第五十五話 ポーションが効かない町
遠方の町から緊急の依頼が届いた。
『治療薬がほとんど効かなくなった。
原因不明』
リオンとルーシェは馬車で現地へ向かった。
町の病院では、普段なら治る軽い傷さえ回復が遅れていた。
「薬の品質は正常です」
現地の薬師が検査結果を見せる。
リオンは患者の水、食事、空気、生活環境を調べた。
ルーシェが気づいたのは、町の井戸水に含まれる微量の鉱物だった。
「これ、薬の反応を邪魔してませんか?」
「調べてみよう」
試験管に井戸水を一滴加えると、回復薬の色が濁った。
原因は新しく掘られた鉱山から流れ込んだ成分だった。
「井戸を全部止めるんですか?」
「飲み水を確保してからね。まず別の水源を探そう」
町の人々と協力し、浄水と薬の使用方法を改善した。
一週間後、病院の治療成績は元に戻った。
ルーシェは帰り道で呟いた。
「薬だけ見ていたら、絶対に気づきませんでした」
町の病院には、同じ薬を飲んでも回復しない患者が並んでいた。
「偽物でしょうか」
ルーシェが尋ねると、リオンは首を振った。
「製造番号も成分も正常だ。別の原因を探そう」
患者の生活記録を比べると、ある共通点が見つかった。井戸の水を飲んでいる人ほど、薬の効きが弱い。
「水に何か混じっている?」
調べると、上流の古い鉱山から流れ出した鉱物成分が、薬の働きを妨げていた。
だが町長は首を振った。
「井戸を閉めたら、町の水がなくなる!」
「閉めないで放置すれば、治療が効かない人が増えます」
ルーシェは言い返しかけ、町の地図を見た。水を運ぶ道は一つしかない。
「まず病院と学校へ別の水を届けましょう。井戸は順番に調べて、使えるものだけ残します」
町長は黙って頷いた。
住民は水を運び、薬師は検査を続けた。数日後、別の水を使った患者から回復の兆しが見えた。
「薬を強くすれば解決すると思っていました」
医師が言うと、リオンは首を振った。
「薬が効かないとき、薬だけを疑うのは危ない。俺も最初はそうだった」
ルーシェは町の掲示板に書いた。
『薬の効果が弱い場合は、飲み水と生活環境も確認すること』
帰り際、町長が深く頭を下げた。
「薬を届けてもらうより、大変な仕事を頼んだな」
「でも、次からは町の人たちで守れます」
ルーシェはそう答えた。




