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朱鷺海 恋慈の異世界⇔現代、拳で語れ!  作者: 筆々
3章 獣は幸運を憂い凛と鳴る

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25/26

この場所での存在理由

「おお、異世界初グルメ」



「なんでだよ、お前3回目だろ」



「バナナしか食ってねえ!」



「……ああ、最初のゴリラ」



 魔法の講義が一区切りつき、ウィスパーは生徒たちを解散し、レンジとコウ、リンに食事をご馳走すると、街にある店に招待してくれた。

 レンジもコウも初めての異世界の文明に街並みを瞳を輝かせて見ていたが、そんな2人をリンが観察するように見ていた。



「レンジ君もコウ君も、わしの知らない言語を話すのぅ」



「なんだじいさん、バナナもゴリラも知らんのか? バナナは黄色くて、ゴリラは毛深い」



「説明の雑さよ。え~っとバナナは食べ物で、ゴリラは生き物だよっ」



「コウ君もなかなかじゃのぅ。わしのおすすめを頼んでおいたからゆっくりするとよい――ふむ、ちょいと年を取ると近くなって(・・・・・)困るわい」



「なんだじいさん、小便か? 俺も付き合うか?」



「レンジ君はデリカシーがないとか言われんか? コウ君を見なさい、顔を赤らめておるじゃろ」



「下ネタ耐性ゼロピュアボーイが」



 ウィスパーはそう言って席を立つのだが、それを見越したようにリンがテーブルを軽く叩いた。



「で、説明!」



「お前もよく何も聞かずに俺たちのノリに合わせていたな――む?」



 レンジが苦笑いを浮かべるのだが、ふとウィスパーが座っていた椅子に目をやり、ふっと笑みをこぼした。



「そういうのは慣れてるから――だてにとっきーと兄貴と行動を共にしてないよ。それでとっきー、これなに?」



「ん? ああ――知らん」



「何の説明もないからなぁ。俺は2回目、レンジは俺と行く前に一回ゴリラと共闘してるらしい」



「何それ激アツじゃん。俺もゴリラと戦いたかったぁ」



「そんな良いものばかりじゃないんだよリンちゃん。俺が初めて行ったときなんて最悪だったよ。イルムとおじいちゃんは良い人だったけれどさぁ」



 コウが頬を膨らませて涙目になるものだから、レンジはそっとリンに2回目に何が起きたのかをかいつまんで話した。



「……へ~。兄貴が怪我したのはそれが原因かぁ。しかも日帰りなんだ」



「ああ、だから深くかかわっても最後まで面倒みられるかはわからん。今回のこともそうだが、あんまり長引くようなら事前に説明しておくのが良いだろう」



「う~、でもそれ、なんか無責任みたいでいやなんだよな。おじいちゃんすっごい喜んで俺に魔法教えてくれてるけれど、日を跨げば俺たち帰っちゃうじゃん。1日しか教えられないのに、なんだか申し訳なくて――だからそれも言い出せないし……それに多分別世界から来たなんて言ったら気味悪がられるかもだし、それは辛い」



「ん~……今回は大丈夫だろ」



 レンジはそっとウィスパーが座っていた席に目をやる。



「そうだといいけれど――でもね、だからこそ、おじいちゃんの助けになってあげたい。誰かに狙われてるんだろ?」



「そうみたいだな。相手の話を少し聞いた感じ、じいさんが悪いわけではなく、じいさんの力を目当てにつけ狙っているようだ」



「なにそれ? おじいちゃん可哀想じゃん。ねえレンジ――」



 コウに上目遣いで懇願され、レンジは肩を竦ませる。

 この伊吹 幸之信という男は自分の見た目が良いことを自覚しているのか、はたまた甘えん坊気質なのを隠そうともしていないのか――どちらも天然ものであるが、彼のおねだりは基本的に効果抜群である。



「わかっている、俺も最初からそのつもりだ。時間が許す限りだが、じいさんの助けになってやろう」



「――うんっ」



「リンもそれでいいな?」



「とっきーと兄貴に従うよぅ。それにその方が楽しそうだし――けどこの状況ってなんていうか」



「うん?」



「あれを歌いたくなるね」



 顔見合わせ首を傾げるレンジとコウだが、リンが無邪気に笑うものだから、2人も釣られるように笑うのだった。

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