表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朱鷺海 恋慈の異世界⇔現代、拳で語れ!  作者: 筆々
2章 陸の海に獣は不運を引っさげて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/26

ケダモノの本懐

「……」



「……」



 魚人たちの村の現状を把握したレンジとコウはイルムと親父殿と一緒に村を出て洞窟内を歩いていた。

 村を襲い、子どもたちを攫った連中を追っており、その口数は少ない。



 レンジはコウと親父殿は村で待っているようにと提案したが、2人とも頑なにそれを拒否しこうして一緒に脚を進めている。



「コウ、お前歩きづらいだろ」



「うるさい、俺は戻んないよ」



「強情な奴め」



「……レンジが前を歩いてるんなら、俺は後ろを歩かなきゃダメだろ」



「はいはい、いつも頼りにしてるよ」



「ん」



 コウはレンジの袖をつかんだままだが、確かに強い意思をその瞳に宿していた。

 そんな2人にイルムが小さく微笑んだ。



「2人は本当に仲がいいのだな」



「別にそんなんじゃないよ。レンジの馬鹿野郎は放っておくとすぐどっか行くし、すぐわけわかんないことになってるから、こうやって見張ってなきゃなんないんだよ。俺の気苦労わかってくれる?」



「ぎょぎょぎょっぎょ」



「……む、なんかなんとなく今言ったのはなにかわかったかもだけれど――レンジは相棒の俺が見てないと危ない目に遭うの、それだけ!」



 イルムと親父殿がふわと空気を柔らかいものにした。

 伊吹 幸之信という男は臆病だが、その小さな心臓には小さい形にも確かな正義心と優しさを持っており、日野畑高校ではレンジの背に隠れてばかりだが、思い切った時の爆発力には目を見張るものがあるという評価をもらっている。



 不貞腐れたように頬を膨らませているコウに、レンジは鼻を鳴らして笑うのだが、ふと香ってきたにおいに顔をしかめる。

 するとコウも気が付いたのか、その匂いに言及する。



「ん~? なんか変な匂いがするな――」



「――」



 レンジがハッとした顔を浮かべ、咄嗟にコウの目を手で覆い、空いた手で彼を引き寄せた。

 同じ時、イルムと親父殿が顔を手で覆い、歯を鳴らして息を荒げた。



「目を開けるなよ」



「な、なんだよ――」



「良いから言う通りにしろ!」



 レンジはゆっくりとした歩みで、コウを慎重に引っ張っていく。

 そしてそれ(・・)を通り過ぎる際、注意深く観察し、現状を把握しようとする。

 何故。と、ぶち殺す理由を心にとどめ、レンジはちらと魚人2人に目をやる。



「イルム、翁、今は抑えろ。冷静になれとは言わん、抑えるだけでいい」



「……ぎょ、ぎょぅ」



 体を震わせる親父殿の背にそっとイルムが手を添え、小さく息を吸った。



「抑えろ。か。なるほど――レンジ、君の抑え方は爆発させることを前提にしているようだが?」



「イルム、ぶちかますから抑える意味があるんだぞ」



「……俺たちのために怒ってくれてありがとう」



 イルムも親父殿もレンジが抑えに抑え、それでも漏れ出る殺気に頭が冷えたのか、脚を進ませ始めた。



「――お前たちのやり方で弔ってやってくれ」



「――っ」



 目を閉じてレンジの背に着いてきていたコウの肩が跳ねた。レンジの手をキュッとつかみ、体を震わせて閉じている瞼からも涙があふれている。



「コウ、ありがとう。俺たちは平気だ――」



「平気なわけあるかよ! なんだよ、意味わかんねえ……なんでそんなことするんだよ」



「その答えも、この先だ」



 レンジは片瞼を痙攣させ、指を握ったり開いたりしながら頻りに骨を鳴らし、額の血管はすでに破裂しそうであった。



「不愉快だ、胸糞悪い」



 レンジが睨みつける先――複数人の人間の気配。

 彼らが脚を踏み込む先には人ではなく()がいる。最早レンジの頭には対()戦は想定されていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ