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ポーション作りの錬金薬師  作者: レモンティー


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第三十七話 副作用を売る商会

新聞を見た商人たちが工房へ押しかけた。

怒っている者もいれば、金の匂いを嗅ぎつけた者もいる。

「副作用を消す薬を独占販売させてください!」

豪華な服の商人が金貨袋を置いた。

「患者一人につき金貨五枚。利益は折半で」

ルーシェが金貨の量に目を丸くする。

リオンは袋を押し返した。

「治療費を払えない人は?」

「それは商売ですから」

「じゃあ断る」

商人は顔を引きつらせた。

「商機を逃しますぞ」

「人の不調を商機にするのは好きじゃない」

追い返した後、ルーシェが尋ねた。

「でも無料だと工房が続きません」

「だから仕組みを変える」

リオンは薬の調合記録を三つに分けた。

高価な材料が必要な部分、安価な材料に置き換えられる部分、誰でもできる検査工程。

「薬を安くするだけじゃ足りない。作る人を増やす」

「他の薬師に教えるんですか?」

「そう。検査方法も全部」

その夜、工房の裏口に小さな箱が置かれた。中には破れた研究日誌が一冊。

表紙にはこう書かれていた。

『回復反動を他者へ移す技術』


三日後、薬材の配達が止まった。いつも朝一番に来る商人の姿がない。

ルーシェが仕入れ先を回ると、どこも同じ答えだった。

「すみません。大きな商会から、あの工房には卸すなと」

工房に戻ったルーシェは帳簿を開いた。手持ちの解毒草は四日分。患者は増えている。

「師匠。断っただけで、こんなことになるんですか」

「断られた側は、金だけでなく支配権を失うと思ったんだろうな」

翌朝、商会の代理人が来た。

「独占契約を結べば、材料の供給は戻ります」

「患者に金貨五枚を払わせる契約だろ」

「薬には価値がある。安売りすれば市場が壊れます」

リオンは診察室を指さした。そこには、歩けなくなった元兵士が座っていた。

「この人は金貨を持っていない。だから治さないのか」

代理人は答えなかった。

ルーシェは言った。

「安く作る方法を教えれば、誰でも治療を受けられます」

「そうなれば我々の利益が消える」

その一言で、ルーシェの迷いが消えた。

リオンは薬師組合へ出向き、検査工程と低価格の代替材料を公開した。

代わりに品質記録を共有すること、患者に危険な配合を隠さないことを条件にした。

初日は誰も手を挙げなかった。商会の報復を恐れていたのだ。

そこへ、年老いた町の薬師が立ち上がった。

「わしの店なら材料がある。昔、あんたに助けてもらった恩がある」

一人が立つと、もう一人が続いた。翌日には五軒の工房が共同で材料を融通することになった。

「独占を断って、競争相手を増やしたんですね」

ルーシェが呆れたように笑う。

「患者に必要なのは、俺の工房じゃない。安全な薬だ」

その夜、裏口に届いた破れた日誌を開いたリオンの笑顔が消えた。

表紙にある言葉は、商会の利益争いよりはるかに恐ろしい技術を示していた。

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