第21話:赤子と伝説の硬鱗獣 , その邂逅と死闘
ゴオッ。
ガアアアアアアッ……。
ガキィィン!! キィィン……ガキィィン……ガキィィン!!
パチッ……パチッ……。
突然、緑色の閃光が爆発した。透明な防御のドームが立ち上がり、俺とあの巨大な木を、その魔物の爪の一撃から守った。
ビリッ……ゴオッ……。
次の瞬間、大地が轟音を立てた。巨大な根が地中から突き出し、俺たちを脅かすその生物を捕らえようと、滅茶苦茶にあらゆる方向へと打ちつけ、襲いかかった。
だが、どの根も、その魔物に命中することはなかった。その魔物はかなり大きく敏捷で、頭は竜のよう、体と翼はコウモリのようだった。だが鱗を持ち、その鱗はまるで鋼で作られているかのように、ひどく硬そうだった。
「はっ……はっ……はっ……」
荒い息遣いが聞こえた。誰の息か? 分からなかったが、その呼吸音は切迫し、乱れきっていた。
「もうやめて、お願いだから! あなたが本当に欲しいのはその子供なの? 本当に欲しいのは私の力だけなんじゃないの? あの子はただ、この森で迷子になっただけの子供なのよ。お願い、この子はこの件とは何の関わりもないわ」
その生物がまだ滅茶苦茶に攻撃を続ける中、ドライアドは仲裁しようと必死だった。
「ほお、降参するのか?」
その声は、繰り返し叩きつけられる魔法の障壁の甲高い悲鳴にほとんどかき消されていた。
「それがお前の頼みなら、何かしてやってもいい。だが!! 取引をしようじゃないか」
「取……引き?」ドライアドの息遣いが、さらに切迫していった。「はっ……はっ……」
「ああそうだ、取引だ。聞きたいなら、あの魔物を止めてやろう」
「さっさと言いなさい……!」
「はっ!! 麒麟、やめてこっちに来い」
その魔物は、瞬時に攻撃を止めた。二体の分身が、追い詰められていた俺たちから後ずさりし、やがて主人の傍らで一つの姿へと再び融合した。砂埃はまだその一帯に舞い上がり、風はまだ不穏にあちこちへと吹き荒れていた。
「お前に、二つの選択肢をやろう。ハハハ」
その笑い声は、俺の耳にはあまりにも気色悪く響いた。
「な……何よ……」
ドライアドが、力なくそう返した。その様子は、ひどく疲弊しているようだった。
「お前が降参して俺と一緒に来るなら、その子供は解放してやる。それとも、あの子供とお前、二人ともこの場で殺されるか、選べ」
なんだそれは?! 俺の頭は叫んだ。どの選択肢も、まったく得にならなかった。もしドライアドが最初の選択肢を選んだとしても、あの野郎はきっとその後、俺をあっさり始末するだろう。あまりにも厄介な選択だ。いや……そもそも、これは最初から「選択」ですらなかった。
その生物の猛威が収まってから数秒、辺りは突然、不気味なほど静まり返った。俺たちの周囲の空気は、途方もなく重い重力に押し潰されているかのように、ひどく濃密に感じられた。森の平穏と、その中で蠢いていた生き物たちの気配は、ドライアドとあの魔物の激しい戦闘によって、瞬時に消し飛んでいた。
アレックス、アレックス、聞こえる?
え……? ドライアドお姉ちゃん? どうしたの?
お願い……お願いしたいことがあるの。
その話し方は、ひどく急いでいるように聞こえた。思考で繋がっているとはいえ、その声から滲み出る明らかな焦りを、俺は感じ取ることができた。たぶん、さっきのあまりにも不公平な戦いのせいだろう。
私が……私が自分の身を差し出した後は、すぐにここから逃げてほしいの、いい?
待って……自分の身を差し出すってどういうことだよ?
なぜだろう、今日初めて会ったばかりだというのに。だが、なぜか……また誰かを失うような気がした。俺は、それがまた起きるのを見たくなかった。
あんた、自分が現存する最後の木の精霊だって言ってなかったか? もしあんたが消えたら……この世界の自然は、一体誰が守るんだ? あんたも、自分がこの世界から消えることの代償を、ちゃんと分かってるのか?
俺はまだ、この世界を完全には理解していない。だが、ドライアドという存在がどれほど重要か、骨身に染みるほどよく分かっていた。もし自然を守る者がいなくなれば、いつかこの場所も、俺の前の世界と同じ運命を辿るだろう搾取、焼き払い、強制退去、そして地球を蝕んだあらゆる強欲によって破壊された、あの世界と。正直、前の世界の連中の所業を思い出すたびに、いつも血が沸き立つ思いがした。
大丈夫よ、アレックス。他に選択肢はないの」ドライアドが遮った。「私……私はあなたに、私の力の一部を譲ろうと思ってるの。
駄目だ……今日会ったばかりの相手に、そんなことしちゃ駄目だよ、ドライアドお姉ちゃん!! 俺はまだ、この世界の仕組みなんて全然分かってないんだ。
大丈夫よアレックス。こんなに素晴らしく、独特な小さな赤ちゃんに出会えたのは、本当に偶然とは思えないくらいよ。私、あなたを信じてるわ。あなたに、私の後継者になってほしいの。お願いね、小さなアレックス……どうか、あらゆる悪からこの世界を守ってあげて。
言うのは簡単だけど……で、でも……。
本当になぜ、こんな大切なものを、生まれてまだ六、七ヶ月の赤ん坊にすぎない俺に、そんなに気前よく譲ろうとするんだ?!
お願い……。
彼女のその願いが、俺の頭の中に、深く深い諦念を残して響いた。
俺はただ呆然と、この追い詰められた状況の中で考え込むことしかできなかった。頭の中は行き詰まり、もう他に思いつく打開策はなかった。
「わ……分かった、あなたと一緒に行くわ。だけど、この子は解放して、約束通りに!」
ドライアドは、目の前の奇妙な男に向かって、はっきりとそう告げた。
これは本当に筋が通っていない! 俺はただの……この子にとっては見知らぬ他人にすぎないのに、なんで彼女は、今日初めて会ったばかりの俺みたいな相手を、こんなに信頼できるんだ。
「もちろんだとも……俺は、自分のものじゃないものまで全部奪うような、そんな悪党じゃないさ」
「あ……あんた……約束したわよね……?」
「本当に、約束する」
その男がそう言った後、ドライアドは俺の方を振り向き、視線を伏せた。
ごめんね、アレックス。あなたをこんな騒動に巻き込んでしまって。どうか、私のことを嫌いにならないでね……?
その心の声は、ひどく脆く、運命に身を委ねているように聞こえた。それと同時に、彼女は枝々を大きく広げた。輝く緑色の光の玉が、突如として現れ、その幹の中心で脈打ち始めた。
テイィンッ……。
合図もなく、その巨大な木は目を焼くほどの眩い閃光を放った。甲高い耳鳴りのような音が響き渡り、森全体を震わせた。その太古の幹は、次第に濃く、眩しくなっていく青緑色の光にゆっくりと包まれていった。
俺は反射的に片腕で目を覆った。だが、その凄まじい輝きの奥で、俺は奇妙な感覚を覚えた。まるで、柔らかいエネルギーの流れが、肌の毛穴へと這い込んでくるかのような。それは痛みではなく、生まれてから一度も感じたことのないほどの、とてつもない温もりだった。
は?! なんだこれは? 胸の奥がむず痒く感じられた。まるで何かが無理やり入り込み、俺の意識と一つに溶け合おうとしているかのように。
数秒が経ち、その刺すような輝きは徐々に薄れていった。俺は腕を下ろし、少しずつ目を開けた。
俺の目の前には……緑色の長い髪をした女性が、白いドレスを風にそよがせながら立っていた。その肌はあまりにも透き通って明るく見えた。その緑色の瞳は、静けさを湛えて輝いていた。
そしてその存在感は……なぜか、森全体をさっきよりも生き生きとさせているように感じられた。そして偶然にも、俺はそのドレスの裾をしっかりと握りしめていた。あまりにも魅惑的で、俺はしばし言葉を失った。何しろ、こんなことは地球では一度も起きたことがなかったから。
「よし、それじゃあ、この子を解放して」
ドライアドの手が、俺の視界を遮り、あの奇妙な男の方を見せないようにした。
「へっ……」
彼はただ皮肉っぽく鼻で笑い、顔を背けながら、俺たちへ嘲るような眼差しを投げかけた。
その女性は体を反転させ、深く身をかがめて、自分の目を俺の目の高さに合わせた。
「アレックス、さっきの命令、ちゃんと守るのよ!!」
その小さな手が、優しく俺の髪を撫でた。その撫でられる温もりは、本当に、新しい両親の温もりを思い出させるものだった。
「あ……」
俺は一瞬だけ口を開き、もう一度、自分でこの状況に対処できると彼女に伝えようとした。だが、ドライアドは、きっぱりとした首振りで即座に俺の言葉を遮った。
「うん」
俺はついに小さく頷いた。その懇願するような眼差しに、屈するしかなかった。
その女性は再び体を反転させ、彼女を連れて行こうとしているあの男の方へと歩き始めた。彼女の指示通り、俺は彼女を残して走り出した。だが……
◆◆◆◆
「おお、ようやくか……来たなドライアド、本当にこの瞬間を長いこと待ってたんだぜ」
「お前と同族のやつらから力を集めてるんだよ、ある実験のためにな。つまり、お前と同胞の力を使って、ドルデウム王のために最強の戦士どもをクローン生産するってわけだ」
その男は両腕を大きく広げながら、興奮した様子で叫んだ。
「ハハハハハ、そうすりゃ、あの方の満足を満たして、俺はもっと高い地位に上り詰められる。出世できるんだ! 俺はこの王国で最も重要な人間になってやる! ハハハハハ!」
俺はそれを否定できなかった。今、俺はただ、黙って俯きながら、ゆっくりとその男のもとまで歩いていくことしかできなかった。生み出されたその緊迫した状況が、俺の心臓を激しく高鳴らせ、両手は収まりのつかないほど震え、そのせいで冷や汗がどっと流れ落ちた。
「見事だな、ドライアド。おお……木の精霊にしては、美しすぎるくらいだ」
その男は、飢えたような目で俺を見つめながらそう呟いた。
「ああ、そうだ!!」
その声が突然高くなり、まるで今しがた狂った考えを思いついたかのように、俺の足は瞬時に止まった。突然、迷いが俺に襲いかかった。
「もしかして―もしかして、お前は先に俺の恩寵を味わうべきじゃないか? そうだ!! そうだとも、お前はあまりにも美しいなドライアド。お前の力を王に献上する前に、何もせずそのまま捨ててしまうのは、あまりにも惜しいじゃないか。こっちに来いドライアド……ああ、俺の愛しいドライアドよ」
俺には、彼の言っていることが理解できなかった。頭に残っていたのは、ただ、アレックスの安全のために身を差し出すべく、迷いながらも歩き続けろという命令だけだった。一方で、あの伝説の生物麒麟は、その場からまったく動かなかった。その魔物はずっと俺を見張り続け、短い威嚇の息を漏らしていた。その熱く重たい吐息が、俺の度胸をさらに萎えさせていった。
俺たちの距離が完全に縮まった瞬間、その男は一歩前へ踏み出した。その荒々しい両手が、即座に俺の両肩を正面から掴み、抱き寄せた。
「あっ……」
「ああドライアド、ズズッ……」
その締め付けはあまりにも強く、同時に彼の悪臭を放つ息が俺の左の首筋を撫でた。俺の体は突然力を失い、その重みを支えきれなくなり、バランスが徐々に崩れていった。
「ま……待って、落ちる……!」
二人の体が地面へと崩れ落ちた。彼との体勢は、あまりにも異様だった。俺はその重い体に押し潰され、両腕は地面にきつく押さえつけられていた。
「だ、駄目!! やめ……やめて……うぅんっ……」
「そうだ、先にこっちを味わっておいた方がいいだろ。お前みたいな美人が、ただ力だけ奪われて終わるなんて、あまりにも惜しいからな」
「だ、駄目……や、やめて……」
「おお見ろよ、その胸、ドライアド、本当に美しいな」
「あ……ち、違う……そこ、触らないで……」
その男の荒々しい手が、俺の腹の上を好き放題に這い回り始めた。奴は俺の指をきつく掴み、容赦なく服を剥ぎ取ろうとした。残された力のすべてを使って、俺はただ両目を閉じ、その苦い現実から自分を隠しながら、絶望の中でヒステリックに泣くことしかできなかった。俺の勇気は完全に崩れ去った。誰か、助けて……お願い……本当に怖い……。
「うぅっ……あっ……や……やめ……」
「おおドライアド、愛しい奴、さあもうやってしまおうぜ。俺がお前に授けるこの恩寵は、完璧で、この世で最強のものになるって約束するからよ」
「おおドライアド―」
インフェル……ノ。
ヒュオッ……ドガアアアンッ。
「わぁっ……」
「な―なんだ?! だ、誰だ、誰がそこにいる?!」
目の前で炸裂した凄まじい爆発に、俺たち二人はびくりとして飛び起きた。俺はすぐさま後方へ跳び、その危険な男から安全な距離を取り、彼の荒々しい動きでずり落ちていた服を整えた。
「麒……麒麟!!! 攻撃の出所を探せ―」
その生物からの即答はなかった。その奇妙な静けさが、あの怪しい男を、たった今の突然の爆発音によってさらにパニックと恐怖に陥らせていった。
「おい麒麟?!」
俺たち二人は混乱し、あの火球が一体どこから飛んできたのか、周囲を見回して確かめようとした。
「襲撃か?! いや……これは……」
パニックに陥った様子のその男は、右手から奇妙な色の円形の光を放った待て、あれは古代魔法なのか?!
「麒麟!!! どこだ!! おい麒麟ンンン!!!」
ヒュウウッ……。
答えが返ってこないまま、彼はさっきの攻撃の跡を見た。すると……そこには、その魔物の尾の残骸が、跡形もなく焼け焦げて残っていた。あまりにも大きな爆発範囲は、周囲の木々さえも地面と一体化させ、消し去っていた。
「そ、そんな……まさか……あり得ない、あいつは生ける伝説だぞ! ありえない!!」
「出てこい、俺と向き合えこの野郎!!! こんなはずは……あいつは俺が見つけた中で最強の生物だったんだぞ。おい出てこい、このクソったれがぁぁぁ!!!!」
私は、何百年もの時を歩んできた精霊だ。だが……だが本当に、こんなにも強力な火球の魔法で、これほど巨大な爆発範囲を作り出すのを見たのは初めてだった。
あの伝説とまで呼ばれた生物が、威力を増幅させただけの、ただの火球の一撃で跡形もなく消し飛ぶなんて? だ……誰が、こんなことを……
「木のお姉ちゃん!!」
誰かが、木の上から俺を呼んだ。ちょうど枝の真上で、宙に浮きながら。それは……
「ア……アレックス??」




