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朱鷺海 恋慈の異世界⇔現代、拳で語れ!  作者: 筆々
1章 チュートリアル

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2/24

第一村人発見!

「このかばんの中何も入っていないじゃないか」



 森の中を歩みながら、レンジは学校で使っている指定のリュックの中身を見ていたのだが、教科書はおろか筆箱すら入っておらず、持っているものは財布とスマホ、そして――これはこの場所に来たからこの中身。というわけではなく、教科書類はすべて学校で、他に持ってくるものがなかったから空っぽなだけである。



「む……そういえば持ってきていたな」



 財布とスマホ以外の持ち物、それはレンジのリュックに突き刺さっており、彼はそれを引き抜いた。



「武器っ」



 リコーダーである。



 高校生にもなって学校にリコーダーを持ち込む男、朱鷺海 レンジである。

 音楽の授業があったとか何か学校行事で必要だったとか、そんなことは一切なく、ただ今朝、何気なくリコーダーが目に入り、カバンに刺してきたのである。



 レンジはリコーダーを上機嫌に咥え、吹き方などほとんど覚えていなくともぴゅーぴゅー吹きながら、森の中を進んでいく。

 これが身長170ちょっとの青年の姿だ。



 そうしてお気楽な空気感のまま脚を進めるレンジだったが、ふとした気配にその足を止め、ぷひゅーと鳴らしながら首を傾げて正面に目をやった。



「なんだ? 焼けたような臭い……まさか、人がいるのか?」



 レンジは駆け出し、リコーダーを鳴らすことを止めずにおよそ火という文明に最も近い現象にまっしぐらだ。



 走ったかいがあり、明らかな文明――藁で編まれたような教科書でしか見たことのない家屋がいくつかあり、その家々を囲うように尖がった木材が杭のようにおよそ村らしき区間にぐるっと大地に刺さっていた。



 レンジは喜びをリコーダーの音に乗せ、ふひょーっと鳴らしながらも正面から村に入り、第一村人の影らしきものへ向かった。



「え~っと、えっくすきゅーじゅうみー」



 Excuse meである。X九十三ではない。



 レンジは軽く微笑みを浮かべて、その逞しくも大きな背中(・・・・・・・・・)に声をかけた。

 ちなみにこの朱鷺海 レンジ。眼鏡をかけているがこの眼鏡、度が全くあっておらず、それどころか彼は視力2.0以上ある。眼鏡をかけていると頭良くなると思っているタイプの高校生である。



 そんな節穴を引っさげているからか、レンジは家屋のほとんどが燃えていることも、今声をかけたその生命が黒くただれた同胞をその腕に抱き、涙を流していることにも気が付いていない。



「あ~う~んと、英語わかるか?」



 そもそも彼のそれは英語ではない。

 そしてもう1つ、レンジはとんでもない事実に気が付いていない。



 レンジに声をかけられたその影――女性らしき衣服を身に纏い、レンジの声に反応してのそと立ち上がる。

 毛深い体(・・・・)をレンジに向け、その人なぞ一握りで終えられそうな野性的な剛腕を大地につけて口を開いた。



「うほうほうほうほうほうほぅ」



「……」



 そう、ゴリラである。服は着ている。



「……あ~ね、なるほどなるほど」



 やっと違和感に気が付いたのか、レンジは眼鏡をクイと上げ、きりっとした顔つきで頷いた。



「うほうほ、うほう」



「あ~、うん……さすがだ」



「うほ、うほ~」



「うんうん、知らなかったぞ」



「うほっ、うほうほ!」



「すごいじゃないか」



「うほ! うほううほう!」



「お~お~センスいいね」



「うっほ! うっほ!」



「そうなんだなぁ――」



 レンジが知った風に頷いていると、自身の拳に目を落としたゴリラがその眩いばかりの瞳を携えて顔を上げ、腕と一緒に脚を大地に一歩進ませる。

 そして彼女はレンジを通り過ぎて村の入り口にまで脚を進めると振り返り、まるで「来いよ」とでも言っているかのように腕を大きく振った。



「うっほ!」



「あ~、うん……うん」



 そうしてレンジはゴリラの後をついて森へと戻るのだった。

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― 新着の感想 ―
レンジの奇行が面白すぎる。いや、まだ奇行ではないか?まぁとにかくおもろい主人公。
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