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ポーション作りの錬金薬師  作者: レモンティー


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第十五話:髪と呼び出し

翌日。

ギルドは――異様だった。

「発毛薬ください!!」

「俺にもくれ!!」

「副作用込みでいい!!」

絶叫。

怒号。

そして――ハゲ。

「……なにこれ」

ルーシェが呆然と呟く。

目の前には、見事な頭頂部たち。

年齢も、職業もバラバラ。

ただ一つ共通しているのは――

「髪がほしい!!」

強い意志。

リオンは一瞬だけ見て、すぐに背を向けた。

「帰ろ」

「いやいやいや待ってください!?」

ルーシェが慌てて止める。

「依頼です!たぶん!」

「解毒じゃないし」

「でも報酬が……!」

リオンが足を止める。

「……いくら?」

現実的。

その時、ディグが現れる。

完全に疲れた顔だった。

「……予想以上でした」

「でしょ」

リオンは他人事のように言う。

ディグはこめかみを押さえる。

「昨日の“件”が広まりまして……」

「広まるでしょ」

「ええ……」

ディグは深く息を吐く。

「一応、依頼として成立はしています」

「ただし――」

周囲を見渡す。

「制御不能です」

その言葉通りだった。

「順番守れ!!」

「俺が先だ!!」

「いや俺の方が深刻だ!!」

カオス。

完全にカオス。

ルーシェが小声で言う。

「……どうします?」

リオンは少しだけ考えて――

「やるなら条件つける」

ディグが即座に反応する。

「聞きましょう」

「まず、薄める」

ざわめき。

「副作用強すぎるから」

「あと、量制限」

「一日三人まで」

「それ以上はやらない」

「それと――」

少しだけ間を置く。

「完全自己責任」

即断。

ディグは即答する。

「受理します」

そして振り返る。

「聞け!」

声を張る。

ギルド内が静まる。

「発毛依頼は制限付きで受理する!」

「条件は三つ!」

ざわめきが再び広がる。

「一日三名まで!」

「薬は希釈される!」

「副作用は自己責任だ!」

一瞬の沈黙。

そして――

「それでいい!!」

「やってくれ!!」

「頼む!!」

即決。

覚悟が違う。

ルーシェが呟く。

「……すごい執念」

「うん」

リオンも少しだけ引いていた。


数時間後。

「次の人」

ギルドの受付嬢とルーシェが呼ぶ。

すっかり“受付”が板についている。

「お願いします……!」

中年の男が震えながら座る。

リオンは淡々と薬を渡す。

「薄めて塗る」

「量守って」

「はい!」

数分後。

「……おお?」

産毛。

「おおおお!?」

歓喜。

だが――

「……あれ?」

少しだけ、伸びる。

「……止まった?」

リオンが頷く。

「それが正常」

「え……?」

「前のは濃すぎ」

現実。

「……でも生えた!!」

男は泣いていた。

ルーシェが少し微笑む。

(これはこれで、いい仕事かも)

そんな空気の中――

扉が開いた。

ギルド内の空気が、一瞬で変わる。

静寂。

入ってきたのは、黒い外套の男。

無駄のない動き。

鋭い視線。

「……誰?」

ルーシェが小さく呟く。

ディグが一瞬で姿勢を正す。

「……王都の使者」

空気が凍る。

男はまっすぐリオンを見る。

「リオン殿」

名前を呼ぶ。

周囲がざわつく。

「……なに?」

リオンはいつも通り。

男は一歩近づく。

「王都より、召喚命令が出ている」

完全に場違いな言葉。

「……は?」

ルーシェが固まる。

「内容は機密だ」

「だが――」

一瞬だけ間を置く。

「“毒”に関する案件であることだけは伝えておく」

リオンの目が、わずかに細くなる。

空気が変わる。

「拒否権は?」

リオンが聞く。

男は即答する。

「ある」

「だが推奨はしない」

静かな圧。

ディグが口を開く。

「……王都案件ですか」

「ええ」

短い返答。

ギルド内がざわつく。

「王都って……」

「なんであいつが……」

リオンは少しだけ考えて――

「……後で決める」

それだけ言った。

男は頷く。

「明日までに返答を」

そう言って去っていく。

再び、ざわめき。

ルーシェが小さく言う。

「……行くんですか?」

リオンは答えない。

ただ――

「次の人」

いつも通りに戻る。

だが、その空気はもう同じではなかった。

発毛依頼の列は続く。

笑いと歓喜。

その裏で――

大きな流れが、確実に動き始めていた。

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