無邪気に咲かせる鮮血の星
「残ったのは女子どもだけだ! 躊躇するな! 我らの悲願を叶えるのだ!」
「男の子ですぅ!」
コウの声が聞こえているのかいないのか、アレバフは拳を天へと突き上げた後、彼の背後に控えていた妹のミリカが持っていたウィスパー作の杖2本に手を伸ばした。
「さあ杖よ、我らに力を貸すのだ!」
「……」
しかし杖はうんともすんとも言わず、アレバフやミリカ、ローブの者たちが首を傾げる中、ウィスパーだけが人を小ばかにしたような笑みで面々に顔を向け、うんうんと頷いていた。
「じいさん、もしや不良品を掴ませたのか?」
「うんなわけないじゃろ。言ったじゃろ、その杖を扱うには条件があると」
ウィスパーの言葉に、アレバフがキッと瞳を吊り上げた。そして彼は声を荒げてその条件を教えろと言い、杖をコウとリンに向けた。
「むぅ。お前じゃ無理じゃよアレバフ」
「良いから答えろ、この2人がどうにかなってもいいのか」
「……」
レンジが障壁の中で指の骨を鳴らす中、顔を伏せたウィスパーが口を開いた。
「その杖はなんかこう、可愛い子にしか反応せん――」
「このくそジジイが!」
アレバフは杖を床に叩きつけ、頭を抱えるのだが、それを聞いていたミリカがニマっと笑みを浮かべた。
「あら、それならわたくしが――」
「え~ほんとうっ? 俺にぴったりじゃん。せ~のっポーズっ☆」
あまりにもあざといポーズをリンがした瞬間、黒い方の杖が光り輝き、リンの手に飛んで行った。
「クソがぁ!」
「やったぜっ☆」
金髪ドリルのステレオ令嬢なミリカが体を前に折り曲げて両手を開いて叫んだ。
杖はリンの方が可愛いと認識したらしい。
凛之丞は男の子である。
リンはその杖を両手で持ち、ゴルフのスイングのように振っているとアレバフが怒りの表情を浮かべた。
「貴様が手にしても其れは宝の持ち腐れだ! 今すぐそれをよこせ――」
「でーんっ」
リンが途端に体を揺らし、鼻を鳴らしたかと思うと口を開いてそのメロディーを鳴らす。
そして杖と鉄パイプを頭上に掲げた。
「でんでんでんでんデケデケデケデケでんでんでんでん――」
「ジョグレスすんな!」
コウのツッコミも空しく、杖が光り輝いて鉄パイプと混ざり合い、先端に黒い片翼があしらわれた長い棒になった。
「お~……リーチを得たぞっ☆」
「馬鹿め、その程度の術式しか使えないのであればやはり貴様は――」
「そうだった、これは魔法の杖なんだ――」
リンは棒を振り回しながらローブ姿の男に軽い足取りで近づいた。そしてその棒を振り上げ――。
「マジカル殴打☆」
ローブ男をぶん殴った。
棒で顔面をシャララララ~んと音を鳴らしてぶん殴られた男は吹っ飛んでいき、顔からなんかキラキラした何かを流しながらそのまま気を失った。見た目血は流れていない。
「とっきーこの棒凄いよ! いつもだったら鉄パイプひしゃげるくらいの力で殴ったのに、この棒折れ曲がりもしない!」
「――そうか、よかったな」
「……そんな威力で殴られておったのかあの男。効果音と見た目で全然痛そうに見えんぞ」
リンが満面の笑顔をアレバフとミリカ、そして慄いている面々に向け、その愛嬌を、その無邪気なまでの狂気を、嗤い声とともに世界に放つのだった。




