第97話 case 4-背番号
細目おどけ顔の佐々木は野球部軍団を目で追い、愛想笑いしか出来ずにいた。
そこへ更に衝撃の言葉を耳にする。
「オーゴはいいよなぁ、佐々木さんいるし」
「そこそこ勉強できるしな」
野球部軍団が雑誌コーナーに消えると、すぐさま佐々木はパッと央吾の顔を見た。
あの自称だっふんだ顔をしている。
「数学35点で、出来る方?」
しゃくれながらも器用に喋る佐々木。
「は、はい…、野球部の中では…、であります」
背筋を伸ばす央吾。
野球部軍団の頭脳は運動能力とは逆に壊滅的だ。
そんな連中の中では央吾の学力はそこそこ上位であった。
野球部軍団の大半は果てしない底辺で争っている。
点数ではなく、欠点の数で勝負している始末…。
凄まじく勉学に重きを置いていない集団なのである。
「お会計します!で、あります!」
背筋を伸ばしたまま喋る央吾。
「アハハ、いいよいいよ。今日は私が出すよ。何か良い事あったんでしょ?そのお祝い」
「ありがとうでございます!お言葉に甘えさせていただきます、です!」
「あと、からあげクンも下さい」
佐々木はスマートに、からあげクンも追加してくれた。
静かにガッツポーズをする央吾。
「あざす!ちなみに、欠点の教科はありません、です!」
「はいはい、楽にして構わんよ」
佐々木は低い声でおどけた。
が、少し真面目な顔で続けた。
「一応言っとくけど、欠点がない事は自慢になりません。無いことが大っ前っ提っ」
佐々木が肩を3回ぶつけて来た。
楽にしていた央吾は再度背筋を伸ばす。
「勉強も頑張ります、です!佐々木先生、ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願いします、です!」
「ビシバシいくので、覚悟しておくように」
「アイアイサー!」
「ハハハハハ、よしよし」
そう言いながら佐々木はポンポンと央吾の肩を2回優しく叩いた。
いつものコンビニのいつものベンチで買い食いを開始した。
「まずは、からあげクンから頂きましょう」
央吾がレジ袋をあさっていると、
「まずは、報告でしょ。何があったの?」
興味津々の可愛い顔だ。
「そうだった、そうだった」
慌てて央吾はミズノの野球部黒カバンをあさりだした。
「これこれ。ジャ〜〜〜ン」
央吾が佐々木に見せて来たもの。
それは背番号であった。
「…、…、…、…」
目を少し大きめに開けキョトンとする佐々木。
「あ、あれ?…、…、無反応?…、…」
央吾も背番号を持った両手をそのままに固まってしまった。
野球部はベンチ入りメンバー以外には背番号が無い。
サッカーやバスケの様に、ユニフォームを渡されるのではなく、背番号を渡される。
そして、その背番号をユニフォームへ縫い付けなければならない。
テニス部の佐々木はそれを知らない。




