第4章:白昼夢を見るたび、いつもそれが戻ってくる
だが、後で研究所で嬉しい知らせが待っていて、それが俺の中の火を再び灯してくれた。これでうまくいけば、すべてが完璧に片付くはずじゃ。
階段を降りて一階へ、そのまま浴室へと向かい、シャワーを浴びる。
ザアアアアッ……
「はぁ……あったかい~!!」流れる湯の下で、俺は満足げにため息をついた。
「……」
タイルを叩く水音が続き、湯気がゆっくりと立ち上っていく。だが、数分と経たないうちに、その穏やかな空気は少しずつ歪み始めた。奇妙な、ずしりと重い静寂が浴室に忍び込み、肌が粟立つほど濃くなっていく。
理由は分からないが、この突然の静けさが、たまらなく落ち着かない気分にさせた。
心臓が不規則に早鐘を打つ理由が分からない、まるで本能が、何か恐ろしいことが起きようとしていると必死に叫んでいるかのように。何かがおかしい。何かが、決定的に間違っている。
さっきまで温かく心地よかった湯気が、今はじっとりと湿った毛布のように、胸を押し潰してくる。
この不気味な静けさを打ち破ろうと、蛇口に手を伸ばした。だが冷たい金属を握った瞬間、ぞっとするような事実に気づく水の音はまだ止まっていない。今も流れ続けているのに、頭の中の静寂は耳をつんざくほどで、他のすべてをかき消していた。俺の頭にあったのはただ―
「……お、俺……」
数秒の間、俺は思考の中に迷い込み、シャワーの流れの下で身動き一つできずに立ち尽くしていた。渦巻く濃い湯気の向こうに、何かがゆっくりと浮かび上がってくる。それが何かは分からない。だが、シャワーの水流の下で、俺の思考は徐々に溶けていき。
「好きだよ、レン君〜」
彼女は両手に顎を乗せた。
「ハハ……自信ないな、アイラちゃん」
「自信ない? むぅ!」
そう言いながら、彼女は頬を膨らませた。
「ち、違うんだアイラちゃん、俺は、お前に相応しくない気がするんだ」
俺は俯いた。
「お前の人生の伴侶になる資格なんて、俺にはないと分かってる……でも!約束する!」
そして、もう一度彼女の顔を見つめ、両手を胸の前で握りしめた。
「絶対に、お前にとって一番影響力のある人間になってみせる! 約束だ!!」
「今の言葉、覚えておくから、レン君……」
「……でも、私にとってただの影響を与えてくれた人、で終わるのは嫌だな。お互いに愛し合える関係になりたいの。その……結婚、とか?……ね?」
彼女は頬を赤らめながら言った、すぐにまた俺に笑いかけた。
アイラの眩しい笑顔が、突然ひび割れ始め、冷たく恐ろしい闇へと消えていく。そして、その甘い記憶はガラスのように砕け散り、代わりに生々しい血の臭いと、肉が引き裂かれるような耳障りな音に取って代わられた。
「……ア、アイラ、待ってくれ、頼む、待ってくれアイラぁ!! アイラ!!!」俺は右手をそちらへと伸ばし、必死に虚空へと手を差し伸べた。
「頼む……頼むからアイラにそんなことしないでくれ、やめ……やめてくれ!」
「やめろぉっ!」俺は叫んだ。喉が裂けるような、生々しく必死な絶叫だった。
「……」
そして再びすべてが暗転し、しばらくしてその白昼夢から意識を取り戻した。
……落ち着け、落ち着け……ただ水を感じていればいい、あんなこと考える必要はない。
シャワーの水を浴びた顔を、左手で拭う。
キュッ……キュッ……キュッ……
そしてなぜか、その光景のせいで俺はしばらくそこに立ち尽くしていた。片手を壁に押し当て、右手で頭を押さえなが。
すでに止めたはずのシャワーの下で、たった今抜け出したばかりの白昼夢の余韻に浸ったまま。その静けさが、俺の心を漂わせていた。
俺は……。
物心ついてから、ずっとあの夢を見続けてきた。あの出来事は一体何だったんだ? まるで大切な何かを引き裂かれたような感覚で、どうしても受け入れることができない。
「いや、起きてもいないことを考えても仕方ない。はぁ……」
俺はすぐにドアの裏にかけてあった黄色いタオルを掴み、濡れた髪を拭いてから腰に巻いた。そして浴室を出て、再びあの散らかった部屋へと階段を上っていく。
「はぁ……」
長いため息をつきながら、指先で忙しなく仕事用のシャツのボタンを一つずつ留めていく。意識を、今日の研究所での長い予定リストへと無理やり向けた。
白衣がきちんと着られているのを確認してから、いつも研究や調べ物に使っているモニターの前に置いてあった仕事鞄を掴み、肩にかけた。それから家を出て、扉に鍵をかけ、庭の石の隙間に鍵を挟んでおき、そのまま研究所へと向かった。
「ん……はぁ……」
朝の新鮮な空気を吸い込むのは肺にもいいし、俺が好きなことの一つでもある。朝のあの爽やかな感覚は、本当に何にも代え難い。「せめてこういうことが、少しは心を軽くしてくれる」
今日の天気も、やけに晴れやかに見える。理由は分からないが、今日は何かいいことが起きそうな気がした。




