し、平地のためにロングレンジの戦いの多い南アフリカの戦場に対応している銃で、NTW20/14.5はそれをロシア(ヒダカアローズではまだソ連が存続しているが)の14.5ミリに改修したもので、射程は優に2キロに達する。本文中でイリハがこれを使用しているのはNTW20の20ミリ弾はドイツ製のため、軍が補給を行う弾薬の中に入っていなかったため武器商人からNTW20と一緒に買ったキットで改造している。ちなみに12.7ミリモデルもあるらしいが、そうなるとこの話の世界では扶桑45式対装甲ライフルの方が安くて部品も確実に手に入るのでまあスルーしたらしい

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