異世界で魔法を知る
「では少し教鞭を振るおうかのぅ。あっちにいる教え子たちは最近わしを舐めておるのか、言うこと聞かなくなったからのぅ」
「じいちゃん威厳見せて。お髭装備しただけで威厳が出ると思うなよぅ!」
「この髭は天然ものじゃよ!」
「リンちゃん、おじいちゃんを困らせないの」
「コウ君は本当に良い子じゃのぅ。孫に欲しい」
頷き大量の飴を地べたに座るコウの傍に出すウィスパーは持っていた杖でホワイトボードを叩きながら、文字を書いていく。
しかしコウもリンも口を閉じてしまう。
文字が読めない。
黒板に書かれた古い日本語すら読めない時がある2人なのに、ましてや異国語はちんぷんかんぷんで、もう1人のアホと英語の授業中、オリジナル言語を作りそれを使って会話をしていたところ教員に呼び出しを受け、納得の出来なかった眼鏡のアホと女装のアホはキーキーキーキーサルみたいに騒いでいたところ、保護者登場まで学校に常備されている檻に繋がれていたことがあるほどだ。
「どうかしたかの?」
「え、あ……ううん。その、文字は目が疲れちゃうから、お話してほしいなって」
「おおそうかいそうかい、コウちゃんはジジイとお話したいのかい」
「……うん」
目を逸らして頷くコウにウィスパーが首を傾げるが、すぐに魔法について話し始めた。
「まず我々人間が使う魔法は素質を編むと言ってな。よいしょ――」
ウィスパーが空間何かを取り出したのだが、耳に穴をあけるピアッサーのような形をした針付きの道具で、それをコウとリンに見せた。
「魔法に才能なんてもんはない。誰もが偉大になれる素晴らしき技術じゃ」
「俺もなれるぅ?」
「もちろんじゃ。じゃがリンちゃんくんは確実に魔法より暴力で偉大になれると思うわい」
「え~、そんなことないのに~」
言葉の節々に星が散っていそうな気軽さに、ウィスパーは顔を逸らした。
この老人はリンが無邪気に魔法で敵をぶっ飛ばすことを見抜いているのである。
「それでおじいちゃん、このピアッサー何に使うの? 俺耳に穴開けたくない」
「そんなひどいことせんよ。これは解放術式を血と紐づけさせるための道具じゃ」
「血と?」
「うむ――やってみるかえ?」
コウはリンと顔を見合わせると頷き、目をキュッと瞑ってウィスパーに向かって耳を差し出す。
「じゃから耳に穴なんてあけんよ~。お手々をお出し」
おっかなびっくりした風に控えめに手を差し出すコウに、リンが訝しげな眼を向けていた。
「ねえ兄貴も俺と同じ格好しようよぅ。絶対似合うって」
「しません」
伊吹兄弟を微笑ましげに見ていたウィスパーはコウの指先に針をちょんとつけ、ゆっくりとぷすりと刺す。
「痛くはないかの?」
「うん、大丈夫」
「血とは命の始まりじゃ。故に生命の根源であり、その者の全てである。血に記憶された素質を紋章によってつなぎ止め、素質を魔法として編み込む――この儀式のことを根源解放と呼ぶ」
「へ~――これで俺も魔法が使えるようになるの?」
「いんにゃ。先ほども言ったが、魔法は、『解放術式』はその素質を編み、術式とすることで発動できるようになる。コウ君が自分で自分の素質を術式にすることで、初めて魔法が行使できる。じゃよ」
ウィスパーはそう説明しながら、リンの指にもぷすりと針を刺した。
そして自身の正面に現れた解放術式を指で触れ、紋章の文字列、形などを弄っていく。
「では、次は術式についての講義じゃ」




