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ポーション作りの錬金薬師  作者: レモンティー


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第十三話:既存の薬師たち

冒険者ギルド。

昼過ぎ。

依頼対応を終えた直後だった。

「さっきのも安定してましたね……」

ルーシェが小さく息を吐く。

「うん。昨日より手が早い」

リオンは淡々と答える。

その時――

「……ずいぶんと、好き勝手やってくれるじゃないか」

低い声が割り込んだ。

振り向くと、数人の男たちが立っていた。

白衣に近い装束。

薬瓶。

整えられた髪。

一目でわかる。

「……薬師?」

ルーシェが小さく呟く。

男の一人が前に出る。

「ギルド専属薬師、バルドだ」

名乗りながら、リオンを睨む。

「君が噂の“ゆっくり効かせる”錬金薬師か」

「そうだけど」

リオンはあっさりと答える。

その態度に、周囲がざわつく。

バルドの眉がわずかに動く。

「……昨日の処置、見させてもらった」

「随分と危険なことをする」

「危険?」

リオンが首をかしげる。

「どこが?」

その一言で、空気が張り詰めた。

「即効性の解毒を行わず、あえて毒を体内に残すなど……常識外だ」

「失敗すれば、確実に死ぬ」

「理論上はね」

軽い返答。

バルドのこめかみがぴくりと動く。

「……理論上?」

「制御できれば問題ないってこと」

「できる保証は?」

「あるからやってる」

即答。

一切の迷いがない。

周囲の空気が変わる。

「……なんだあいつ」

「自信ってレベルじゃねえぞ」

ざわめき。

バルドの後ろにいた男が口を開く。

「ギルドが君を優遇していると聞いた」

「本当か?」

その視線が、ディグへ向く。

ディグは冷静に答える。

「優遇ではありません。適切な評価です」

「ふざけるな」

低い怒声。

「我々は長年、このギルドを支えてきた」

「実績も、信頼もある」

「それを、どこの誰とも知れない若造に――」

「別に奪ってないけど」

リオンが遮る。

「できることやってるだけ」

あまりにも自然な言葉。

だが――それが一番刺さる。

空気が冷える。

「……君は理解していない」

バルドが一歩近づく。

「我々は命を預かる仕事をしている」

「奇をてらったやり方で評価を得るなど――」

「奇をてらってないよ」

また遮る。

「ただ、無駄に強い薬使ってないだけ」

静かな声。

だが鋭い。

「毒を全部消す必要ないなら、消さない方が体にいい」

「負担も少ないし」

「回復も早い」

誰も反論できない。

正論だからだ。

だが――

「……理想論だ」

バルドが吐き捨てる。

「現場では、確実性が最優先だ」

「失敗が許されない以上、強い薬を使うのは当然だ」

リオンは少しだけ考えて――

「失敗してるじゃん」

一言。

完全に止まる。

「……何?」

「昨日の人、普通の解毒じゃ間に合ってなかったでしょ」

静かに事実を突く。

「つまり、その“確実性”足りてない」

空気が凍る。

バルドの顔がわずかに歪む。

後ろの薬師たちも言葉を失う。

周囲の冒険者たちがざわつき始める。

「……確かに昨日は……」

「いつものじゃ無理だったな」

小さな声が広がる。

それが、追い打ちになる。

「……言わせておけば」

バルドが低く呟く。

「君のやり方は、いずれ事故を起こす」

「その時、責任が取れるのか?」

リオンは少しだけ考えて――

「取れるよ」

あっさり。

「私がやったなら、私が責任取る」

その言葉に、迷いはなかった。

ルーシェが横を見る。

(この人……)

バルドは何も言えなくなる。

一瞬の沈黙。

そして――

「……いいだろう」

ゆっくりと息を吐く。

「ならば証明してもらおう」

周囲がざわつく。

「次の依頼で」

「我々も同行する」

「そのやり方が本当に安全か、見極めさせてもらう」

挑戦。

完全な対立ではない。

だが、試される形。

リオンは肩をすくめる。

「別にいいけど」

あっさり承諾。

バルドは踵を返す。

「……楽しみにしている」

去っていく薬師たち。

重い空気だけが残る。

ルーシェが小さく息を吐く。

「……敵、増えましたね」

「そう?」

リオンは軽く言う。

「ただの確認でしょ」

気にしていない。

ルーシェは少しだけ苦笑する。

(この人、本当にぶれない……)

その時、ディグが口を開く。

「……申し訳ありません」

「いえ」

リオンは首を振る。

「むしろ都合いい」

「証明できるし」

静かな言葉。

だが自信に満ちている。

外ではまた、依頼の声が上がる。

「解毒できる奴はいないのか!」

リオンが立ち上がる。

「ほら、仕事」

ルーシェも頷く。

「はい」

その背中を、複数の視線が見ていた。

疑い。

警戒。

そして――興味。

新しい風は、確実に波を起こしていた。


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