第三十一話:弟子の一歩
・朝の工房
朝。
静かな工房。
……のはずだが。
ルーシェは机に突っ伏している。
ルーシェ
「……腕が……死にました……」
机の上には大量の記録。
びっしりと書かれた観察データ。
リオン
「まだ軽い方」
ルーシェ
「これで軽いんですか!?」
リオン
「慣れる」
ルーシェ
「師匠の“慣れる”は信用できません!!」
・課題
リオンは小瓶を置く。
「今日はこれ」
ルーシェ
「……嫌な予感しかしません」
リオン
「発毛薬の簡易版」
ルーシェ
「いきなり難易度おかしいですよね!?」
・初挑戦
リオン
「作って」
ルーシェ
「説明!!工程説明ください!!」
リオン
「昨日やった」
ルーシェ
「やってません!!見てただけです!!」
リオン
「同じ」
ルーシェ
「違います!!全然違います!!」
・調合開始
ルーシェは深呼吸。
「……やります」
薬材を並べる。
手が少し震える。
(湿度……温度……空気の流れ……)
昨日の記録を思い出す。
リオンは何も言わない。
ただ見ている。
・違和感
薬液がわずかに揺れる。
ルーシェ
「……あれ?」
リオン
「気づいた?」
ルーシェ
「空気……動いてる?」
リオン
「正解」
ルーシェ
「え、これ制御しないとダメなやつですか!?」
リオン
「基礎」
ルーシェ
「基礎のレベルおかしい!!」
・修正
ルーシェは慌てて装置を操作する。
霧を出す。
空気を整える。
少しずつ。
薬液が安定していく。
リオン
「いい」
ルーシェ
「ほ、本当ですか!?」
リオン
「と思ったけどまだ甘い」
ルーシェ
「やっぱり!!」
・完成?
数分後。
小瓶に液体が完成する。
ルーシェ
「……できた?」
リオン
「試す」
ルーシェ
「自分で!?」
リオン
「大丈夫」
ルーシェ
「その“大丈夫”が一番怖いんです!!」
リオン
「小動物を捕まえて実験するよ」
・実験
リオンはほんの少し使う。
数秒。
変化なし。
ルーシェ
「……あれ?」
リオン
「失敗」
ルーシェ
「ですよね!!」
・原因
リオン
「温度がズレた」
ルーシェ
「そんな微差で!?」
リオン
「重要」
ルーシェ
「繊細すぎません!?」
・再挑戦
ルーシェは歯を食いしばる。
「もう一回やります」
リオン
「頑張って」
ルーシェ
「今ちょっと師匠っぽかったです!!」
・集中
今度はゆっくり。
丁寧に。
空気。
温度。
湿度。
“感じる”。
ルーシェ
「……これか」
リオンの視線がわずかに変わる。
・成功
薬液が安定する。
今度は揺れない。
ルーシェ
「……できた」
リオン
「試す」
ルーシェ
「自分で!?」
リオン
「小動物を捕まえて実験ね」
使用。
数秒。
ほんのわずか。
**産毛。**
ルーシェ
「出た……!」
リオン
「成功」
ルーシェ
「やったぁぁぁ!!」
・余韻
ルーシェはその場に座り込む。
「できた……私……作れた……」
リオン
「初めてにしてはいい」
ルーシェ
「褒めてます!?」
リオン
「かなり」
ルーシェ
「やったぁ……!」
・締め
リオンは次の薬材を出す。
「次」
ルーシェ
「え?」
リオン
「応用編」
ルーシェ
「休憩!!休憩ください!!」
リオン
「却下」
ルーシェ
「ですよねぇぇぇ!!」
笑いと悲鳴が混ざる。
だが確かに。
一歩、進んだ。
弟子として。




