コンビニ帰りにこんにちは
「……」
「そんなに拗ねんなよなぁ」
「あの先輩、引っかき回すだけ回しておいて、いつの間にかいなくなるとか本当にたちが悪い」
「紫電先輩なぁ。あの人アホみたいに速いよな」
今朝の騒動の後、恋慈と紫電先輩との喧嘩が始まったのだが、その先輩が恋慈を相手にしながらあちこちの1年にちょっかいをかけた結果、1年同士大喧嘩に発展してしまい、それはお昼ごろまで続いた。
そんな大騒動を経て放課後になり、恋慈は幸之信と帰路に着いているのだが、1年だけが教員に叱られ、紫電先輩はお咎めなしという結果に恋慈は納得していなかった。
「まあいいじゃん。あんだけ暴れたんだし、これで暫くは大人しくしてるっしょ」
「そうだといいんだがな――ところで幸、凛はどうした?」
「ん? ああ凛ちゃん――凛之丞なら今日は用事があるとかで急いで帰っていったよ」
「そうか、あいつにも熱中できる何かが見つかればいいのだがな」
「……ほんとに」
恋慈と幸之信が揃ってため息を吐く。
少し空気が落ち込んだのだが、恋慈が幸之信に奢ってもらったあんまんを口に運んだ。
「お前、この夏も始まる初夏に良くあんまんなんて食ってられるよな」
「そういうお前も買っているだろう」
「いやだってあのコンビニの店長、あんまん売る時だけやたら圧が強くない?」
「春夏秋冬365日24時間あんまんを売っている猛者だぞ。あの店長は俺が子どもの時からあそこであんまんをひたすら売りさばいている」
「どんだけあんまん売りたいんだよ!」
「なんでも昔本社であんまん開発をしていた時に、あまりの忙しさと過酷な開発過程で脳を焼かれ、あんまんのことしか考えられなくなった故の行動だそうだ」
「闇深いな! まあ旨いからいいけどさぁ」
幸之信は文句を言いながらもあんまんを食べきり、満足したように一緒に買っていたお茶を飲み目を閉じて息を吐いた。
「満足――」
「お」
そして幸之信が目を開けるのを横目に、恋慈は変わる景色を見ていた。
「おっ、今度は洞窟かぁ」
「は?」
コンクリートの道ではなく、ごつごつとした岩がむきだしになった道に、天井には隆起した岩が雫を垂らしており、大きな洞窟のようであった。
「あらかじめ言っておくぞ。多分ここは魔物とか魔法がある世界だ」
「は――?」
こうして幸之信を巻き込んだ異世界転移2日目が始まるのだった。




