第99話 case 4-“あ〜ん”
1年にしてベンチ入りを果たした央吾に対して、ライバル心も燃やす他野球部1年軍団。
「まあピッチャーの控えなら俺だったけどな。サウスポーだし」
ヨータが負けじと突っかかる。
「いやいや、ピッチャーなら俺だろ。ヨータは球遅ぇよ。俺はMAX138km/hだからな」
ヤスベはそれに被せてきた。
「俺はパワーなら負けねぇよ」
コタニは左打ちの4番タイプ。
「オーゴは小学校の頃から守備が上手いよな」
スグルは素直に央吾を褒めた。
「キャッチャーなら俺だろ?」
アキラも割って入って来た。
「お前は背が低過ぎるから無理だろ」
ナオトがアキラをバカにする。これはいつも通り。
「何だとっ、身長関係ねぇだろっ」
「いや、あんだろっ。キャッチャーはガタイなんだよっ」
「ガタイじゃねぇよ、配球を考える頭がいるんだよ。ナオトには無理無理無理無理」
「佐々木さんって身長何センチ?」
急にナオトが佐々木に話を振る。
「えっと、166cmだけど」
「アキラは160センチ」
「161センチだよっ!」
「変わんねぇだろっ、キャッチャーが小せぇと舐められんだよ」
「何でだよっ、コノヤローッ!」
またアキラとナオトのケンカが始まった。これもいつも通り。
この2人の喧嘩も佐々木は見慣れたもので、初めは誰も止めない事に驚き、あたふたしていたが、今ではまた始まったとクスクス笑っている。
「まぁた始まったよハハハハ」
「また始まったね。はい、プリン。先食べて」
佐々木が央吾にプリンを渡した。
その時、ナオトがある提案をしてきた。
「せっかくだしさぁ、快挙の記念に“あ〜ん”してもらえばぁ??」
「バカッ!何でだよっ」
央吾が顔を赤くしながら即ツッコミを入れる。
「いいねぇ、ナオト。ナイスアイデア」
「照れるな、照れるな」
「佐々木さん、オーゴじゃなくて俺でもいいよぉ」
「何でだよっ、快挙の記念なら俺だろっ」
「いいなぁ、オーゴは」
「いやいや、まだやるって言ってねぇだろっ」
「はい、あ〜ん」
佐々木は央吾からプリンを奪うとプラスチックのスプーンに乗せ央吾の口元へ、
一瞬躊躇う央吾。
佐々木の顔は野球部1年軍団からは見えない角度。恥ずかしそうな笑顔だ。
(か、か、かっ、可愛いぃ〜〜〜!!)
佐々木の可愛さに央吾の顔の筋肉は緩みに緩み、自然と口が開いた。
一口、二口、三口。
佐々木は連続で“あ〜ん”をした。
「はい、終わり。あとの半分は私のぉ」
「うまぁ〜」
央吾はこんなに美味しいプリンを食べた事が無かった。
今まで何も考えずに食べていたプリン。
佐々木の“あ〜ん”でこんなにも味が変わるものか…
これまでの10倍…いや、20倍は甘くて美味いプリンであった。




