↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポーション作りの錬金薬師  作者: レモンティー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
34/100

第三十四話 飲んだ人に合わせて変わるポーション

翌朝、ルーシェは五十人分の予約票を見て固まった。

「師匠。私の腕はまだまだ未熟です。」

リオンは昨日の過剰発毛事故の記録を広げた。

同じ薬でも効き方は人によって違う。

そこで考えたのが、飲んだ人の体温や魔力の流れを読み取り、効き目を自動調整する薬だった。

「つまり、薬が患者を診察するんですか?」

「そういうこと」

試作品を一滴、培養皿に落とす。薬液は青から緑へ変わった。

ルーシェが手を近づけると黄色になった。

「色が変わった!」

「体質の違いを検出してる。まだ治療はできないけどね」

二人が喜んでいると、受付にいた商人が叫んだ。

「先生! 昨日の薬、うちの父には効きませんでした!」

老人は静かに帽子を脱いだ。頭皮には変化がない。

リオンは新しい薬を一滴垂らす。薬液は真っ黒になった。

「これは……」

「毛根が眠ってるんじゃない。別の薬に抑えられてる」

老人は顔を曇らせた。

「十年前、王都の有名な薬師から若返り薬を買ったんです」

リオンは記録帳を閉じた。

「ルーシェ。予約は一度止めよう」

「ええっ、五十人もいるのに?」

「もっと大事な仕事ができた。薬が効かない理由を調べる」

その夜、老人の持参した古い瓶の底から、王宮の研究所で使われる封印印が見つかった。


リオンは培養皿を三枚並べた。一枚目には健康な皮膚の検体、二枚目には慢性的な炎症を起こした検体、三枚目には薬剤への反応が弱い検体。

「まずは同じ量を入れる。何が起きるか予想してみろ」

「健康なものは普通に反応して、炎症のあるものは……強く反応するでしょうか」

「予想は記録しておけ。結果と違っても消すな」

ルーシェが滴下すると、一枚目は薄い緑、二枚目は激しく泡立ち、三枚目は色が変わらなかった。

「二枚目は危険です!」

「そうだ。反応が強いことと、治療が成功することは違う」

リオンは薬液を中和し、計量器に小さな印を付けた。

「体温、魔力、過去に飲んだ薬。患者の条件は毎日変わる。自動調整と言っても、万能にはできない」

二人は試作品を四種類に分け、投与前の確認項目を増やした。体温が高いときは濃度を下げる。魔力が不安定なときは薬効を停止する。未知の反応を検出したら、色が黒くなり投与を禁止する。

「黒は失敗の色ですか?」

「違う。止まれた証拠だ」

午後、商人に付き添われた老人がやってきた。帽子を脱ぐ指が震えている。

「息子に頼まれて来たんです。もう歳だから仕方ないと思っていたんですが」

ルーシェは検査票を一つずつ埋めた。皮膚の状態、眠りの質、以前使った薬。若返り薬の話になった瞬間、老人の視線が落ちた。

「十年前は、夢のようでした。朝起きても疲れず、鏡を見るのが楽しみで」

「その後は?」

「数年前から、少しずつ。手の傷が治らない。階段がつらい。医者には歳のせいだと言われました」

新薬の検査液は黒く染まった。ルーシェは手を止めた。

「この方には投与できません」

「よく言った」とリオンは答えた。「五十人の予約より、この一人を見逃さない方が大事だ」

老人は肩を落としたが、リオンは椅子を引き寄せた。

「薬が効かない理由は調べられる。俺はそこから始めたい」

ルーシェは予約者全員に事情を説明する手紙を書いた。苦情が来るのは分かっていた。それでも、検査を飛ばして瓶を渡すことはもうできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。