第二十八話:静かな異常
・ギルド
ギルドマスターが腕を組む。
「今ギルドに回ってる依頼は2つしかねぇ」
一拍。
「……どっちも普通じゃねぇがな」
リオンは掲示板を見る。
「受ける」
即答。
・依頼1
『畑の土壌改善』
ルーシェが指を差す。
「これ!いいですね!」
「平和なやつ!」
リオンは紙を読む。
「行ってみよう」
即答。
・現地(畑)
土。
一見、普通。
だが――
リオンはしゃがむ。
指で土を触る。
「……死んでるね」
ルーシェ
「死んでるって何ですか土が!!」
リオン
「菌がいない」
「栄養循環が止まってる」
ルーシェ
「つまり?」
リオン
「ただの砂」
ルーシェ
「最悪じゃないですか……」
・処理開始
リオンは小瓶を取り出す。
透明。
何の特徴もない。
「環境再起動する」
ルーシェ
「今なんて言いました?」
リオンは瓶を開ける。
霧のようなものが広がる。
・一瞬
風が止まる。
音が消える。
次の瞬間――
土が“呼吸”を始めた。
ルーシェ
「えっ……」
「えっ??」
リオン
「戻った」
・畑の人々
「……土が黒い……!」
「柔らかい……!」
「これ、生きてる土だ……!」
ルーシェ
「……。」
・依頼2
ギルドに戻る。
掲示板。
『井戸水の味が変』
ルーシェ
「これも普通ですね!」
リオン
「重金属反応」
即答。
ルーシェ
「普通に怖い単語やめてください!!」
リオン
「行ってみよう」
・現地(井戸)
村。
井戸。
水を汲む。
村人
「最近、鉄っぽい味がして……」
リオンは覗き込む。
「……下に鉱脈水が混ざってる」
ルーシェ
「なんで分かるんですか」
リオン
「匂い」
ルーシェ
「……。」
・処理
リオンは井戸の縁に手を置く。
「流れを分離する」
「水系は簡単」
ルーシェ
「普通は“簡単”じゃないです!!」
・井戸
一瞬、揺れる。
水面が分かれるように波打つ。
次の瞬間。
透明度が一気に変わる。
・村人
「うまい!!」
「水がうまい!!」
「昔の味だ!!」
ルーシェ
「水の味ってそんな簡単に変わるんですか!?」
リオン
「変わるよ」
「分かる人には分かる」
・帰り道
街道。
夕方。
ルーシェ
「今日の依頼、普通じゃなかったですよね?」
リオン
「普通だった」
ルーシェ
「どこがですか!!」
リオン
「規模が小さい」
ルーシェ
「小さくないです!!」
ルーシェは空を見る。
(畑を生き返らせて)
(水を正常化して)
(それを“普通”って言う人と一緒にいる)
ルーシェ(小声)
「……もう感覚が狂ってきた気がする」
リオン
「次の依頼は?」
ルーシェ
「聞かないでください!!」
・締め
世界は今日も、
リオンにとっては「軽い調整作業」でしかなかった。




