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ポーション作りの錬金薬師  作者: レモンティー


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第二十二話:均す者と侵す者

王都の空。

そこには何もない。

――本来なら。

だが今は違う。

見えない層が、幾重にも重なり、

空そのものが“戦場”になっていた。

白い霧。

リオンの中和剤。

それが街全体を覆い、

ゆっくりと毒を削り取っていく。

だが――

「……干渉が強い」

リオンは空を見上げたまま呟く。

霧が、歪む。

押し広がるはずの流れが、

途中で“折れる”。

まるで、見えない壁に叩きつけられているように。

「これ……完全に止められてますよね……!」

ルーシェの声が揺れる。

恐怖と理解が、同時に来ている。

「止められてるわけじゃない」

リオンは首をわずかに振る。

「“流れを奪われてる”」

「……え?」

「押し返してるんじゃない」

目が細くなる。

「“こっちの広がり方を書き換えてる”」

ルーシェの背筋に寒気が走る。

「そんなの……」

「できる人間は限られる」

即答。

「しかも、この精度」

一瞬だけ、間。

「……内部の人間だね」

「やっぱり……!」

「ほぼ確定」

空気が、さらに重くなる。

・王宮・深部

人の気配がない区画。

光も届かない場所で、

“それ”は動いていた。

「広域中和……想定通り」

影の人物が、静かに呟く。

その手には複数の瓶。

色の違う液体が、淡く揺れる。

「だが――浅い」

一本を持ち上げる。

灰色。

濁った霧が、瓶の中で渦を巻く。

「均すだけでは、勝てない」

傾ける。

空気に溶けるように、霧が放たれる。

「毒とは“侵すもの”だ」

その声には確信があった。

「形を崩し、構造を壊し、意味を奪う」

「均一化など、防御にすぎない」

わずかに笑う。

「防御は、いずれ破られる」

・屋上

風が変わる。

一瞬で分かる。

空気が“重くなる”。

「……来た」

リオンの声が低くなる。

次の瞬間。

ジュッ――

一部の霧が、“焼けたように消える”。

「なっ……!?」

ルーシェが声を上げる。

「消された!?」

「違う」

リオンは冷静だ。

「分解された」

視線が鋭くなる。

「しかも――構造指定で」

ルーシェの理解が追いつく。

「……解析されてる……!?」

「うん」

あっさりと頷く。

「こっちの薬、読まれたね」

普通なら絶望する場面。

だが――

リオンは、笑った。

ほんのわずかに。

「いいね」

「ちゃんと“戦ってる”」

・対抗

「次、行くよ」

新しい瓶を取り出す。

青みがかった液体。

「これは?」

「“流れを整える”」

「え……?」

「向こうが歪めるなら、正す」

当然のように言う。

装置にセット。

レバーを引く。

青い霧が、白と混ざる。

そして――

空気が、変わる。

「……あっ」

ルーシェが息を呑む。

乱れていた霧が、

“滑るように”広がり始める。

ぶつからない。

止まらない。

“通る”。

「流れが……戻ってる……!」

「まだ浅いけどね」

リオンは止まらない。

「でも“土台”は取った」

・侵食の強化

ピリ、と空気が裂ける。

今度は、広範囲。

白い霧が、一気に削られる。

「さっきより範囲が……!」

「強化してきたね」

リオンの声は変わらない。

だが目は、完全に戦闘状態。

・王宮・影

「補正をかけてくるか」

影の人物が呟く。

「だが、遅い」

赤い液体を取り出す。

わずかに脈動している。

「中和そのものを“否定する層”」

それを解放する。

「均すこと自体を、無意味にする」

空気が、侵される。

「さあ」

「どこまで耐える」

・崩壊の兆し

屋上。

リオンの目が細くなる。

「……なるほど」

「何がですか!?」

「中和が効かない層を作られた」

ルーシェの顔が凍る。

「そんなの……どうしようも……」

「いや」

即答。

一切の迷いなし。

「問題ない」

「え……?」

リオンは、最後の瓶を取り出す。

それは――

あまりにも静かだった。

色もない。

動きもない。

「それ……」

「“順応型”」

短く。

「相手に合わせて変わる」

ルーシェが言葉を失う。

「そんなの……制御できるんですか……?」

「する」

当然のように。

「急変させない」

「段階的に合わせる」

「だから――壊れない」

装置にセット。

レバー。

解放。

透明な霧が、広がる。

何も起きない。

一瞬、世界が止まる。

だが――

数秒後。

「……戻ってる」

ルーシェが震える声で言う。

消えていた領域に、

再び霧が“染み込む”。

弾かれない。

拒否されない。

「適応してる……!」

「時間はかかる」

リオンは静かに言う。

「でも」

空を見上げる。

「“必ず追いつく”」

・空

均す力。

侵す力。

静かに、確実に削り合う。

だが今――

均す側が、“崩れない”。

影の人物が、初めて眉を動かす。

「……適応」

予想外。

だが――

笑う。

「面白い」

瓶を握る。

「ならば」

声が低くなる。

「侵食を“段階的”にするだけだ」

思想の更新。

対抗の深化。

「均す者よ」

「どこまで耐える」

・屋上

風が、さらに重くなる。

圧が増す。

「……来るね」

リオンが呟く。

ルーシェの声が震える。

「次は……何が来るんですか……」

「本命」

短い。

それだけで十分だった。

王都の空。

均す者と、

侵す者。

どちらが上かではない。

どちらが“折れないか”。

その勝負が、本格的に始まった。

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