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とうとつ異世界日帰りケダモノ風味  作者: 筆々
3章 獣は幸運を憂い凛と鳴る

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楽しい魔法の利用法っ

「そ、そんな魔法が認められるか!」



 リンが杖を用いて使用した魔法に、アレバフが待ったをかけた。

 そもそもあれは魔法なのか、杖の魔法とは何なのか、わからないことばかりだが、少なくともグロ表現規制を魔法と呼ぶのは些か認められるものではないだろう。



「う~ん、あなたたちさっきから魔法はこうあるべきだとかうるさいけれど、俺から言わせればさ、なんというかぬるいよね」



「……なんだと?」



 リンは一度アレバフに目をやったのだが、すぐに興味が失せたように自分の指のネイルに目を落とし、彼に見向きをせずに言い放った。



「まあ俺は兄貴ほどさ、魔法単体(・・)に対して楽しいって気持ちは薄いんだよね。楽しくなるのはこれから(・・・・)でしょ」



「……わし、もしかしてとんでもない子に魔法を教えてしまったかの?」



 術式を展開しながら薄く嗤うリンに、ウィスパーが頭を抱えているのだが、そんな彼にレンジが胸を張る。



「馬鹿め、リンはあの程度ではないぞ。俺とコウが止めなければあいつは延々と戦い続けるぞ」



「ヤバすぎじゃろ。双子ならもっと似るべきじゃろうに」



「兄があれだからなぁ、か弱い兄を守るために弟は戦わざるを得なくなった結果があれだ」



「兄弟愛こわぁ」



 障壁の中でほのぼのするレンジとウィスパーとは反対に、激情を顔に出したアレバフが手に持っていた杖を天に掲げた。



「生ぬるいのは貴様だ!『障壁解放術式(アニムスロアー)』」



 アレバフが杖を掲げた箇所の空間が一瞬歪んだ。

 そして彼はそのまま杖を振るうのだが、その先端の――何よりも固いその障壁をリンに向かってアレバフが振り下ろした。



「――っ」



 リンはぴょんとそれを躱すと、彼がいた箇所に大きな衝撃が奔り、無傷だった床に大穴が空いた。



「……」



「どうだ、これでもまだ俺が生ぬるいと――」



「つまんな」



「は?」



「なんというか、別にあなたがどんな宗教や使命を語ろうがどうでもいいんだけれどさ、純粋に面白くないのよあなた。魔法もそうだけれど、そんなもの固い武器を持ってくれば同じこと出来るし、宿願だとか願いだと言っている割にそれに向かっている圧が弱すぎる。力めばいいってものじゃない」



「――」



 顔を引きつらせるアレバフに、リンはその棒をクルクルとバトンのように回しながら移動する。

 そしてその軽い足取りで呆然としていたローブの男の脚を引っかけた。



 ローブの男がつんのめって正面に転倒するのだが、リンが発生させた術式に顔を突っ込んだ。

 そう、空間系――つまりアイテムボックスに顔を突っ込み、そこで固定された。所謂壁尻である。



「これが俺の魔法っ☆」



 そう言ってリンが棒を思い切り振りかぶり、壁尻ローブのケツ目掛けて棒を叩きつけた。



「リリカルフルスイングっ☆」



 空間に顔を突っ込んでいるからか男の声は聞こえず、しかしそのケツからはキラキラとしたものが流れ出ており、じたばたと動きだけが騒がしい。

 そんな壁尻ローブの動きにリンが顔を赤らめ、恍惚とした表情で体を震わせた。



「あはっ☆こうすると悲鳴も聞こえなくなるんだぁ――殴り放題だねっ☆」



「ひぇっ――」



 身動きを取らない相手のケツに棒を振るい続けるリンに、ついにアレバフが恐怖した。



 そしてリンがその紅潮した顔を周囲にぐるっと首を回して見回すと――。



「あはっ☆」



 リンはそのまま風のごとく飛び出して、高速で動き回りながらローブの者たちに足払いをしかけ始めた。



「楽しい、楽しいねぇ☆」



 どこまでも可愛らしい声を発するリンとは裏腹に、その周囲では阿鼻叫喚と言った悲鳴がどこまでも響いた。

 そんな面々に、レンジはふっと笑みをこぼし、ウィスパーの肩を叩く。



「良かったなじいさん、魔法、楽しんでくれているぞ」



「思ってたんと違うんじゃが」



「リンにあんな手段を与えたらああなるのは当然だろうが」



「もっと早く言ってほしかったのぅ」

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