表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/17

04.まさか魔法があるようです


 ――おそらく、生後二週間ほどが経過した。


 今日は久しぶりに、寝室の外に連れ出された。

 廊下では、石造りの窓から柔らかな風がやってきて、私の頬を撫でてくる。気持ちが良い。

 普段いる部屋には硝子窓があるけど、廊下には硝子窓はないみたいだ。

 この時代の硝子は高価なのだろうか。硝子といっても現代ほど透き通ったものではないけど。


 使用人に抱き上げられながら廊下を進む。


 高い天井には木の梁が走り、壁には大きな風景画や見たことのない紋章が飾られていた。

 石造りの窓の向こうには、朝露に濡れた芝生と、色とりどりの花壇が広がっている。

 遠くでは噴水が陽光を受け、小さくきらめいていた。



 やがて、大きな扉が開かれた。

 部屋の床は白い石で敷き詰められ、壁際には大小さまざまな木桶や白い布が整然と並べられている。石鹸を思わせる清潔な香りが漂っていた。


 もしかして、ここ、お風呂では…!?

 

 使用人の1人が空っぽの木桶に手をかざした。

 水差しでも持ってくるのだろうか。そう思った次の瞬間だった。


 掌の下の空間が揺らいだ。小さな雫がいくつも現れ、それらが吸い寄せられるように集まり、一筋の水流となって木桶へ流れ込んでいく。

 あっという間に木桶に水が溜まった。


 なに、今の。私は瞬きを繰り返した。

 ……なにこれ。ありえない!

 もしかして、魔法……?この世界には魔法があるの?


 さらに、使用人が手を水の中に入れた。すると、水面がゆらりと揺れる。

 やがて、木桶から湯気が立ちのぼり始めた。


 ――お湯になった!


 胸が高鳴る。ここは、魔法のある異世界なのかもしれない。

 日本では絶対にありえない。改めて、違う世界に来たのだと実感する。


 それにしても、あの使用人だけが特別なのだろうか。

 それとも、この世界では誰でも魔法を使えるのだろうか。


 ――私なんかでも魔法を使えたりするのだろうか?


 使用人に仰向けの体を洗われながら、私は腕を少し突き上げて、水を思い浮かべてみた。

 ゆらゆらと漂う水……。透明な水。光を受けて反射する水……。


 すると、何もなかった場所に、小さな雫が一つ浮かび、消えた。

 見間違いだろうか。


 私はもう一度、水を想像した。

 すると、目の前には、再び雫が現れた。雫が増え、集まり、拳ほどの透き通った水の塊になった。

 やった!本当にできた!――次の瞬間、水塊が飛散した。


「あぶっ」

 待って、溺れる、危なっ。上を向きながら目の前に水を出現させちゃいけません!

 生後二週間で死にそうになりながら、なんとか息を整える。自滅していて恥ずかしい。


 あたりを見回すと、使用人たちがとてもざわついていた。


「Dunna ルシア ha usà magia...!?(ルシア様が魔法を使った……!?)」

「Impossia......(そんなはずは……)」

「Be duas emnas d'eta......(まだ生後二週間だぞ……)」


 体を動かすと、使用人たちの肩が跳ねた。警戒しているみたいだ。

 ……確かに、赤子がいきなり魔法を使ったら怖い。私だって逆の立場なら警戒するだろう。使用人さんたちごめんなさい。


 魔法を使えて嬉しかったけど、むやみに使用することはやめておこう。


 ……とは、思ったけれど、次はもう少し安全な方法で試してみたい。


 この世界には魔法がある。

 そして、どうやら私にも使えるらしい。


 早く大きくなりたい。

 そう思うと、なんだか少しだけ楽しみだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ