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朱鷺海 恋慈の異世界⇔現代、拳で語れ!  作者: 筆々
2章 陸の海に獣は不運を引っさげて

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戦う意思を湧き上げて

「2人とも、まずは俺たちの村に来てもらいたい」



「それは構わないが、俺たちがいても平気なのか? 人間に襲われたのだろう? わざわざ恐怖心を刺激する必要もないだろう」



「気遣い感謝する。それなら大丈夫だ、親父殿が――」



「ぎょぎょっぎょーぎょぎょ」



 親父殿が妙なステップを踏み出したことで、レンジとコウが真顔で彼を見やる。



「盆踊りか?」



「熱にうなされている時に見る悪夢だろ」



「つまり暗黒盆踊りか」



 何がつまりなのかを思案するコウをよそに、2人の姿が見る見るうちに魚人のような見た目になり、鱗が生えてきた。



「ほ~、姿を変えられるのか」



「わぁ鱗だ。でもこれ――」



「そう見せるだけの幻覚だ」



 コウが自身の腕に生えた鱗に触れるのだが、それに実体はなく、触った感触もただの肌と変わっていない。

 イルムの言う通り、ただ幻を見せるだけの魔法なのだろう。



「さっ、村はこっちだ」



 そうしてレンジとコウはイルムたちの住む村に案内されたのだが、村の内部はあちこちに戦いの傷跡が残っており、ところどころにいる魚人たちは生気のない顔を伏せていた。



「これは――」



「――」



 コウがはたと駆けだし、カバンから包帯やらの手当て道具を取り出すと、怪我をしている魚人たちの手当てを開始した。

 戦っていなかっただろう者たちは生きる気力を失くしており、戦いに赴いただろう者たちは体を震わせて痛みを堪えていた。



 彼らは負けたのだ、敗北者には敗北者が通る道しか残っていない。



「……」



「一瞬だったよ。奴らは突然現れ、俺たちの領域を侵していった」



「相手はそんなに強いのか? お前たちだって戦えるだろう」



「……レンジが俺たちのことをどう認識しているのかはわからないが、我らは海の民だ」



「そういえばここは陸だな――いやというより、なぜおまえたちはこんなところに?」



 レンジの問いにイルムは顔を伏せてポツリと話し出す。



「住処を追われた俺たちは、こうして陸に上がってくるしかなかったんだ。ここはいい場所だ、陸地でありながら海の気配(・・・・)がする。だから俺たちはここでも心地よく暮らしていけた。だがなレンジ、ここはやはり陸なんだ――俺たちは、戦えない」



「……そういうことか」



 海こそが彼らの領域、戦いも海の中で培われたものであった。故に本来の力を出すことが出来ず、いいようにやられてしまったのだ。



 レンジが顔を伏せると、治療をしていたコウが戻ってきた。

 しかしその顔は今にも泣きだしそうなそれで、レンジはそっと彼の頭に触れた。



「コウ?」



「……ねえ、イルム」



 どこか震えた声のコウに、レンジは首を傾げる。



「どうした?」



「俺さ、お前たちがどうやって産まれてくるかは知らないよ。でも、産まれた瞬間から大人ではない(・・・・・・)よね」



「――っ」



 レンジは辺りを見渡し、奥歯を噛みしめて額に青筋を浮かばせた。



「子どもは――?」



 ポロポロと涙をこぼし始めるコウの肩をレンジは叩くのだが、コウからの問いを受けたイルムは握りこぶしを作り、噛み千切るほどに自身の唇を嚙んだ。そして首を横に振り、声を上げた。



「皆攫われた」

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