第三十二話:役割委譲
余韻が残る工房。
ルーシェはまだ座り込んでいる。
小瓶を見つめたまま。
ルーシェ
「……本当に、できたんだ……」
リオンは次の薬材を手に取りながら、ふと口にする。
「今後、頭皮の対応はルーシェに任せることにする」
ルーシェ
「……はい?」
ゆっくり顔を上げる。
ルーシェ
「え、今なんて言いました?」
リオン
「頭皮関連は全部任せる」
ルーシェ
「全部!?」
リオン
「発毛、予防、改善」
ルーシェ
「範囲広い!!」
リオン
「大丈夫、もうできる」
ルーシェ
「いやいやいや!!今たまたま成功しただけで――」
リオン
「きっと再現できる」
即答。
ルーシェ
「信頼が重い!!」
・現実
リオンは淡々と続ける。
「それだけでも食べていける」
ルーシェ
「……」
一瞬、言葉を失う。
ルーシェ
「それって……」
リオン
「需要がある」
ルーシェ
「ありすぎますけど!!見ましたけど!!」
リオン
「だから任せる」
ルーシェ
「軽いんですよ決断が!!」
・自覚
ルーシェは小瓶を見る。
(これで……人を助けられる)
(しかも……めちゃくちゃ困ってる人たちを 私が…)
ルーシェ
「……」
少しだけ、表情が変わる。
ルーシェ
「……やります」
リオン
「うん」
ルーシェ
「ただし条件があります」
リオン
「?」
ルーシェ
「ちゃんと教えてください!!全部!!」
リオン
「教えてる」
ルーシェ
「雑です!!」
・未来の話
リオン
「そのうち一人でできるようになる」
ルーシェ
「……なりますかね」
リオン
「なる」
ルーシェ
「根拠が雑!!」
リオン
「私がそうだった」
ルーシェ
「基準にしないでください!!」
リオン
「忙しくなるよ」
ルーシェ
「他人事みたいに言わないでください!!」
ルーシェは立ち上がる。
小瓶を握る。
深呼吸。
ルーシェ
「……よし」
リオン
「次、行こうか」
ルーシェ
「はい……!」
少しだけ、自信を持った声。
その日から――
“発毛担当:ルーシェ”
という新しい役割が、
静かに始まった。




