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朱鷺海 恋慈の異世界⇔現代、拳で語れ!  作者: 筆々
1章 チュートリアル

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6/30

異世界日帰り一日目!

 一頻り涙を流し、どこかすっきりとした顔をしている風に見えなくもないゴリラ――ゴリ子はその後、レンジを友好的な空気感で元居た村に案内した。



 最初に来たときは気が付かなかったのだが、ちらほらと火事の生き残りがおり、複数体のゴリラがゴリ子と一言二言交わすと、突然はしゃぎだし、残った家屋からこれでもかと食料と飲み物を取り出し、村の中心に大きな葉を敷いた箇所にレンジを座らせ、その正面に食材――バナナを置いていた。



「おいおい、ゴリ子にも言ったが、バナナは分け合うものだぞ。俺1人では食いきれん」



「うほうほうほっ! うっほう!」



 ゴリ子の声に、ゴリラたちがドラミングをしながらはしゃぎ始めた。

 意思疎通が出来ているのかは未だに謎だが、少なくともレンジの声は届いているらしい。



 ゴリラたちがバナナを食べ、うかがい知れない飲み物を口に運び、陽気に踊り、レンジの方を向きうほうほ言っていた。



「ああ、騒げ騒げ。新たな門出だ、今日の宴を糧にしろ」



「うっほううっほう!」



 レンジはゴリラたちから受け取ったバナナを剥き、口に運んで喉を鳴らして笑う。

 すると隣にいたゴリ子が手を差し出してきたのを見て、レンジは首を傾げる。



「うほううほううほうほ、うほうっほ、うほうほ、うほほ、うほ、うっほ」



「ふむ、ふむ……」



 レンジは彼女の手を握り返すと、ゴリ子はふっと微笑みを浮かべたような気がした。

 そして1人と1体が固い握手を交わすと、レンジはバナナを彼女に手渡した。



「うほぅ」



「友よ」



 頷くゴリ子の瞳には親愛でも、情愛でも、ましや他人に向けるそれとは違う。憧れに近いような、それでいて対等だと認めたような――レンジの言う通り、友愛に似たような、それこそ友。まさに対等だと彼女が認めたような空気感があった。



 レンジはふっと笑みをこぼすのだが、ふとポケットに入れっぱなしだったスマホを開いた。



「む、もうこんな時間か。あと1分で日が変わるじゃないか――」



 レンジがそう言った瞬間、目の前にいたゴリ子も、景色も妙に霞む。

 眼鏡のせいではなく、世界そのものが揺れているようで――。



「え――?」



 目を開いた(・・・・・)レンジが見た景色は馴染みのある景色で、辺りは真っ暗だが、それは朱鷺海 恋慈(れんじ)が普段学校から通る自宅までの帰路。



 恋慈は戻ってきた世界に安堵するでも、今までが夢だったのかと驚くでもなく、体を震わせて天を仰いだ。



「なんっっっっっもわかんなかったぞ! ゴリラと犬としか会ってねえ!」



 当然の文句である。



「せめて説明しろぉ!」



 そんな恋慈の声も空しく、夜の帳に解けるように――ご近所迷惑上等に放たれた咆哮も誰かが答えることもなく、遠く遠くの彼方まで消えていった。



 朱鷺海 恋慈は帰ってきた。

 どこに行っていたのか、何故行っていたのか、何もかもわからずに帰還を果たした。



「日帰りかよ!」



 その通りなのだろう。

 これはこのどこかアホっぽいが義理堅く、それでいてノリのいい。さらに喧嘩はめっぽう強い朱鷺海 恋慈が日帰りで行く異世界のお話である。

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― 新着の感想 ―
まじで面白かった。登場人物が主人公とゴリラだけっていう斬新な展開も独創的でよかった。ちなみにまだ続きありますか?
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