第98話 case 4-快挙の説明(スグル)
野球部軍団も買い物を終え、コンビニから出て来た。
そして、出て来てすぐに2人を茶化し出す。
これもいつも通り。
「さっそく佐々木さんに自慢かよ、オーゴ」
「1年がベンチ入りだからな、快挙だよな」
「あれ?佐々木さん固まってねぇ?」
「そりゃ、背番号見せられただけじゃ、分かんねぇよ、ちゃんと説明したのか?」
一番後ろにいる、スグルが割って入って来た。
野球部では今日、夏の甲子園をかけた大会に向けてのベンチ入りメンバーを発表していた。
各学年、十数名。総勢40名弱の部員数に対してベンチ入り出来る人数は18名。
実力主義の強豪校では時折り見る事のある1年生のベンチ入りだが、普通レベルの高校ではまずあり得ない。
ベンチ入りメンバーは年功序列。それがテッパンであり、揺るがない。
3年生は余程の大怪我でもしていない限り、全員ベンチ入り。残り数名は2年生の実力者が選ばれる。これが絶対。
そこに割って入ったのが央吾である。
2年生10名程を差し置いて、央吾が選ばれたのだ。
これはベンチ入り出来なかった2年生よりも実力が上と認められたと言う確固たる証拠なのである。しかも、かなりの実力差でなければ選ばれる事はない。
と言う事を、冷静なスグルが佐々木に説明した。
ちなみにスグルの学力は、先月の中間テストで学年400人中、34位。小学生の頃からちゃんと頭が良い。
「へ〜!凄いっ!凄いじゃんっ、央吾君!」
佐々木はスグルの説明を聞き、理解すると央吾を讃えた。
「さすがスグル」
「スグル居なかったら、オーゴの快挙が伝わってなかったな、ハハハ」
「これぐらい、誰でも説明できるだろっ」
スグルはカロリーメイトを食べながら、呆れた顔をしている。
「私、野球全然知らないから、練習見てても央吾君が上手いかどうか分からなかった」
塾や他に予定が無い日に佐々木はテニス部の練習が終わると、野球部の練習をグラウンドの外から見ていた。練習を、と言うか、央吾を見ていた。
ヤスベファンやフィーバー中の上級生も数名おり、野球部を見学する女子はそれほど珍しいものではなかった。
「1年生で選ばれたのは、央吾君だけ?」
「そうそう、俺だけ」
かなり自慢気に言う央吾。
「そんなに上手いんだね」
「そうそう、俺だけ」
野球部軍団をチラチラ見ながら自慢気にニヤける央吾。
それほどまでに普通レベルの高校野球部で1年生のベンチ入りは快挙であった。




